533話、ロゼッタ、夜会二日目
結局二日目の話し合いは午前の部が環境問題。
午後の部が情報戦と新しい流通経路関連、また関税に関しての話だったので正直聞く必要もなかったんだけど、とりあえず主要国とライオネル王国の周辺国家だけの話は聞いておいた。
しかも会議が紛糾して押しに押し、午後七時くらいにようやく終了。その一時間後に夜会開始と相成った。
しっかし、スグニマケイルえげつない。ファーガレアの流通経路の関税無茶苦茶高くしてるし。
完全にあそこ潰す気満々じゃん。
しかもファーガレアは兵役解散させて武装勢力完全放棄してるせいで守れる武装勢力ないからいつでも蹂躙し放題。
さすがにスグニマケイルでもそんな場所に武力制圧仕掛ける訳にいかないらしく、下手に攻め入れば周辺国から突き上げ喰らうだろうってことで、今は流通経路を閉ざして国として成り立たなくさせてから接収することにしているようだ。
真綿で絞め殺すような酷いやり口だけど、確かに有効的ではあるんだよなぁ。主人公君が来なければ。
「って思うんだけど、どう思うファーガレアさん?」
「それ、私に直聞きすべき情報じゃなくない?」
夜会が始まり、今日も立食パーティーが行われていた。
陛下と宰相さんは本日も話し合いがメインだ。
適当な王族達の群れに紛れ込んで話を聞いたり、適当なところで切り上げて別のグループに顔を出したり、宰相さんが忙しそうだ。
私は下手な事言うな、と言われているのでキーリとサラディン、そしてマリアネージュとで適当な食事を摘みながら淑女として、はした無くない程度に食事を楽しんでいるところである。
王族だーれも手を付けないんだもん。そりゃ食事が可哀想だから私が食べちゃうんだよ。
ただ、見栄えばかりの料理はマズいし、七面鳥料理はパリパリになった皮だけしか食べないらしいので放置して、普通の、格段に美味しいわけじゃない、ふ・つ・う・の料理を適当に摘む。
ちなみに陛下たちは既に部屋の方にメイドさん達が料理を適当にチョイスして運んであるので後で毒見した後食べるそうだ。
でも、あんなふうに各グループに顔出ししなくても風魔法使えば全部の会話集約できるのにね、なんで皆しないんだろ?
「いや、普通そんなんでけへんよ主はん」
「そうだそうだ。ロゼッタ、あんたの魔法絶対おかしいわよ。なんで魔力消費ゼロでそんな大規模魔法使えてるの? しかも兵士達の魔法感知スキルに全く引っ掛かってないみたいだし」
「あら、マリアネージュは魔法の使い方知らないの? イメージ出来ればほぼほぼ何でもできるんだよ?」
「いや、普通出来ないからね」
「ほほぅ、変な魔力の流れがあると思えば、お前かロゼッタ」
うわ、メテオラ帝!? なんでここにっ!?
「そう嫌そうな顔をするな。私もほら、ルギアスが王役なので壁の華状態で暇なのだ」
「うわーぉ、メテオラ帝王じゃん。実際に見ると威圧感が凄いなぁ」
「なんだ無礼者……ん? ロゼッタよ、この娘は貴族か?」
「いえいえ、ファーガレア王代理の妹さんだから王女様なんだよ? 同じ円卓座ってたのに気付いてないのは失礼なんだよ。大国ならちゃんと覚えなきゃ」
「ふん、有象無象に興味などないのでな。そうかそうか、しかしファーガレアの王女と随分親しげだな。すり寄ってきたようにも見えんし、対等の関係? ふむ……」
あー、このままだとマリアネージュが要らない策謀に巻き込まれそうだなぁ。仕方ない。
「それで、メテオラ帝は何しに来たのかしら?」
「ん? だから言っただろう? 暇だから知り合いと話でもしようかと思ってな」
「あら、別に私達のような壁の華に話しかけずともルギアス様と各所を回って行くのはなさらないのですか? 情報収集は必要でしょう?」
「私こういう策謀渦巻く集まりは苦手なのだ」
全然苦手そうな顔じゃない。
むしろ凄く楽しそうだぞこの女。
絶対各国の会話を纏めて深読みして属国増やす気満々だ。
「しかし、ライオネルの宰相は随分とやり手だな?」
「うふふん、宰相閣下はある意味人間逸脱してますもの。毎日のように10徹万歳とかやってる人は普通の人間じゃないんだよ?」
「いや、10徹って普通に無理でしょ」
「ん? 何を言っている、国政を行うならそのくらいは普通だろう?」
「ファーガレアの宰相さんはしないの? 10徹」
「え? 何その10徹してない方がおかしいみたいな態度? え? ほんとに?」
「陛下のムチャ振りが酷いせいで10徹ザラらしいんだよ。可哀想に」
「私の場合は国の立て直しにやっきになってた時期だな。2徹くらいまでは凄く眠いのだが、そこを越えたらむしろ寝る方が難しくなってくるぞ」
「初めの頃は3徹辺りから幻覚見えだすんだよ。スイッチ切れたように寝るのは健康に悪いよ?」
「今はやっとらんから問題は無い」
ちょっと、なんで引いた顔してるのマリアネージュ。ブラック企業のOLなら普通の仕事量なんだよ?
たまに新人さんから小柴さんっていつ寝てるんですか? とか聞かれるけど寝ないから答えに困るんだよ。
「いや、聞きたいと思ったのはトイレ事情でな。今朝の会議で我が国もインフラ設備を整えようという話になったのだが、さすがにマギアクロフトやサイエンスフィアに借りを作るのも考えものだと思ってな」
それで私に聞いておこうと?
宰相閣下からタダで教えんな。といわれてるから具体的なことは伝えられないんだよ?
「インフラも何も下水処ぷぐ……」
あっぶない。まさかマリアネージュの方から情報が漏れるとは思わなかった。
さすが転生者。打てば響くようにタダで教えようとするし。
「むう、もうちょっとだったのに」
「どうせ聞くならウチの宰相閣下に聞いてほしいんだよ。国家的機密事項に関わりますし」
「むぅ、やはりそうなるか。仕方ないな。ルギアスに……いや、折角だからこれから宰相殿にアポってみるか」
と、さっさと立ち去って行くメテオラ帝。
嵐のような人である。




