702話、ロゼッタ、誰か助けてっ
「えっと、なんて?」
聞きたくない言葉に一瞬思考が停止した。
「はい、アイアールから私を守ってくださったロゼッタお姉様にガチで惚れましたっ。責任取って娶ってくださいっ」
「おちつけ。私は女だっ」
「私も女ですっ」
いや、だから、待って。え、どういうこと?
キーリ、笑ってないで助けてっ!?
「い、いや、ほら、私にはリオネル様っていう婚約者がいてね。このまま結婚するつもりなのよ。つまり私はノーマルなの、男性との結婚は求めるけど女性との結婚はしないの」
「私は一向に構わんっ」
ネタぶっ込んでくんな。これだから転生者はっ。
「いや、ぶっちゃけるとさぁ、前世で男と結婚したことで痛い目見てるのよ私。不倫した上に借金しててさぁ。不倫が見つかったら相手じゃなく私を不倫相手だって言って来て向こうから慰謝料請求されるわ。男は自分が払う慰謝料を私に押しつけばっくれやがったし。借金塗れで督促状くるし、家具は全部差し押さえされるし、ドアの向こうには反グレ者が借金返せやっとか怒鳴ってくるし、絶望のまま餓死よ餓死」
それはまぁ、同情するわ。私も毒殺だったからなんとも言えないけどさぁ。
「だから、イケメンと結婚する、とは考えてはいたけど、やっぱりちょっと男性に苦手意識があるんですよ私。その点。ロゼッタお姉様は強い、頼りになる、漢らしい。お金持ち、玉の輿、女同士なので不倫にならない。そして何より、借金作って逃げたりしないっ」
「めっちゃ当たっとる」
いや、いろいろ間違ってるでしょ!?
「そもそも女同士での結婚はライオネル王国認めてないんじゃない?」
「はい、ライオネル王国以外でもまず認められていないのです」
おっとそういえばシェリフラディアもいたわね。空気みたいに控えてるから一瞬忘れてたわ。
「男と結婚しろ、というのならばリオネル様の側室になります。そしてロゼッタお姉様の女になりますっ!」
なんでさ!?
「男なんかよりよっぽど頼りになる御方、私、ようやく運命の相手に出会えた気がしますッ!」
いや、落ち付け。一時の気の迷いだから。
「ええんとちゃう? やって一時の気の迷いやったらその内離れていくやろし、学園で惚れる男が出来るかもやん?」
まぁ、確かにそうなんだけども。
なんで転生者なのに私に惚れるかな?
「違うわロゼッタお姉様。転生者だからこそ、よ。向こうの世界は男性同士、女性同士の結婚も国によって可能でしょ? 日本でもカップルはいるんだし、そういう知識があるから辿りつけた正解なのよ!」
いや、正解じゃないからね。
そもそも私はノーマルだ!
「でも、ほら、キーリクライク・プライダルをテイムしてるじゃない。テイムってあの18禁ゲームのスキルでしょ。ってことは愛玩用じゃないですか」
いやー。これには訳が……
「そうやーウチってば主はんの愛玩生物やのー」
こら、相手に合わせて恥ずかしげに顔両手で隠しながらくねるな。
「ほら、既に一人居るのならもう一人増えても問題ないでしょロゼッタお姉様」
「そやそや、ウチも義理やけど妹やし、一人妹増えてもええやん」
まて、お前、なぜそちら側にいる!?
畜生、キーリ、裏切ったわねっ!
「ええんやで。これを機に、ウチに手をだしても、ええんやでー」
そういえばこの変態邪神、私に襲われようとしてたわね。
最近は抱き枕にしてたから大人しかったけど、だめだ味方がいないんだよ!?
は、そうだわ。シェリー、貴女が居るじゃない。
「シェリー、ほら、自分の妹が道外れそうになってるわよ。なんとかしようっ」
「え、えぇと。それが妹の選んだ道なら、姉として応援すべきな気がしなくも……」
「間違いを正すのも姉の役目です!」
「ぴゃぁい!?」
「と、とにかく、この二人、手を組むと意外と厄介そうだからなんとかして」
「えぇ。私では無理だと思うのです。カルシェ。ほら、イケメンリスト作るって言ってたでしょ?」
「大丈夫よ姉さん。姉さんが幸せなエンディング迎えられるように、イケメンリストは作るし、どうにかサラディンエンドへの道筋見付けてみるわ」
なんでサラディン? でも丁度話が別方向に向ったから乗っとこう。
「サラディンに会いたいの?」
「と、いうより、現状グッドエンド迎えられそうな攻略対象がサラディンしか居ない気がしますロゼッタお姉様」
「主はんがいろいろやらかしたからなー。攻略対象殆ど攻略不能なっとるんよ」
まぁ、それもそうか。
んー、まぁサラディンには決まった相手はいなかったはずだし。シェリーならそこまで変な女じゃないから紹介するのは問題なさそうね。
「いいわ。とりあえず今日謁見許可取ってみるから相手の返事次第で紹介しましょうか。多分今回の休暇日に会えるでしょ」
「ぴゃあぁ!? 早過ぎなのです。私全く心の準備ができてないのですっ!?」
心の準備なんていりません。というかシェリーに準備期間なんて作ったら一生告白とか無理でしょ。多分二人きりに任せてもどうしようも無くなるだろうから積極的にアピールづくしするしかないわね。
「ロゼッタお姉様。姉さんの幸せのために、協力してくださいますか!?」
「まぁ、シェリーならそこまで危なくはなさそうだし元影家っていうのもそこまで問題にならないでしょ。宰相閣下も交えて聞いてみましょ」
「しゃ、しゃいしょぅきゃっきゃ? 雲の上の人過ぎるのですぅ、はふんっ」
あ、シェリー気絶しちゃった。




