786話、ナッシュ、やれるだけ、やろう予選会
SIDE:ナッシュ
「失礼、ナンバーの確認を……はい、確認しました。29332番第一予選突破です。あちらの会場で二次予選開始をお待ちください」
「え? あ、はい」
え? 第一次予選って何?
初めて知ったんだけど!?
ディムロス君大丈夫だったのかな?
僕はケーニスさんに教えて貰ったからいいんだけど、ちゃんと目的の会場に行けたんだろうか?
うぅ、そうだった。ディムロス君、僕の事待つって言ってくれてたのに、普通に忘れてこっちきちゃったよ。ど、どうしよう!?
さすがに今から戻る訳にはいかないし……でぃ、ディムロス君だし、大丈夫だよね。僕が教えなくたってしっかり会場いけてるよきっと。予選突破もきっとらくらく決めてるんだろうな。
負けたら、ディムロス君の応援に行こう、うん、そうしよう。
えっと、この会場に居ればいいんだよね。どの辺りがいいんだろ?
えーっと、あっちはなんか強そうな人いるし、こっちは人が多い。
あちらはなんか恐そうな人がいる。
そっちは? なんかあの女の人僕の事睨んでない? 恐っ!?
四方が行きたくても行けない場所に!?
ぎゃあぁ、人どんどん来るっ!?
多い、多過ぎるよ予選の人。一次予選って結構楽なのかな!?
「それでは、時間になりましたのでこれよりここに居るメンバーのみで第二予選を行わせていただきます」
うわわ、始まっちゃう。始まっちゃうんだ。
だ、大丈夫かな? とりあえず痛い思いだけはしないようにしないと。
それだけに注視しとこう。
「このC会場から出場出来るのは二人です。バトルロイヤル形式で残り二人になるまで争っていただきます。敗北条件は意識を失う、または戦意喪失、そして場外です。設置された石のリングから出た時点で失格となりますので戦闘開始後は決着までリング外にでないよう気を付けてください。では……試合、開始!!」
は、始まってしまった。
というか、なんか僕だけ舞台の中心に居るんだけど!? え。 なんか皆ここ向かって来る!?
「雑魚がわざわざ中央で待ってやがる!」
「さっきから視線がキモかったのよ! 最初に潰してやるわ」
「まずは雑魚そうなのから処理するぞ、集中攻撃だ!」
「ふむ……皆が中央に集まるか。それならっ」
き、きぃやああああああああああああああああ!?
なんで皆僕目指して来るのぉ!?
「クソ、避けるなっ……って、うわあぁぁ!?」
「そこっ! 消えた!? きゃあぁぁぁ!?」
「ぬはははは、雑魚共が群れてくれて助かるわっ! 纏めて死ねぃっ」
うわわわわ!?
頭を抱えてしゃがむことで攻撃を回避。
でもそのままだったら次の一撃が襲ってくるから本能の赴くままに回避して回避して回避して回避して回避する。
ロゼッタ様が僕は攻撃や防御より回避力を高めるべきだっていってたの、今だと感謝しか無い。
なんだか楽しそうなお爺さんが群がった参加者を纏めて撃退し始めた。
僕は一先ず団体さんから離れたものの、端の方には様子見に残っていた参加者。
僕が逃げて来たのに気付いてニヤつきながら襲いかかって来る。
あぶなっ。武器とか当たったら絶対痛いっ。
ひぃぃ、頬掠った? ぎりぎり避けた?
後転してなんとか避ける。
そんな僕と入れ替わるようにして格闘家っぽいお爺さんが楽しそうに乱入。
僕を襲おうとした参加者たちを瞬く間に撃破していった。
「よいぞ、よいぞ坊主! 貴様は餌だ。存分に逃げ回り喰らい付かれろ!」
えぇぇ!?
なんか分かんないけど、僕が襲われたら助けてくれるってこと?
って、わわわ、なんで僕ばっか狙って来るの!?
皆おかしいよ、僕以外を襲った方がいいって。
わひゃっ。脇腹掠めた!?
「ガラ空きだ馬鹿め!」
本当に格闘家のお爺さん僕を囮に使ってるし!?
でも次々対戦相手が消えていくから楽でいい。
そして、避けるだけの楽なお仕事をこなす事数分。
数えるほどになった瞬間だった。
背後からの殺気を感じてギリギリで避ける。
「お、お爺さん!?」
「チィッ。油断を狙ったのに避けるか!」
「な、なんで、僕を攻撃するの!?」
「馬鹿か貴様は!? 先程までは敵が多かったから利用し合っていたまでのこと、この数になれば貴様は不要!」
「そんな!? 二人で予選突破するって信じてたのにっ」
「だぁからお前は阿保なのだっ、無様に死ねぃっ」
ひぃっ!?
うわっ。追い詰められた!?
気付けば真後ろに逃げるべき道がなくなっていた。
場外がちらつく崖っぷち。
お爺さんがこれで終わりだ、っと抜き手を放つ。
そうだった。
これは大会。全ての相手が、敵なんだ。
だから、助けてくれる人なんていない。
僕は僕しか頼れない。
僕しか、頼れない? 頼れる程でも無い存在なのに?
ああ、僕、もしかして……終わった?




