697話、影のおっちゃん、特殊任務
SIDE:影のおっちゃん(影なので名前はない)
お嬢からまた無茶振りが来た。
アイアール・メタボリックのやらかしの証拠掴めってよ。
今回万一を考えて男ばかりでチームを組んでの証拠集めだ。
本来ならパルシェとデートする日だったのによぉ。全く面倒なことをしてくれたもんだこのおっさん。
二手に分かれて俺たちのチームは学園での証拠集めを行うことになった。
もう一方はメタボリック邸の捜索だ。実家に何かしら黒い証拠があれば家ごと潰せってことらしい。
命令を受けた瞬間から迅速に行動を始めたのでまだ数分と経ってない。
連絡を受けたベルングシュタット家の余裕有る影兵が続々集結し、瞬く間に十数名になる。
俺達は視線でメンバーを決めて誰がどこを捜索するかを数秒で決めて行く。
探索場所が決まれば即座に行動開始だ。
お嬢の御蔭でアイコンタクトだけで会話出来るスキル手に入れたからな。皆して無言で作戦を決めると後はもう個人個人で情報手に入れて情報のすり合わせの時に報告すればいいだけだ。
俺の担当はスニーキングだ。
他三名と共に太ったおっさんを影から監視していく。
アイアールは憤懣やるかたないといった様子でお嬢やバルバロイ先生の悪態を付きながら生徒指導室へと向う。
ん? おい生徒指導室先回りしてくれ。なんか嫌な予感がする。
視線のみで影の一人に頼む。
先行していく影兵はお嬢式訓練を受けた後なのでまさに黒い疾風となって生徒指導室へと侵入する。
数分遅れ、アイアールが生徒会室へと向い、鍵を開けて足を踏み入れた。
すると、彼は何かを探すように周囲を探る。
悪いな、既に先行した影が救出済みだ。俺らにとっちゃ鍵のかかった部屋なんぞ開きっぱなしの扉と一緒だぜ?
「クソッ、なんで僕がこんな目に。ぼ、僕は伯爵の叔父なんだぞ、なぜ足蹴にされねば……いや、むしろあのような綺麗な小娘に足蹴にされたのは、ゴホウビッ!?」
おい、なんか変な扉開いてるぞこの変態。
「ぐへ、ぐへ、ぐへへ。そうかぁ。ロゼッタちゃんかぁ。ぐふふふふ。そういうタイプもありかもなぁ」
なんの話か分からんが、お嬢に手を出すのはやめとけ。死ぬ程度じゃ割に合わんぞ。
「んん? あっれぇ? パルたん? パルたぁーん? おかしいなぁ。いないぞぉ?」
生徒指導室を探し始めた肉達磨。
もはやこれだけでも証拠手に入れたようなもんなんだが、他にもあるだろうしなぁ……
皆、今日は多分帰れねぇぞ。
それからパルたんとやらを捜索すること二時間。
ゴミ箱の中や机の裏側まで覗き込み、大して広くも無い部屋を何度も探して行く。
いやー、レベリングしてなかったら俺らでも見付かっててもおかしくなかったな。それくらい念入りに部屋の中探しやがった。
残念ながらパルたんとやらは既に救出されてバルバロイ先生の元に届けられているはずだ。
今年のメンバーはお嬢が眼を光らせていたので襲われてはいないはず。なので去年からずっとここに監禁されていた女生徒だろう。
声さえ聞こえればお嬢が動いていたはずなんだが……声すら出せなかったっつーことか? 痛ましいな。
慌てたように生徒指導室を後にする肉達磨。もはやアイアールとか言うべき存在でもないだろ。肉達磨で十分だ。
廊下を走り、どこかへと向かう。
結構速度があるので俺達もさすがに焦る。
つっても今のレベル差の御蔭か隠蔽状態のまま追えてるが、レベル上げがされてなければおそらく撒かれていただろう。
意外と動けるぞこのデ……おっと失礼。肉達磨だったな。
やって来たのは職員用の寮。
まさか校舎を飛び出るとは思わなかった。
ドスドスと乱暴に走る。
おい、先にコイツの部屋に連絡入れていてくれ。多分仲間が捜索してるはずだ。
影の一人にアイコンタクト。
年若い影が先行して行く。
「ん? なんか今、影みたいのが……き、気のせいか?」
おい、あいつうっすらとだが影の動きに気付きやがった。警戒段階一つ引き上げるぞ。
なんでこいつは無駄に優秀なんだ。しかもそれを自分の欲望にしか使ってねぇし。
すでに連絡が行き届いた肉達磨の自室へと入る。
部屋の中にはすでに七人の影兵が隠れていた。
俺達も入って合計十人だ。さすがにこの狭い部屋に隠れるのは辛い。
さすがに声を出すとバレるのでアイコンタクトだけで会話する。
『この部屋に捕まってた女の子六人保護』
『こちらも生徒指導室にいた一人を保護、バルバロイの元に送っておいた』
『ヤバそうな資料も見付けたぞ』
『こいつ生徒指導立候補したあたりから欲望のままに動いてるぞ。これ、被害者リストだ』
渡されたのは僕の嫁リストとか書かれた分厚いファイル。こんなに被害者いるのかよ!?
『長い間生徒指導してたらしいからな。お気に入りの子以外は放逐してるらしい。相手もこんな肉達磨に襲われたなんて言えないらしくて泣き寝入りだ』
「んん? あれ? あれ? なんで? なんで誰もいないんだ!? 誰だッ! 僕の嫁を盗んだ奴はッ!!」
いや、お前の嫁じゃねぇし。
部屋の中で暴れ出したので俺達は慌てて部屋から脱出する。
証拠は手に入れたし早急に潰れて貰おう。




