74話・ロゼッタ、昇格試験があるらしい
本日ギルドに向かうと、ペレーラさんという受付嬢から話があった。
なんでもギルド長が呼んでいるということでギルド長室に来てほしいらしい。
ただ、ギルド会議とかいうのの関係で昼過ぎまでは帰って来ないそうだ。
なので、今日は草むしりの依頼を終えた後一度家に帰ってお父様に一報入れることにした。
ギルド長と会うのでちょっと昼から出るんだよ。と告げると、お父様は小首を傾げていらっしゃった。
その時はなんとも思わなかったんだけど、ギルド長室に遅れてやってきたギルド長の話を聞いてようやく理解した。
ギルド長といっても平民なんだよ。
貴族である私を呼び出すなんてこと無礼に当るらしいんだよ。
ゆえに貴族が相手の場合は呼びだすのではなくギルド長自ら貴族邸に出向かうのが礼儀らしい。
今回は私が侯爵令嬢だと知ったのがペレーラさんに伝言頼んだ後だったらしく、慌てて後を追ったけど帰ってしまっていて。サテラさんに伝言頼んだらしい。
後で私の家に向かうつもりだったそうだけど、サテラさんは伝言を忘れ、ペレーラさんは伝言通り私にギルド長室来るように呼び出し、結果、ギルド長が最も恐れる侯爵令嬢への無礼が行われてしまったそうだ。
私は気にしないけど体裁が大変なんだね。
んじゃー間を取って後日ギルド長が私の家に来ればいいんだよ。
今日は先触れ出しちゃいな。
いいの? っていいんだよ。もともと私は冒険者として登録したんだから用事があればギルド長室に呼ばれるのは別に構わない……あ、そうだ。だったらギルド長が私を呼び出したんじゃなくて、ギルド長室に私が用事があったから来たってことにすればいいんだよ。万事解決誰も不幸にならないんだよ。
「め、女神かッ!!」
「ただの御令嬢ですよライゼリュートさん。しかし、申し訳ありませんロゼッタ様。私共の配慮が足りず……」
「いえいえ、私としても身分はばらす気なかったから問題はないんだよ。名前普通に書いちゃったからギルド長さんが気付いたってだけだし。気付かれなければ私はそれでも構わなかったんだよ」
「そう言っていただけると、助かります」
「それで? ご用はなんでしょう?」
と、いいつつティータイム。ここの紅茶は結構美味しいんだよ。
ティーカップの取っ手を親指と人差し指、中指でつまんで持ち上げ、薬指で支える。小指は立てちゃうんだよ。これぞ貴族の御嗜みなんだよ。
「ええ。実は、オルトロスの牙を納品されたことで少々お尋ねしたいと思いまして」
うわーお、やっぱり不正でも疑われてるのかな?
「ギルド証のレベルが500近いということですし、普通に狩って来たと思うのですが、そうであればギルドの昇格試験を受けランクを上げる気はありませんか? と尋ねるつもりでした」
ぶっふぉう、思わず噴き出しかけたんだよ。
バレてる。レベルがバレちゃってたから邪神洞窟普通に攻略しちゃったのバレちゃってるんだよ。
オルトロス倒せるくらいだからそんな有能人物はランク上げてさっさと高ランク依頼受けてくれってギルドからの催促の話だったんだよ。
でも私が貴族と知って二の足を踏んでるみたいなんだよ。
「昇格試験ですか?」
「ええ。ギルドとしても有能な方はランクを上げて高額依頼を受けて貰いたいと思っております。塩漬けとなっている依頼もそれなりにありますので高レベル冒険者は喉から手が出るほど欲しているのは事実です。ただ、さすがに貴族の御令嬢を危険な任務に着かせたとあっては……」
私のお父様が出張って来るのが一番怖い。と。
うん、でも1ランク上げる位なら問題はないんだよ。
私としてもDランクになっといた方が魔物狩っても変に思われないし、邪神の洞窟関連のドロップアイテムも換金したいんだよ。
「構いませんわ。ただ、条件が二つ」
「じょ、条件……?」
ごくり、ギルド長が喉を鳴らした。
「一つ目は邪神の洞窟で入手したドロップアイテムを秘密裏に買い取りしてほしいですわ」
「秘密裏、まぁ、その方が混乱は少ないか。わかった。邪神の洞窟などまず新人冒険者が入らないような場所や珍しいドロップアイテムの買い取りはこのギルド長室で行おう。売りたいモノがある時はこのペレーラに伝えてくれればこちらまで案内してくれるようにしておく」
「二つめはこちらに居るキーリのギルド証を発行してほしいのです」
「魔族のギルド証? 別にそれは問題ないが?」
「あ、いえ、魔族じゃなくて、邪神ちゃん?」
「え?」
あ、やっべ。これ秘密にしといたほうがよかったかな。でも先に伝えておくことでギルド証に表示したくないモノを隠蔽できるってさっきペレーラさんから聞いたんだよ。ついでに私のレベルについても隠蔽お願いしたいんだけど、できるかな?
「じゃ、しん? え? 邪神? それ、邪神の洞窟の、封印されてると古文書に書かれてる、邪神?」
「キーリクライク・プライダルや。あんじょうよろしゅう」
「ぎゃぼあぁ――――ッ!!?」
「ぎ、ギルド長――――ッ!?」
気絶しかけたギルド長。慌てて背後で彼を支えたペレーラさんの御蔭で意識を失う手前で復帰する。
「う。嘘だろ!? な、なんで邪神が?」
「……成り行きでテイム、しちゃった、みたいな?」
「テイム、されてもーてん。いやんっ」
私がてへぺろしてキーリが頬を両手で支えていやんと悶えて見せる。
目を見開いたまま固まるギルド長。
これは、ちょっとギルド長には刺激が強過ぎたんだよ……




