71話・ロゼッタ、魔物に付いて考察
夕食時。お父様に全部話そうとしたら途中で気絶してしまった。
いや、まぁ殆ど話終えてはいたんだけどね。最後のテイムはわざとじゃないんだよ。ってことをちゃんと説明するまえにお父様が気絶しちゃったんだよ。
さすがにセバスが助けてくれたから頭打ったりとかはしなかったけど、正直お父様まで気絶は想定外なんだよ。
御蔭でセバスにお嬢様やり過ぎです。ご自重くださいって怒られてしまった。
結局両親がダウンしたので私は食事を取ってキーリと自室に戻ることにした。
キーリについては明日に回すんだよ。
セバスが何とかしてみますって言ってくれたのでとりあえずお任せ。朝食の時に改めてお話するつもりだ。
食事を終えたらお風呂タイム。両親が倒れているので一番風呂です。
でも気付いたよ。一番風呂は風呂の熱さを見るために入ったメイドさんだったんだよ。
家長であるお父様でも絶対に毎日二番風呂なのさ。
キーリと二人全裸でメイドさんに丸洗い。
初めてのことにキーリが慌てていたが、そういうものだと説明受けると、むしろ喜んで丸洗いされていた。自分で洗うより楽でいいらしい。
私は自分で洗えるなら洗いたい派なんだけどね。
お風呂に入り終えたら、自分の部屋に戻る。
リオネッタが凄くキーリについて知りたそうにしていたので、私の妹。でごり押ししておいた。
ふっ。魔族だろう、程度は思い付くだろうけど邪神だとはつゆほども気付きはしないんだよ。
リオネッタは暴露しちゃうからキーリについては彼女にも秘密しまくった方がいいんだ。
さぁって今日も日記を書きますか。
まずは今日行ったことを書き書き。
邪神ちゃんをテイムしたけどイケないことするためじゃないんだよ。
さて、なんかここ最近忙しかったりで後回しになってたんだけど、魔物について考察するんだよ。
あ、その前に、リオネッタ。もうそろそろ寝るからリオネッタは戻っていいんだよ。はいこれ、いらなくなったメモ用紙。
依頼受けた時に採取に必要な名前書いただけの奴を渡しておくんだよ。
リオネッタはキーリを何度か見ながらも、自分の部屋へと帰って行った。
よし、キーリ、考察の時間なんだよ。
「ウチも? 何を考察するん?」
ベッドにごろごろ転がっていたキーリがベッドから降りて来る。
机に向かっていた私の背後に来ると、しなだれかかるように抱きついて来た。
やめんか、私はそっち系じゃない。っていうか遊んでるな邪神ちゃん。
「ふふ。人からかうんは楽しいんやで?」
ドSだよこの娘は。
「さて、気を取り直して、まず今回の趣旨を説明するんだよ」
「はいはい。なんなん?」
「まず考察すべきはゴブリンを倒したけど忌避感がなかったんだよ」
小首を傾げる邪神ちゃん。うん、知ってる。日本人だった寛子さんからして不思議なだけでロゼッタな私もキーリもゴブリン倒すの普通のことじゃん、としか思えてないんだよ。
「まずキーリに説明ね。ゴブリンは人型です。人型というのは人間と同じ二足歩行で両手に武器持って言葉を喋ったりします。普通、人は自分と同じ人を斬る時に嫌悪を覚える生き物です。場合によっては吐きます。そして夢に殺した相手がでてきてうなされます。最悪一生罪の意識に苛まれて発狂します」
「人間さんって難儀やなぁ」
呆れた顔の邪神ちゃん。うん、どう見ても邪神に自身に似た存在殺すことに対する忌避感なんて皆無なんだよ。相談する相手として役不足だったんだよ。
「でも、ゴブリンを倒したとき、忌避感は全くなかったのです。そればかりか、つぎつぎ襲いかかるゴブリンを斬っては捨て斬っては捨て、実際に捨てた後に子供たちが魔石回収してたから捨てたであってるんだよ」
「その辺りについてウチ深く聞いてへんよ? そんな話聞かされても困るわぁ」
いいんだよ、ちょっと言い訳してみただけなんだから。
「さて、そこで問題になるのが、ゴブリンが人型だけど人じゃないからどれだけ斬っても嫌悪感が無いんだよおかしいな。問題となるのです!」
「ふぁ~。ウチそろそろ寝てもええかなー。主様も寝よ。二人抱きしめ合って深い倒錯の彼方へ呼ばれよやぁ」
あ、この野郎、話が興味無いからって即効ベッドに戻りやがった。
酷いんだよ、人でなし、邪神ー。あれ? これ悪口にならないんだよ?
「おやすみぃ。あー、久々にゆったり寝れるわぁ。主様に感謝やー」
うわ、ホントに寝たし。しかも私のベッドだよそこ。一緒に寝るしかなくなったじゃん。まぁベッド一つしかないから仕方ないんだけども。
しかし、魔物殺害、かぁ。今までの感じからしてどうにも脳内で魔物を倒すのは当然のこと、という常識があるんだよ。だから気にならないようだ。この世界特有なのかな?
逆に人を殺すのは? と思えば殺人を考えただけで全身が震えて来るんだよ。無理。私には無理だよって本能が叫ぶんだよ。
魔物は良し、殺人はダメ。不思議だな?