604話、ロゼッタ、見学に行こう
いやー、もう先日は酷かった。
アルケーニスの本拠地に案内されていろいろ説明受けたけど、あの紳士、肝心なとこひとっつも説明しないでやんの。
まぁ、ピュリティア姫は十分楽しめたみたいだからいんだけども。
むしろオスカー連れてたせいで説明箇所いくつかぼかしたのかも。
下手にガサ入れされたくないだろうし。
王国側に情報を与えたくはなかったんでしょ。
だから、まぁ、今回はあの説明で満足しておきましょう。
ピュリティア姫も表と裏の生活を知れたようで、満足して我が家で暮らし始めた。
平民より酷い生活の浮浪者とか、ケロちゃん商会を隠れ蓑にしているケルベロスなんとかって組織は教えてないんだけど、満足してるみたいだしいいよね?
さて、余裕ができたし、訓練ではまだ私は必要ないってことなので暇を持て余した私は、かねてよりお願いされていた他国を見に行く事にした。
飛行でひとっとびだし、ちょっろっと行って戻ってくるだけだからそこまで問題にはならないでしょう。
空を飛ぶから検問とか砦とか総スルーなんだよ?
本日はコウチャノサイテン王国にやってきました。
裏路地に着地して変装変装。冒険者ベルン君ファッションである。
さて、とりあえず紅茶の流通価格から調べましょうか。
茶屋はどこかなぁ?
「おぅ、兄さん、どうだい、焼き立てだぜー」
「兄ちゃん、ソイツの肉はまっずいからよぉ、どうせ買うなら俺んとこのを買ってきな」
「ンだと、テメェの肉の方が不味いじゃねーか」
「お前の焼き方よりゃマシだっ」
あっれぇ。私何もしてないけどなんか取っ組み合いの喧嘩に発展したんだけども?
「言ったなテメェ、表出ろや!」
「吠え面掻かせてやる!」
そして取っ組み合いの喧嘩が始まる。
あの、私完全に放置されてるけど勝手にフラグ立てないでよ、目立ちたくないんだから。
とりあえず、衛兵さん達が来る前に撤退。
屋台からさっさと引き上げた私は宿屋街を歩く。
この町は宿屋は宿屋でいくつもの宿屋が軒を連ねているようだ。
おそらく他の店も同じだろう。武器屋は武器屋街、防具屋は防具屋街として存在するはずだ。
とりあえず、日帰りのつもりなので今回宿屋街は素通りだ。
目指すのは茶葉が置かれた道具屋。
何処にあるのかなぁっと。
あ、宿屋街抜けたら中央広場だ。
立て札で行き先書かれてる。
どうやら案内掲示板は無いらしい。
立て札に従えってことか。
えーっと道具屋街は……いや、むしろ土産物屋街かな?
おー、これはちょっと観光客には嬉しいなぁ。
ただ、冒険者としてはこの町だいぶ不親切だ。
何しろ防具屋や武具屋と道具屋が離されているし、酒場と宿屋も区域が違う。
ちょっと一杯引っかけて宿屋でグースカ、なんてことはできないようだ。
多分深夜になれば酒場街周辺で野宿というか道端で寝こけてる人が沢山出るのだろう。
財布や貴重な道具、盗まれないと良いね。
えーっと、あ、アレが茶屋ね。
あー、凄い、すでに茶葉の匂いが漂ってる。
抹茶飲みたいなぁ。
えーっと確かウチの王様が購入してるのは祭典茶だっけ?
コウチャノサイテンでよく呑まれてる貴族用の茶葉……貴族用の……そう言えばここ、貴族街じゃないわよね?
「あ、そこの可愛らしいお嬢さん、少し質問いいかな?」
「え? は……はひっ、私でよければっ」
うん? なんか顔赤いけど大丈夫? 風邪かな?
「貴族はここの茶葉買ったりするのかな?」
「え? あ、いえ、お貴族様がお買いになる茶葉は貴族街にある御茶屋さんが取り扱ってます。ウチでは二番茶が殆どです」
「二番茶?」
「はい、この祭典茶などは特に外国から来られた方用に多種の茶葉をブレンドしておりまして、それぞれの収穫した一番状態の良い茶葉はお貴族様用の銘柄に、これは少し状態の悪い、と言ってはなんですが、お貴族様用に使えない茶葉を集めて作った銘柄になります」
「うん? じゃあ貴族用の祭典茶は?」
「ありません。祭典茶自体が庶民用の茶葉ですので」
あらら、宰相閣下、ウチの王様騙されてますよ?
「まぁ折角だし、ソレを一つ。共通通貨でもいいかな?」
「はい、ただ、共通通貨ですと少し高くなりますよ? 我が国の通貨だと200チャレンですけど共通通貨ですと220SKL程になるかと」
「問題ないよ。ではソレで購入させてくれ、割高なのはお嬢さんの可愛らしい笑顔分の付け足しってことで」
「も、もぅ、からかわないでくださいっ」
ちょっと割高だけどコウチャノサイテンから我が国が購入している茶葉の購入金額を考えれば、この金額はかなり良心的な値段なので迷わず購入。
この後貴族街に侵入して茶葉見て来たけど、どうやらウチが購入している茶葉は貴族用ではなく庶民用で確定のようだ。
せっかくなので貴族用に売られていた茶葉10種を全て購入しておいた。
全部、ウチが祭典茶購入してる金額よりかなり安かったけどね。
宰相閣下に報告しなきゃ。




