491話・ロゼッタ、忘れてはいないんだよ?
兵士達の訓練も佳境に入ってきた二月。
告白の日でリオネル様に大好きですっと告白してから数日。
私はここにやってきた。
「あー、なんっつーか、忙しくはあるんだがな……」
「毎日毎日何かしら? 私に突っかからないと落ち着かない病気なのかしら?」
「いや、なんつーか、お前さん、お嬢さんに忘れられてんじゃねーか?」
「うぐ……た、確かにここ最近いらっしゃってませんわね。だからといって手は抜かないわよ?」
「当然だ。というか、最近以前にあのお嬢さん、一回来たっきりだろ」
別に忘れてたわけじゃないんだよ。いろいろやる事やってたらこの時期になっただけなんだよ。
「ロゼッタ様のことですもの、実は隠蔽魔法ですぐそこに居て見定めてたとしてもおかしくは……ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」
指差されたから隠蔽魔法切ったら驚かれたんだよ、おかしいな?
「あれ? バレたんじゃなかったの?」
「ほ、ほほほ、ホントに居たァ!? し、しんぞ、心臓が、心臓がっ!?」
「さ、さすがに驚いたぞ、何度も来てたのか!?」
「え? あー、いえいえ、来たのは今日が久しぶりね。いろいろと忙しくてなかなか来れなかったのよね。でも問題はなさそうで安心したわ」
まだ心臓押さえて崩れ落ちてるポアラ。
そして一瞬の驚きで目を見開いたものの、既に書類仕事を再開し始めたリンドブルム。
うん、さすがリンドブルム。クールなんだよ。驚かしがいがないなぁ。
「ろ、ロゼッタ様、唐突な訪問なのでお茶を出すこともできませんが、何か報告などありまして?」
「報告……あ、影のおっちゃんに彼女ができたんだよ」
「どーっでもいいですわ!」
「リキアさんに彼氏が出来そうなんだよ」
「それもどうでもいいですわ」
「えーっと、後何かあったかな?」
「要するに、ただ見に来ただけ、か」
リンドブルムにべもなし。
そうだよ、ただ見に来ただけなんだよ!
でも別に暇だからじゃないんだよ。時間を空けてわざわざ来たんだよ。
「で、ポアラとリンドブルムさんや、何か報告すべき事とかありますか?」
「そう、ですわね、今のところ上手く回っているわ。雪が降った時がいろいろと大変だったけど。徴税が何故か今年から下がったのよ、御蔭で余裕を持って新年を迎えられたわ」
あ、それは多分宰相さんが倒れた時に一斉粛清が行われたからなんだよ。
あの時の不正で三倍位の徴税してたから普通に戻したって宰相さんが言ってたんだよね。だから今は税が三分の一になったように感じてるんだろう。実際は今が本来の徴税率なんだよ。徴税官が不正してたからついでに捕まえて牢屋行きになってるんだよ。
「あ、そうそう、今年から徴税官が犬の亜人になったのよね、私は一度会っただけだけど、そこの男が話をしているわ。なんでも徴税官が税をちょろまかしてたから捕まったらしいわよ」
「アンタがやったらしいじゃないか。お嬢って言葉ですぐ分かったぜ」
「あはは……ちょっと代理で宰相することになった時に不正してた人全員逮捕だスペシャルしちゃったんだよ。綺麗になった?」
「やり過ぎだろう。人が足らなくて臨時で亜人が徴税とか……いや、まぁ徴税に関してはしっかりと勉強してたらしいからむしろ人間相手より良い税率になったがな」
「えーっと、実は今の税が本来予定されていた徴税らしいんだよ?」
「……なに?」
あ、リンドブルムが目を見開いた。
二度目だよ。びっくりしたんだね?
表情が戻ると、口元に手を当て考え出す。
「まさかと思うが、俺がここに就職するより前から増税済みだった……?」
「まぁ不正は長年続いてたらしいからいつからかは知らないんだよ? 古いな?」
「クソ、ずっとあの税率だと勘違いさせられてたのか! あの徴税官、次来たら殺してやるッ」
既に処刑されてるか鉱山労働してるからもう会うことは無いと思うんだよ。
宰相業務してる時に知ったんだけど、犯罪者の一部が鉱山で無期限労働してるらしい。
そこには小型の馬がいるらしいんだよね。何時か行ってみたいなぁ。
乗れるかな?
「他は何かあったかしら? ねぇ、貴方はあって?」
「あ? あー、そうだな、とりあえず畑は大根やニンジンが埋まってるから問題はなさそうだし、盗賊は既に壊滅、税率も安く、というか元に戻った。襲ってくる魔物も今年は少ない……問題は、ないな」
それはよかった。
ポアラも頑張ってるようだし、今日はこの位で、また来るんだよ。
「出来れば正面玄関から来てくださいまし。せめておもてなしさせてください」
「隠蔽して部屋に潜むのは無しにしてくれ。さすがに肝が冷える」
「考えておくわ」
でも次来た時も多分やっちゃうんだよ。
さぁて、次は砦回りと行きますか。
北の方は前回向ったから一番最後でいいかな。
とりあえず他の砦を隠蔽状態で見に行ってみるかな?