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552話、コケオ、魅力的な提案

SIDE:コケオ・ドッシ・スグニマケイル


 国際会議が終わった。

 ようやく肩の荷が下りた気分で、謁見の間の玉座に深く腰掛けくつろいでいた私に、兵士がやって来て来客を告げて来た。

 謁見の先触はこの時間は無かったはずだが、急遽会いたいと言って来た者が居たらしい。


「で、その者、何者だ? そして何用だ?」


「はっ。本人はライオネル王国から重要書類を持って来たと申しているのですが、その内容が、ファーガレアについて、だそうで……我が国にとっても損にはならないはずなのでぜひ聞いていただきたいとのことで、好機チャンスは今回きりなんだよ? と。使者はご令嬢が二人、一人は人間で一人は魔族、いえ、確か国際会議に来られていた邪神ではないかと思います」


 やっべぇのまた来とる!?


「え? ちょっと待て、ライオネル王国はもう帰ったのではないのか!?」


「おそらく転移で帰ったので一瞬で自国に戻っているはずです。ゆえに再来も一瞬かと」


「な、成る程……ん? おい宰相、それはつまり、転移能力者はいつでも我が国に大軍を持ち込めるのではないか!?」


「……」


 おい、なんとかいえ。宰相、サッと首を背けるな。

 嘘だろ? 嘘だと言ってくれ。これ、どう考えても国防できる範疇越えているよな!? 我が国がライオネル王国に敵対したら真っ先に首都が火の海に変わるよな?


「友好国で居たいものですな、はは……」


「おい、そこの兵! 今すぐ通せぇっ!!」


 ま、不味い、不味いぞ、転移能力者、あまりにも軽く見過ぎていたのではないか我々は? 封印指定物ではないか。魔法王国のマギアクロフトは何をしているんだ!? あんなもん戦争に投入されたらどれ程の大軍や強力兵器も目じゃないぞ、戦争の準備をして敵国に向かわせた直後王城が襲撃されれば敗北必至ではないか!?

 い、いかん。他の国はまだ気付いておらんのか、あるいは気付いていても指摘できないのか、と、ととと、とにかくライオネル王国は今までのように下に見ていい相手ではない、しっかりと友好国をアピールしておかねば。


 そういえば天竜は初めこそ仲が良かったが最終日で敵対的になっていたな。ふふ、馬鹿め。ライオネル王国の脅威性を誤認して敵対したのか。大国ともあろうものが。ふふ、ははは。来年まで国があればこの件でイジってやろう。あの大人顔負けの鋭い眼光が悔しげに歪むのを想像すると笑いが込み上げるわ。愉悦愉悦。


「失礼致します。ライオネル王国の使者が来られました」


「通せ」


 やって来たのは金髪の美しい少女、前にも一度、宰相と来ていた総司令官だ。名前は確か、ろぜ……ロゼリア?


「本日は急な来訪にも関わらずお目通りが叶いまして、ありがとうございますわ。ライオネル王国総司令官ロゼッタ・ベルングシュタットでございます」


「おお、ロゼッタ殿、覚えておるよ。そちらの邪神は愛称をキーリでよかったかな?」


「まぁ、キーリのことまで覚えてくださっていらっしゃるなんて、ご記憶がよろしいのですね。我が国の王は何度も私の名を聞かれますのよ?」


 キーリという邪神の方しか覚えていなかったとは言えんな。王が下々の名を覚えるのは余程自分に必要な存在くらいだ。あの王については……痴呆かもしれんな? あるいはリップサービスか。


「それで、何の用だ?」


「はい、実は国際会議の夜会でファーガレアの姫君と仲良くなりまして、このような書状を預かってまいりましたのです。どうぞ」


 何名か傍に侍らせていた文官の一人がロゼッタの元へ向い書状を受け取る。

 まずは自分が確認し、危険な物がないと判断すると、その書状を宰相に手渡した。


「これは……どうぞ陛下」


「うむ」


 宰相が自分の判断をせずに我に渡すか。

 ふむ……ファーガレアの王族のライオネル王国亡命について?

 ……なんだと!? ペルグリッドとマリアネージュを亡命させるぅ!?

 ふざけんな! あの二人は我が愛妾にする予定なのだぞ!? あの国を孤立させているのはあの二人を我がものにするため……いや、落ち付け、冷静になれ。ここで拒否すればおそらくライオネル王国が敵に回る。首都襲撃が現実になりかねん。あの二人は諦める、それが正解だ。


 書類に書かれていることはそれだけではないな。

 王以外の市民を天竜帝国が責任を持って引き受けるのか? 確かにあの死に掛けの民衆は支配してもデメリットしかなかったから嬉しくはあるが、天竜もよく引き受けたな?

 おお、肥沃な大地に関しては我が国が接収してよいのか!? あの国の大地はそれなりに肥沃なのに農地化する技術をあの国の民が持っていないので宝の持ち腐れだったのだ。

 今飢えているのも農民が居ないせいでもあるのだからな。


「いかがでしょう? もし受け入れてくださるのであれば、各国にもスグニマケイルからお知らせいただきたいのですが」


「ふむ、ファーガレア王国国王からの委任状となればあの地を占拠しても確かに問題はあるまい。よかろう、こちらから各地に連絡しておこう。民衆の退去が済み次第入植させて貰うぞ?」


「一週間もしないうちにすべての国民を退去させます。その地に残る選択をした民に関してはスグニマケイル側でいかようにもしてくださいまし。あとファーガレアの国王陛下に関しましては天寿を全うさせていただきたいと姫君が申しておりました」


「ふむ、いかようにしてもいいのか。よいだろう。ファーガレア王の委任を了承し、我が国は一週間後、ファーガレアの地を代行統治させて貰う事にする」


 しかしこれ、連名にファーガレアとライオネルはあるが……天竜帝国の関与が全く見受けられんのだが……まぁいいか。

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― 新着の感想 ―
[一言] さて、天竜の怒りの矛先はスグニマケイル?
2022/03/31 23:42 退会済み
管理
[一言] >コケオ・ドッシ・スグニマケイル  彼はこの作品における、"咬ませ犬"もしくは"道化者"なのかなぁ?(笑)  何にせよ、深く考えずに某悪役令嬢の案に乗った時点で、"暗愚"と呼ばれるに相応し…
[良い点] コケオ・ドッシ・スグニマケイル…名前はいい加減なのに(あ、真剣に考えた結果ならごめん)優秀な人ですね。少なくとも天竜とか4大大国の王様たちよりは優秀に感じます。爪は甘いけど優秀な人なのが伝…
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