597話、ロゼッタ、この女、どうしてくれよう?
「つまり、そなたに罪は無いと?」
「おデブさんにむりやり連れて来られて、王子の嫁にされそうになりましたわ。ほんと、この国はどうなってますの!」
逆切れしだしたよ。
いや、それで通ると思ってんの?
ほら、宰相閣下も眉間に皺寄せてソレと指で摘んで沈痛な面持ちになってるし。
「ペルグリッド嬢、私共が掴んでいる情報では、ロゼッタ嬢を失脚させるためにガイウス王子を解放させるという行動は貴女が提案したと聞いておりますが」
「まぁ、誰から聞きましたのそんな恐ろしい計画。きっと話を聞き間違えたのね。私は一切関係ありませんわ。そんな恐ろしい計画、私のような王女が出来る訳がありませんでしょう?」
うわー、これは絶対に認める気ないぞ。どれ程証拠積み上げても知りませんの一点張りで被害者になるつもりだ。
私が宰相閣下に視線を向けると、宰相閣下も困ったように首を振る。
現状では状況証拠と影からの話しだけで彼女を追い詰めるのは無理っぽいようだ。現行犯として捕まえないと一応王女だしねぇ。まだ形式上はファーガレア滅びてないし。
ほんと現行犯ならなんとかできるんだけど、ガイウス王子を牢から出したのはクノッテンだし、塔に入ったのもクノッテン。彼女は本当に同行していただけ、しかもガイウス王子に人質に取られた姿だけは皆が目撃済み。
これはさすがに罪には問えないか。限りなくグレーに近い黒なんだけどなぁ。
「はぁ、とりあえず厳重注意ですかね?」
「それが良さそうじゃな。しかしペルグリッド王女、そなたなぜクノッテンと一緒に居ったのじゃ?」
「ですから、それは向こうから……」
「そうではない。確かプライダル商店の寮に住んでいるのではなかったかの」
「そうですね、あの寮では外に出る事は無かったかと」
「そ、それは……あんな場所に毎日いるなど息が詰まるではないですか。たまには外出したいですわ」
「つまり、抜けだした先で捕まって犯罪に利用されたと?」
「う、それは……」
視線を泳がせるペルグリッド。
「ペルグリッド王女、そなたは国が滅びたから我が国に亡命することを選んだと聞いておる。本来ならば王城で隔離すべき存在なのだが、この国の基本的な常識を学ぶために寮住まいになっているはずだ。危険だから外にはでるな、その誓いを破って犯罪に巻き込まれたとなれば、自業自得と言わざるを得んのだが」
「そ、それは、はい、反省しております」
「うむ。これから外に出る時は護衛が必要なのではないかの。おおそうだ。近衛兵を一人貸しだすとしよう仮にも元王女ならば問題あるまい。オスカー誰か見繕ってくれ」
「かしこまりました」
「ペルグリッド王女、これから外に出る際は、必ず近衛兵と共に行動を共にしなさい。そうすれば犯罪には巻き込まれんだろう」
「お、お心遣い感謝いたします……わ」
監視付きになったか。誰が来るかはともかく、これで多少はやらかしも少なくなるといいなぁ。
「ピュリティア姫は明日からは貴族街の観察だったな」
「え? あ、はい、そうです」
「ではオスカー、こちらにも近衛兵の護衛を……」
「あ、あの、それでしたら、私はこちらの方に警護していただきたく……」
と、ピュリティア姫が指名したのは、レイコック。
おお、大出世じゃん。
「なんと? し、しかし、その者はクノッテンの弟で、そなたを人質にしようとしたモノの家族で……」
「ロゼッタ様から習ったこの国の基本理念、罪は個人に家族は別、と習いましたわ」
それは平民の罪です姫様。
「うぅむ……」
し、視線が痛い。違うんですよ宰相閣下。教え方が間違ってるのではなくて解釈が間違ってたんです。あとで伝え直しますから。
「それに、この方は私を本当に守ってくださいました。震えながらも奮い立ってくださいました。守ってくださるならそんな殿方の方が、好ましく思います」
って、顔赤らめながら言わないで。なんか嫌な予感して来たぞ。
あの親にしてこの娘あり、決め込んだら一途とか、ないわよね?
「ふぅ、了解した。レイコック、明日から総司令官ロゼッタに従いピュリティア姫の警護を任ずる」
「か、かしこまりました」
と、返事したはいいものの、脂汗塗れのレイコック。まさか自分が要人警護をすることになるとは思ってもいなかったようだ。
そもそもが伯爵家の中でも爪弾き者で兄が爵位持ったら追い出される可能性すらあったのだから、そんな存在が兄を差し置いて他国の姫を護衛することになるとは思ってみなかったんだろう。
大丈夫かレイコック?
「案内役も必要だろう、誰か見繕っておこう。ベルングシュタット家に明日の朝向かわせる、それでよいかロゼッタ嬢?」
「はい、問題はありません」
「では下がって良い。ピュリティア姫を頼んだぞ」
「かしこまりました」
ピュリティア姫はウチで居候だからね。とりあえず帰りの馬車ではこの問題娘と一緒にさせるけど、下手に会話するなよペルグリッド。




