717話、ロゼッタ、有名過ぎるのも考えものなんだよ
おかしいんだよ!
商業ギルドに行って胃薬ヤバいですよって告げたらギルド長がそれでも飲まねばならんのだっとか唾飛ばしながら怒鳴って来たんだよ。
なんでさ?
一応ヤバい成分使ってないかは調べるってことだけど、まさかの商業ギルド長まで胃薬使っていたんだよ。これは蔓延しそうでやばいなぁ。
とりあえずアルケーに依頼して裏側から調べてもらうしかないか。
魔術ギルドでもギルド長が胃薬一気飲みしてたんだよ。
私と話す時の常備薬とか言われたけど、なんでさ?
魔法伝えたらなんか常識が変わってしまうとか、用紙のコピー程度で大げさなんだよ?
ただ書かれたモノが何にでも転写できるだけじゃない。そこまで大事じゃ……と思ってたんだけどカルシェに大事なんだけど。と凄く申し訳なさそうに指摘されて困った。
日本じゃコピー機で数百数千とコピってたから感覚麻痺してたけど、この世界だと基本書き物は模写するしか手がなかったらしい。
確かにそれだと常識を根底から覆すほどの便利魔法になるかも?
でも、軍事利用とか出来るものでもないし、そこまで……え? 出来るのカルシェ?
と、まぁそんな感じで常識だと思ってたコピー用紙程度でも大問題に発生しちゃったのでカルシェからまで自重してくださいと言われてしまったロゼッタです。
自重、してるんだよ? めちゃくちゃ自重してるんだよ?
こんなに自重してるのにまだ自重が足りないってどういうことなんだよ? 世界の常識が、わからない……
ま、その辺りは後日ゆっくり考えるとして、今のところ本日最後の作業は東の森でピエロちゃん探索である。あ、折角だしこのあとプライダル商店寄っとこ。
といっても探査魔法である程度相手の居場所はわかるから、ちょっと強そうな魔物を検索してそこに向うだけの簡単な作業でした。
な・の・で、開始数分で見付けた気配を辿って行くと、森の中に傷だらけのピエロちゃんが座り込んでいるのを発見した。
既に死に体じゃないかしら? と思える彼女は、金髪をツインテールでウェーブさせて、勝気な瞳でうっすらと私達を見つめていた。
血だらけなのでここに逃げ込むまでだいぶ冒険者たちと争ったんだろうことは理解できる。
それでもまだ闘志は衰えていないようで、私達を見て薄く笑みを浮かべた。
鼻、真っ赤な珠になってる。本当にピエロだね。目元の星マークがまたなんとも。
「やぁお嬢さん方。こんな森に何しに来たんだい?」
「ふふ。これはこれはピエロさん。ごきげんよう。良いお天気ですわね。とても良い日だから散歩してみようかとこちらに来ましたの」
「ふ、はは、はははっ。魔物が闊歩する森に散歩とはっ。なんとも剛毅なお嬢さん、目的はなんですかな」
「ふふ、ザルツヴァッハの冒険者さんが討ち洩らしたお残しさんをたいらげに。美味しいかしら? それともとっても不味くて食べられないから残されたのかしら?」
「ふふ、どうかなぁ。案外、食べられるのはお嬢さんたちかも……ひぃっ!?」
ん? なんかいきなり怯えだしたんだけど。どうした?
「じゃ、じゃじゃじゃ邪神様ァ!? な、なぜ、なぜ外にお出になられてぇぇぇ!?」
「あ、ウチ? はて、知り合いやったっけ? 悪いけどウチあんたのこと覚えてへんわぁ」
「め、めめめ、めっそうもありません、私のような木っ端のことなど覚えていただくほどのことではっ」
と、即座に土下座してかさかさと距離を取り出すアバライトピエロちゃん。
可愛いのに動きが気持ち悪い。
土下座で移動とか意味が分かんないんだよ?
「ふーん。なら、あんたがウチのことを知ってるだけってことかー」
「は、はい、封印になられる前に一度戦場で。私などでは敵う訳も無く森の奥で震えていただけの存在で。あ、あの、わ、私は殺されるのでしょうか? どうか、どうかご慈悲をっ」
あらー。これはもう戦闘するまえから完全敗北状態なんだよ。
キーリ連れてこなかったら多分戦いになってたんだろうけど、ちょっと、勢い込んでこっち来たのに立ち向かっても来られないとちょっと切ない。
「ええでぇ。この人間にテイムされるんやったら命は助けたるわ」
「に、人間にテイム!? そ、そんなこと……」
思わず否定仕掛け、顔を上げたピエロちゃん、私からは見えないけどキーリの顔を見て絶望的な顔になった。
あー、まさにピエロなんだよ。もはや逃げることすら不可能そうだ。可哀想に。
「に、人間様、わ、私めをテイムしてくださいませ」
全身震えながら私に告げるピエロちゃん。なんか、滅茶苦茶悪人になった気分なんだけど、凄く申し訳ない。
―― 破滅の愚者アバライトピエロ・ウルスハが仲間になりたそうにしている。テイムしますか? ――
いろいろツッコミどころはあるんだけど、了承、っと。
しかし、魔物テイムしてどうするかって言われると困るなぁ。
カルシェットの言葉通りならエロ主人公から保護するっていう名目らしいんだけど。
「えっと、ウルスハさん、でいいのかな?」
「は、はい、ご主人殿!」
「キーリが無理矢理ごめんね? 酷い扱いをするつもりはないから、私の周囲の人物に迷惑を掛けない。それだけを守って頂戴。後は、ヒールっと」
とりあえず軽く回復させればいっか。と思って軽く魔法使ったんだけど、なんか全快しちゃったな。初級魔法なのに。
「こ、これは、致命傷が完全回復!? いくらなんでも下僕にこのような魔法を!?」
いや、だってあのまんまじゃ出血多量で死にかねないし? 仲間になったなら助けるのが当然なんだよ?




