77話・ロゼッタ、よし、D級昇格……え? 違う?
「そいやっ!」
さすがにナマクラな剣じゃ狙い通りできないので魔力を纏わせ振り下ろされた斧に合わせる。
キンという金属音はなかった。
ただ、おっちゃんの目が驚愕に見開かれる。
なぜならば、斧の刃に刃を潰した剣が喰い込んでいたからだ。
もう一度言おう。剣が斧に、喰い込んでいたからさ。
「なん、だとぉっ!?」
「武器破壊、完了!」
気合とともに振り抜く。
斧に食い込んだ剣が斧を二つに裂きながら振り切られる。
おっと、残心のためにもバックステップで距離を取らねば。
「お、斧を切り裂いた!?」
「そんなバカな!?」
「アタッカー、どきなさいッ! デカいの行くわよ!」
あー、いつの間にか魔法使いの女性が気絶から立ち直ってる!?
「死ぬなよ嬢ちゃん!」
「「合体魔法、フレイムブラスターッ!!」」
魔法使いのお姉さんとお爺ちゃんの合体魔法。
合体と聞くとイケない妄想がアクセル踏んじゃうんだよ。
お爺さんとお姉さんだなんてぇ、イヤん。
渾身の一撃は無防備な私に向けて放たれた。
逃げる暇などなかった。
ただただ炎と風の融合魔法に翻弄される。
うん、結界の中に居るとビュウビュウゴウゴウ煩いんだよ?
結界、反射しとかなくてよかった。
こんな大魔法返しちゃったら大惨事なんだよ。
私だけなら充分結界でなんとでも成るから良いんだけどさ。
「やったか!」
「気を抜くな! まだ炎風の魔法が止んでない」
「おいおい、この中で生きてるってのか、人が、生きれるような状況じゃねぇぞ?」
「わ、私達、殺人しちゃったかと覚悟してたんだけど……」
「まさにバケモノじゃわい。どうやって生きていられると言うんじゃ!?」
そりゃ、結界作ったからに決まってるんだよ。
結界の中でぼーっとしてたけどさすがに長いと思うんだ。
なんでこんなに暴風なんだろう?
いや、合体魔法だからそれだけ強力ってことなのかな?
でも私にはダメージがないんだよ。
今更だけど結界魔法強いな。さすがレベル500付近が唱えた結界なんだよ。
お、収まってきた。
さぁって、ここからどう……
ん? なんか全員驚愕した顔で呆然としてるんだけど、どうした?
おじいちゃん、鼻水でてるよ。ハナタラリーノさんになってるんだよ?
「ば、馬鹿な? 無傷、だと?」
「い、一体どうやったらあの炎風の中で生きられるの!? 呼吸すら出来ないのに!?」
おいおい、お姉さんや、そんな危ない魔法を御令嬢に放つんじゃないですよ。
まぁ、基本私の結界だけじゃなく毒物フィルタ機能付きの状態異常防御結界のせいだろうね。
ほら、毒素のある空気中を移動することもあるかもってことでガスマスクを想定しながらフィルター付きの結界を張ってあるんだよ。外の危険な空気を浄化して清浄な空気として肺に届けてるんだよ。
だから周囲が焼けて無酸素状態だったとしても、そこから浄化して清浄な空気が私の周囲に漂うんだよ。
今更だけど凄いな。むちゃくちゃだよ。現代知識チートが鬼畜だよ。
酸素ボンベ作っとこう。
今更息苦しくなった気がするんだよ。気のせいだろうけど。
「む、無理よ。あんなの、勝てない……」
「儂も棄権する。下手な攻撃で気絶させられるとそのままあの世に旅立ちそうじゃしの」
って、ちょっと魔法使いのお姉さんが棄権した瞬間次々に後衛が棄権しちゃってるんだけど?
前衛の斧失ったおっちゃん以外全員ドロップアウトだよ。
これはもうダメだな。
おっちゃんも周囲を見回して、え? 残ったの俺だけ? みたいな顔してるし。
「あー、すまん、棄権する」
そりゃないよぅ。でも一人残って武器も無いとなると滅多打ちになるしかないんだよ。
サンドバックは願い下げだからそりゃ棄権だよね?
危険があるから棄権するんだよ。私は危険人物じゃないよ? 安心安全の悪役令嬢だよ?
「Aランクパーティー全員の棄権を確認しました。勝負あり、ですね」
ん? ペレーラさん? 聞き間違いかな? Aランクパーティー? Dじゃなくて?
「予想以上だ。ここまで圧倒的なのか……」
「あの、ギルド長? 相手って、Aランク?」
「ん? ああ。Aランクパーティー三チームだよ」
だよじゃないよねギルド長。ちょっと、なんか無駄に強い奴らだと思えば、Aランク!? なんでそんなもの三チームとレイド戦でボス役させられちゃうの!?
「おめでとうロゼッタ嬢。これで晴れて、君は我がギルドのエース。Sランク冒険者に昇格だ」
「なんでさっ!?」
ちょ、幾ら飛び級でも飛び過ぎなんだよ!?
なんでそうなるのっ!?
「いや、普通にそうだろう。ウチの虎の子Aランクパーティーを三つ。これを相手に大立ち回りをやるばかりか完封勝利。Aランク相手にここまでできる存在がただのAランクで収まる訳が無かろう」
なんか良い顔でサムズアップしやがったんだよ。酷いなっ。




