64話・ロゼッタ、なんか……ごめん
ゆっくりとダンジョン内を歩く。
急造の罠察知魔法は全く反応してない。
これ、使える魔法なのかどうか罠が無いから分からないんだよ。
魔物の姿も見当たらない。
多分入口付近は安全地帯とかなんだろう。
ここで一旦装備整えたりなどして探索行くんだよ。
だから細い道じゃなくて広場みたいになってるんだよ。
目の前の道が狭まってるのがその証拠、ここからがダンジョンなんだよきっと。
道を真っ直ぐ、T字路になってるようなのでどっち行こうかなって思いながら近づいた瞬間だった。
唐突に危機察知魔法が鳴りだす。
唐突過ぎたんで驚き硬直。その間に角から飛び出してきた大型生物が飛びかかってきた。
あまりに急過ぎて反撃とか逃げるとか、反応など出来なかった。
出来たのは、とっさに顔を守るように手でガードして眼を瞑るくらいである。
そして……
ガキン
パキキキキキキキキキキャンッ
「「ギャイーンッ!?」」
って、なんだ今の音?
食いつかれるような衝撃もなかったのでゆっくりと目を開く。
顔を守るように挙げていた腕を降ろして相手を見れば、口元押さえて悶え泣く双頭の犬が一匹。
どうなって……あ、そうか。
今の音から推測するに、ガキンで私に噛みつき、張ってあった結界に阻まれる。
パキャンって音はその時反射したダメージだろう。
つまり、噛みつき攻撃をそのまま反射したせいで口の中にダメージが跳ね返ったようだ。
しかも、張った反射結界は10枚。
どうやら全部反応して10連反射しちゃったらしい。
たった一回二つの首で同時に噛みついただけなのに、2×10倍にして反射。
結果、牙全部粉砕された双頭の犬はこうして痛みで悶え苦しむしか出来なくなったようだ。
うん、その、なんか……ごめんね?
とりあえず、可哀想だったけど魔物相手だったのでそのまま虎鉄丸で介錯してあげるんだよ。
切り捨て、ごめーんっ!
よし、撃破。
今回は結界を破れなかったから良かったけど、今の状態じゃ結界張ってなかったら噛みつかれて死んでたんだよ。これからもダンジョン潜ったり、危機的状況に陥ったりといろいろありそうだから、今のうちに慣れた方が良いんだよ。
とりあえず、この双頭の犬は結界抜けないみたいだからこのお犬さんで慣れさせて貰おう。
お、また来た。危機察知がサイレン音を脳内に鳴らしだす。
あの映画とかでよくある緊急事態のサイレンの音を再現してみたんだよ。
襲いかかってきた双頭の……これ、オルトロスでいいんだよね、多分。
オルトロスは反射結界に噛みつき、勝手に口内ダメージで牙全部粉砕されて悶え苦しむ。
うん、なんか、やっぱごめん?
凄く、可哀想なんだよ?
でも、倒しちゃうの。
私の経験値になるんだよぉ。
ああ、イケないわロゼッタ。慈悲を請う魔物さんに無慈悲に引導を渡してしまうなんて、悪人よ。悪役令嬢なのよ。おーほっほっほっほっほ。
「グガァ!」
うわっ、なんかでっかい人型来た!?
3メートルくらいのガチムチ系グリーンスキン。
一つ目に角が付いたその生物は、棍棒持って壁すれすれの身体をゆっくりとこちらに向かって来ていた。
一応、武器を構えて何時でも回避できるようにしておく。
振り被られる棍棒。思いっきり、振り下ろす。
ガキン
パキキキキキキキキキキャンッ
「グギャアアアアアアアアアアアアアアア!?」
って、死ぬんかーいっ!?
ダメージがデカ過ぎたらしく、10倍返しだーって反射したらサイクロプスっぽいのが自滅した。
わ、私は何もやってないから、ほら、悪くはないんだよ?
それからも、いろんな魔物が現れては10倍返しに遭って散っていく。
私、危険な状況での体勢立て直しとかしたいんだけど、なんかこれじゃあ無敵状態で突撃する配管工さんになってるんだよ?
ブラックなパックンさんの上だって走りまわって飛びまわってくるりんぱしちゃうんだよ。
んー、なんか考えてたダンジョン攻略と違う気がするんだよ。
いや、魔物と泥臭い格闘して血塗れの勝利とかはいらないんだけど、もっとこう、ちょっと、なんかなぁー。
「ギャイーンッ」
ああ、また。
背後から奇襲して来たオルトロスが悶えている。
悶える魔物に刀を突き刺すだけの簡単なお仕事です。
もうちょっと奥だったら刺激のある闘いになるかなぁ?
そんな期待を胸に少し、また少しと奥へと移動して行く。
ありゃ? なんか変な観音開きの扉があるんだよ?
「これって、ボス部屋?」
ここのボスに挑む気はないんだけどなぁ。
とりあえず覗くだけ。ちょっと見るだけなんだよ?
んー、部屋で私の到着待ってるのはどうみても三つ首の犬なんだよ。
ケルベロスなのかな?
って、あ、しまった。気付かれた。
ファイアーブレスが私に向かって放たれ……
キュインッと魔法反射が発動。
あ、ブレスって魔法扱いなんだ?




