714話、ロゼッタ、緊急会議in王城会議室4
皆を一度見回し、私は息を整える。
「私が体験したゲーム『ライオネル王国の姫巫女』には、アペンドディスクが存在するそうです」
「あぺんどでぃすく?」
「簡単に言えば追加要素。ですね。後付けで何かが起こるイベントなどが追加されて物語ががらっと変更されたりするんです。それを、私はつい先日、カルシェットから聞きました」
「待て、聞いた? ということは、ロゼッタ嬢はその後付け要素は知らなかった、ということか?」
「はい、私が前世で死んだのはアペンドディスクが発売される前でしたので。そしてカルシェットは私が死んだ後の世界を生き、アペンドディスクをプレイしたあとに亡くなったようです。カルシェット、重要な変更点を言える?」
「はい。アペンドディスクで追加された要素はいくつかのイベントと新しい攻略対象の追加です」
「ふむ? 攻略対象。つまりミリアだったかと恋仲になるメンバーが増える、ということか?」
「あ、いえ、そうではなく、アペンドディスクには新しい主人公が出て来まして。来年入学してくる少女で確か名前は……ラミネリア」
それは初めて聞いたんだよ!? というか、ラミネリア。ミリアにラとネをくっつけただけとか、ネーミングセンスを疑うんだよ?
そういえば新ヒロインちゃんとしか聞いてなかったわね。名前も分かってたのか。
「ラミネリアか。位は分かるかい? 来年学園なら何処の貴族か分かるだろうし、調べてみよう。相手の状況が分かっていた方が対策は立てやすいだろ」
「あ、はい。確か騎士爵だったかと思います。ヒロインちゃんに助けられたあと、あの人みたいになりたい、と憧れ、学園生活を開始するんです。アペンド版になるとミリアさんは脇役となって自動的にエリオット王子エンドに向けて動き出します」
「私か? 破綻してないか、そのゲームとやら?」
「あ、はは。ルート自体は既に破綻してるとは思うのですが、イベントに関しては普通に起こると思います。重要なイベントはミリアさんの暗殺計画。学園に侵入したスパイの捜索、そして、学園管理のダンジョンからの……モンスターパレード」
「「「「っ!?」」」」
陛下達が思わず息を飲む。
そう、学園管理のダンジョン。そこは弱い魔物しかいないはずだった。
しかし、来年以降。ダンジョンは突如凶悪な魔物を群れで吐きだしてくるのだ。
生徒達は必死に抵抗するも、能力の低い彼らでは太刀打ちできず、ヒロインちゃんもレベルが低い状況らしく苦戦気味。そこで新ヒロインのラミネリア? が攻略対象たちと共闘して前攻略対象たちと共に学園を守るのだ。
ただ、やはり学生たちの損害は測り知れず。このイベントが起こった際、アイアールは真っ先に魔物に殺され、バルバロイ先生も重傷。教頭は死に、校長先生は己の命を掛けて学園を守りきり、しかしこの闘いで負った傷のせいで半身不随になるらしい。
ま、そんな未来は御免被るってもんですよ。
なので私達は画策したのだ。
私が鍛えた兵士達が学園を見回ることでダンジョンがモンスターパレードを引き起こしても即座に対応出来る面子を揃えた。
数もむしろ少数かと不安になる位だが、量より質を取った兵士達なら充分持たせられるだろう。
彼らが生徒達を守ってくれれば、私やキーリが動ける。
ダンジョンに入って原因を突き止め粉砕することだって可能なはずだ。
もちろん、その予兆があるかもしれないダンジョンにはちょくちょく入って調べようとは思ってるんだけど、ダンジョン入れるのが二年生以降らしいんだよね。今校長先生と交渉中なんだよ。
入れるようになったら探索してみなきゃ。もしかしたら邪神洞窟みたいなヤバゲなダンジョンが地下に隠れてるかも知れないし。
「なるほどのぅ、それで兵士たちの派遣と校長達をそのままにした訳か」
「はい。今彼らを変えてしまうと物語が大きく変化してしまい、ダンジョンやスパイに脆弱に成りかねません。対応がそれなりに出来ると分かっている校長を残す意味はあるかと思いました」
「……のぅ、宰相? これ、校長たち処刑したりしてもロゼッタ嬢居ればいいのでは? 次、学園の維持させろとか、言ってこんかな?」
「……いうな、グラン。本人は認めん。それと、そんな事をすればお嬢信者がさらに増えるぞ」
二人して何小声で言ってるんだよ?
「教師に関してはそれ以外にも、彼らを一気に無くしてしまうと学園が立ち行かなくなりますから」
「う、うむ……のぅ宰相、やっぱその時ロゼッタ嬢を校長にしてしまえば万事解決するのでは……」
「やめてくれグラン、私はこれ以上の激務はうんざりだ。奴のやらかしを増やさないでくれないか?」
だからなんで二人して小声で会話するんだよ?
「校長以下教師たちは貴族から突き上げを喰らうことを了承して残っていただきました。それに加えてこれから兵士達と共に学園の闇を次々に暴き風通しをよくするつもりです、これで先生方が今までの甘い考えを捨てたのだと内外に示す事が出来るかと思います」
「……宰相、なんか、こやつを校長にせんでもお前達の仕事、増えそうなんじゃが?」
「言うな、グラン。わかりきったことだ」
折角の会議なのに二人だけで小声の会議しないでほしいんだよ?




