55話・ロゼッタ、取り過ぎたんだよ
昼になる前に切り上げる。
皆も日銭は充分稼げたらしく、一緒に帰るそうだ。
子供たちに混じって歩く。
なんか、一人だけ浮いてる気がするんだけど、私だってまだ8歳。背丈も小さいので皆に隠れるのである。……あれ? だったらなんで私お姉さん呼びされてるんだろう?
帰り際に拾った木の枝ぶんぶん振りまわし、鼻歌歌いながら少年少女と歩く。
うきうき気分だからだろうか? 皆も真似するように同じ鼻歌を歌いだした。
真似してるだけなので所々間違えたり止まったりするけど、なんか楽しくなってきた。
「姉ちゃん、それ、なんなの?」
「んー。これはねぇ」
名作隣のト○ロの曲、そう、あの少女がひたすら歩く名曲である。
丁度今の帰り道とか歌いたくなったのだ。
せっかくなので歌も歌ってみる。
少年少女たちも今日は沢山取れたようで乗ってきた。
多分だけど魔石手に入れたのが一番の嬉しい出来事だろう。
結局ゴブリン大量出現したので全員分の魔石が手に入ったし。
何人いるんだこの子たち?
十三人か。私合わせて。ってことは十二体倒したのか。
魔物を倒すと一定時間で死体は消えるらしく、その間に魔石を取り除ければ魔石を入手できる。
それをせずに放置すると、魔石は手に入らず死体も消え去り、ドロップアイテムを残すそうだ。
ってことは、私が魔法で倒したゴブリン君もどこかでドロップアイテムを吐き散らしていたのだろうか?
いや、もったいないとかは思わないよ? だってゴブリンの落とすアイテムって基本棍棒と臭い腰布、魔物肉くらいだもん。
討伐部位は棍棒だそうで、それを魔物討伐鑑定所に持って行けば相応の金貨と変えてくれるのだ。鑑定所で鑑定した後は買取所の方で全部買い取ってくれるので、魔石もここで高価買取が可能なのである。
薬草採取で手に入る金額より、魔石一つの方が高価で、数日は暮らせる金額が手に入るらしい。
皆でお金を持ち寄って食材を買っているらしく。孤児院暮らしばかりらしかった。
その内この子たちの孤児院に向かってみようかな。
せっかくだから何かおっきな魔物倒した後その肉をプレゼントに持って行きたいなぁ。
でもさすがにそんな危険な魔物は討伐できないかも。
危険すぎる冒険はしないんだよ。私はそう、か弱いか弱いご令嬢なのだから!
「あら? 楽しそうな声が聞こえると思ったら。戻って来たんですね」
「あ、受付のお姉さん? なんでカウンターじゃなく外に居るの?」
冒険者ギルドに戻ってくれば、なぜかカウンターの外を歩いていた受付嬢のお姉さん。
手には羊皮紙を丸めたモノを持っていた。
「ギルド内なんだから仕事に決まっているじゃない。はー、折角新人受付所っていう暇な部署に配属されたってのに、こういう雑用全部私がやらされるのよ。面倒臭い」
どうやら手配書のようだ。
賞金首を壁に張る仕事をさせられているらしい。
まぁ、ぶっちゃけやる気なさそうだったもんね。下っ端扱いは仕方無いんだよ。仕事回されるだけマシなんだよ。
受付嬢に挨拶をして分かれ、子供たち共々魔物討伐鑑定所に並ぶ。
本来は依頼完了報告所に並ぶべきなんだろうけど、なんかこっちのが空いてたから先に来たのだ。
他の冒険者は基本依頼完了報告所に並んでから討伐鑑定所に向かうらしいだけど、時間の無駄だしね。
それに私たち、魔物討伐のために依頼完了報告所に向かう必要性全く無いし?
お、鑑定所の受付はおっちゃんだ。
「お、おいおい、ガキ共、こりゃ一体どっから手に入れた?」
子供たちは共同で買い取りしてもらうらしく、全員が自分が持ってた魔物の棍棒をカウンターに置いて行く。
さすがに全員が棍棒置いてしまうと、おっちゃんもスルーは出来なかったようだ。
むしろ誰かから奪ったとか疑惑持たれた?
「姉ちゃんが狩ったんだよ。凄かったんだぜ、こう、しゅぱって」
「邪魔ーって言った時にはゴブリン真っ二つだよ」
「姉ちゃん言ってたもんね。殺そうって思った時にはもう殺してるんだよ。って」
やめてっ、その台詞を他人に話さないでぇ!? それはネタなの。その時限りで笑って済ませばいいだけのネタ台詞なんだよ!? キラキラした瞳で告げないでぇ!?
「姉ちゃんねぇ。どこの奇特な冒険者だ?」
おっちゃんが溜め息吐いた瞬間、子供たちが一斉に私を指差す。
「ん? 新顔? お前さんが姉ちゃんって奴か」
「えーっと、とりあえず子供たちの証明お願いします。確かゴブリンは常時依頼に出てましたよね討伐依頼」
「よく知ってんな。しかし、ガキの中に混じってるからガキかと思ったが、その年でもうDランクか?」
「え?」
「ん?」
「私、今日登録したばかりですからFランクですけど?」
「はぁっ!?」
あ、これ、もしかしてよく小説であったギルドの初回イベント!?
ヤバいんだよ。なんか変なおっちゃんが絡んで来るんだよ。
というかいちゃもん付けて来るんだよ。
目の前におっちゃんがいるけどこっちはギルド員のおっちゃんだから良いおっちゃんなんだよ。悪いおっちゃんはどっから来るの?