547話、ロゼッタ、なんか半泣きで指摘し始めたんだよ?
訓練所の兵士達も私達の帰還に気付いたらしく、訓練を止めて出迎え準備を始める。
全員が隊列組んでぴしっと敬礼する姿は、まるで現代の軍人の様である。
「ロゼッタ総司令官、お疲れ様です!」
「フェイル、こちらに変わりは?」
「ございません。各砦からの急報もなく、いつも通りです」
「そう、メーテルゲルテン辺りは攻めてくるかなって思ったけど来なかったのね」
地面に着地しながらフェイルに話しかける。
私の背後ではキーリが音頭を取って皆無事に転移したか点呼を開始している。
「主はん、全員無事転移完了や」
「了解。それでは陛下、国際会議お疲れさまでした」
「うむ。いや、しかしまさに一瞬の帰還だな。帰り際の各地の美食が結構好きだったのじゃが……あ、いやなんでもない、なんでもないぞクリス」
「早速溜まっている仕事をこなさねばなりませんからな。さっさと部屋に戻り着替えを済ませてください陛下。ええ、さっさと仕事を片付けましょう」
「うえぇ!? 少しくらい休憩を……」
「また土下座したいですか陛下? 陛下の御蔭で大量購入する事になった竹炭の処理方法について話し合いがあるんですよ、ねぇ陛下?」
「う、うぐぐぐぐぐ……」
「あの、宰相閣下? 処分に困るようでしたらプライダル商会で処理しますが? 竹炭は結構需要ありますよ?」
「ふむ。では会議の日程を組むのでその時に使えるモノを思いつく限り伝えてくれ。実現出来そうなものをいくつかやってみよう」
「かしこまりましたわ」
王族と宰相親子が去っていく。
それに伴い近衛兵の二人と一緒にメイドさんや執事さんが去っていき、ここに残ったのは私とキーリ、近衛部隊の残り、そして呆然としたまま還ってこないマリアネージュ。
お口を開き過ぎなんだよ?
「お嬢、そろそろ包帯を取ってもよいですかな? 正直怪我もしていないのに重傷者の役はあまり得意ではないのです」
「あ、そうだった。もう取っていいわよオスカー。お疲れ様」
「いやー、ほんと、隊長にあのおっさんから武器投げられた時はもうだめかもって思いましたよ、よく避けなかったっすね」
「俺も避けようとは思ったんだがな。直前になっていつもの歌が流れちまって、気付いた時には自分の命より国を取っちまった」
「もぅ。フェイル戦といい今回のことといい、オスカーは自分の身体をもっと大切にしなさい。でも、正直今回は貴方の機転で助かったわね。ライオネル王国を守る総司令官として、良くやったと告げておきます。でも個人としてはこれ以上死ぬような選択肢は選んでは駄目よ? 心配する人がいるんだから」
「分かっておりますとも」
でも、また同じような状況になったらやっちゃうんだろうなぁ。
私の兵士としての心得、ちょっと精神性を変え過ぎちゃってないか心配になってきたな。
ま、まぁ大丈夫よね?
「ろ、ロゼッタ……」
「ん? なーにマリアネージュ?」
「そ、その人脇腹、ち、致命傷な感じじゃ……」
「あ、魔法で治したから大丈夫よ」
「治した……ってぇ!? ちょっとロゼッタ、こっち来い!!」
「え? なになに?」
皆から離れた場所に呼ばれたので付いて行く。
凄く険しい顔で私の耳元で彼女は怒りにも似た小声で告げる。
「まさかとは思うけど、再生魔法とか、編み出したの!?」
「あー、それは、その……」
「ああ……編み出しちゃったのね。それ、絶対、ぜぇったいに他の国とかに漏らしちゃダメだからっ!!」
お、おおぅ、それは心得てるんだよ?
「分かってないかもしれないから言うけど、この世界、私が調べた限りじゃ回復魔法なんて殆ど傷がちょっと治る位よ。重傷や欠損は直らないの。そんな状況に再生魔法なんて見付かってみなさい、どうなるか分かるでしょ!?」
「さ、さすがに他人に教える気はないんだよ!? 不死の軍団とか作られたら最悪だし。世界滅びかねないし。私以外使えないから、今のところは問題ないんだよ?」
「それでも、人に見られるような使い方や、勘ぐりでバレるような使い方はするなって言ってんのよ!」
「りょ、了解」
め、目が座ってて恐いんだよ?
よっぽど心配してくれてるのか、まるで経験談みたいな顔するね?
「っていうか、あの兵士達、なんなのよ!?」
「何って、えーっと、訓練兵?」
「あんな超人部隊の訓練兵が居てたまるかっ! あんた一体何やらかしたのよ!?」
「ええ!? 別にやらかしたつもりはないんだよ? ほ、ほら、ライオネル王国って学園最後で侵略されちゃうじゃない、だからソレを防ぐために兵士を鍛えた、みたいな?」
「……レベルは?」
「え?」
「レベル、確かファーガレアの野望でも兵士の平均レベルみたいなのあったでしょ。幾つ?」
「平均は……200? 部隊長は300?」
「……や・り・す・ぎ、でしょうが!! ルギアスだってレベル200よ!? ファーガレアの野望でほぼ最強クラスの三番目位にレベル高いキャラ! 一番強いキャラのライオネルの聖女でも300じゃない!? なんでゲームの最高レベル級が一般兵のレベルになってんの!?」
「こ、これくらいないと、ほら、モンスターパレード勝てないでしょ?」
「そうだけど、そりゃそうだけども。普通モンスターパレードなんて国力半分減らすくらいの損害で退治するもんでしょ!?」
「だって、皆に死んでほしくなかったし。ほ、ほら、大は小を兼ねるっていうし、レベルは高くて困る事は無いんだよ?」
「兵士が裏切ったらどーすんの!? 王族なんて一瞬で死ぬわよ!?」
「あ、陛下も200レベルだから問題ないんだ、よぉぉ!?」
200レベのあたりで胸倉掴まれ前後に振られる。
なんか知んないけど涙ぐんでるし。
「問題あるわぁっ! テメェ王族のレベルまで上げてんのかぁ!?」
こ、言葉遣い、言葉遣いおかしくなってるんだよぉぉぉっ!?
がっくんがっくん揺さぶられる私。でもマリアネージュそんな私に気付いてないらしい。
「ライオネル王国でどれだけやらかしたぁっ!? 絶対他にもやってんでしょ! ゲーム開始前にどれだけ変化させちゃったのよぉぉぉっ!? こんなん絶対ゲームの強制力とか効かない奴じゃないっ!」
「げ、現実だから問題無いんだよ?」
「大っ問題じゃボケェェェェェ――――ッ!!」
折角頑張ったのに駄目だったらしい。なんでさ?




