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67話・レニファティウス、ロゼッタを見失った? 死にたいのか?

「ほ、報告します」


 書斎で書類を相手に闘っていると、いつものように影の一人が報告にやってきた。

 ただ、今までと違い、切羽詰まったような雰囲気がある。

 ただ事ではない様子に、私も手を止め相手の言葉に注視する。


「ロゼッタ様の本日の動向ですが、再びギルドを訪れたようです」


「ふむ。今日も向かったようだな。セバスからも報告は受けている。昼には戻るそうだ」


「は、はい。それで、その、本日はダンジョンの場所を聞いて回っておりました」


 ダンジョン? まだFランクだろう? いや、場所を知り、冒険者の話を聞くだけかもしれん。


「初心者用ダンジョンでパワーレベリングでもして貰うつもりか? ちゃんとお前らが一人は手伝っているのだろうな? 娘にもしもの事があれば……おい? なんだその顔は?」


 なんだ? 嫌な予感がする。

 待て。なんでそんな死を覚悟した顔で息を吐きだす。

 決意した顔で顔を上げるな。こっちが不安になるじゃないか。


「お嬢様が向かわれたのは……邪神の洞窟です」


「何だとっ!?」


 思わず立ち上がる。

 予想外のことに自然身体がこわばった。

 邪神の、洞窟?


「まさか、知らずに向かったのか!? なぜ止めなかった!!」


「い、いえ。ちゃんと説明を聞いておりましたし、推奨レベル200と聞いて納得もしておりました。それでも邪神の洞窟周辺で取れる採取依頼を受け、洞窟へ向ってしまわれました」


 一瞬、力が抜けた。安堵の息が漏れる。

 そうか、ただ邪神の洞窟を見てみたかっただけか。周辺で採取依頼をこなしつつ、冒険者達の最終目標地点を見に行ったんだな。


「それで、そこに挑む冒険者に話でも聞いていたのか?」


 しかし、影は言い淀む。

 おい、どうした? 何があった?

 ロゼッタは何をしたッ!? 私の可愛いロゼッタに何があったァッ!!


「ひぃッ!? あ、そ、その、採取自体はすぐに済みました。別の影が見ておりました所、迷うことなく目的の草を次々に採取していったようです。どうも、魔法を習った事で草の区別が付く魔法を使い始めたようです」


「そのような魔法があるのか? あのボーエンという男、なかなか魔術に秀でているようだな。雇って正解だったようだ。それで? 採取が終わってどうなった?」


「お嬢様は……お嬢様はッ」


 おい、なんでそこで止まるッ。

 思わず言葉と共にこちらもうん、うんっと力んでしまうではないか。

 ロゼッタがどうしたんだっ!?


「お嬢様はッ、邪神洞窟に入ってしまわれましたッ」


「なんだとぉ――――――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!!!!」


 思わず両手を叩きつけた机が粉砕した。

 ソレを見てビクッと肩を震わせる影は、意を決して言葉を続けた。

 おい、おいっ、なぜ目を瞑るッ!?


「お嬢様をお止めしようと数人の影が入ったのですが、そこで、お嬢様に襲いかかるオルトロスが」


「なんだとぉ――――――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!!!!」


「ひぃぃッ、お、オルトロスが噛みつくすん「なんだとぉ――――――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!!!!」

ぜんでお嬢様の張った結界と思しき者に阻まれ「なんだとぉ――――――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!!!!」

うひぃっ!? お、お嬢様がオルトロスを難なく倒してしまわれましたッ」


「なんッだとぉ――――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!!!!」


 怒りの絶叫に臆しながらも必死に言い切る影。

 なん、だと? え? オルトロス、倒した?


「ロゼッタは、怪我、は?」


「む、無傷でございますっ!?」


「は……はは。そ、そうか。無傷? え? 無傷? 相手は推奨レベル200のベテラン冒険者も苦戦する双頭の犬? 無傷? ん? ああ、これは夢か? いやぁ、我が娘は強いなぁ。教えた魔法の先生がよかったのだな。防御魔法も使えるとはさすがだなボーエン。給料上げてやるか」


 力みすぎて疲れた。

 力無く背後の椅子に座り込む。


「そ、それで……」


「ま、まだ、あるのか?」


 まだ終わらんのか!? 心して聞くため再び立ち上がる。


「ここから、その、心して聞いてください……」


 悲痛な顔で告げる影。おい、まさか、ロゼッタは、そこで引き返さなかったのか?


「階層主のいるボス部屋までは追えたのです」


「追えた? いや、まさか……」


 嫌な言い回しに全身から血の気が引いた。

 まさか、まさかロゼッタは……

 愛娘に、もう、二度と会えない?

 ああ、こんなことなら、無理にでも家に監禁して冒険者ごっこなどさせるんじゃなかった。


「お嬢様は、ケルベロスを討伐し、その後、ダンジョン内に深い穴を掘り……そこへ身を投じてしまいましたッ!!」


「はっ?」


「あまりに深く、飛行魔法など使える訳も無い我々では追うこと叶わずッ見失いましたッ!!」


「なんだとォォォォォ――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!!!!」


 貴様等ッ、何のためのロゼッタの護衛だッ! 護衛なら穴に飛び込め、そして死ねッ! いいやいっそ全員殺して……


「失礼しま……おやご主人様に、影もいらっしゃるのですか?」


 卒倒しそうな叫びを上げた瞬間、セバスがのんきにやってきた。部屋の光景を見て小首を傾げる。


「お嬢様が御戻りになりましたので昼食の用意を致しますが……どうしました?」


「「なんだとぉ―――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!!!!」」


 私と影の叫びは見事にハモったのだった。

 ちなみに、昼食時にロゼッタから洞窟についての報告は無かった。あと、妹が一人できたらしい。……誰だあれ?

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