48話・ロゼッタ、叱られる
「……っは!?」
気が付いた瞬間上半身起こして飛び起きる。
バッと右を見て、左を見て、自分の見知った場所だということに安堵する。
ここ、私の部屋のベッドだわ。
って、なんで私ベッドの上に寝てるの!?
しかも窓から見える外の景色が真っ暗だよ?
時刻は何時? とりあえずカランカランとベルを鳴らす。
すると、眼を擦りながらリオネッタが飛び込んできた。
「ああ、お嬢様、お気づきになられましたか!」
「ええ。えーっと、どうして私は寝ていたのかしら?」
「それは……まだご主人様方も半信半疑なのですが、お嬢様の魔法に因る魔物消失で急激なレベルアップとやらが起こったため、成長痛に耐えきれず気絶してしまったのだとか」
おおぅ、なるほど、あの山に放った魔法で魔物がめっちゃくちゃ死んじゃったってことか。
あ、もしかしてだけど誤って民間人もぶっ殺しちゃってないわよね?
嫌よ? 知らない間に殺人者なんて。
「あ、そうです、ボーエン先生から、殺人などの危険な二つ名は付いてなかったから問題は無いそうですが……意味分かります?」
「え? あー、うん。了解。今日はこのまま寝るわ」
「かしこまりました」
はー、まいった。
まさかあそこまで威力が高くなるとは。
どれだけレベルアップしたのかわかんないけど、自分じゃ確認出来ないしなぁ。
あれ? でもボーエン先生確認したのよね? 確認方法、あるのかな?
確か生活魔法系もあるって言ってたし、風呂に入らなくても綺麗にする魔法とか、便利だから教えて貰わなきゃ。
あー、なんか眠くなってきたな。
他にもいろいろ考察したかったけど、今日は眠いから明日にしよう。
ちょっとレベルアップし過ぎたんだよ。
お休みぃ。
と、言う訳で、おはよう、皆の笑顔が私の力、悪役令嬢、ロゼッター! 見参っ!!?
朝食にて両親と会うと、泣き付かれるように抱きしめられた。
なんなら、お父様がボーエンに何かされたのなら言いなさい、確実に闇に葬るからなっとか言われてさすがにちょっと引いた。
ボーエン先生は、お父様次第で死にかねないのか。気を付けよう。私が変なことして迷惑掛けただけで処刑エンドとかボーエン先生もやってらんないしね。
とりあえず、もうしばらくしてからプレゼントする予定だった即死を防ぐアクセサリーをお父様とお母様に贈ることで二人の心配性たちを鎮める。
買っといてよかったよ。
まさかこんなに早く渡すことになるとは思わなかった。
誕生日か何かに記念として贈ろうと思ってたんだけどなぁ。
ま、いっか。
午前はリオネッタが眼を光らせて来るので、昨日を踏まえて軽く流す程度の運動に留める。
下手なことしたらリオネッタの禁止ですーっ。が飛んでくるからねー、仕方ないんだよ。
んで、午後になると、家庭教師の登場である。
ボーエン先生が堅い表情で部屋に入って来る。
さすがに目の前でご令嬢が気絶した訳だし、襲ったと誤解されたり……
あれ? あの? ボーエン先生? なんでリオネッタを追いだしたの?
なぜかつかつかと歩み寄ってきたボーエン先生。
私の肩を掴んでぐっと顔を寄せて来る。
その顔は、女性を引き寄せるにしてはあまりにも硬く厳しい表情だった。
「お嬢!」
「ひ、ひゃい!?」
「ありゃどういうこった! あそこまでやれとは言ってねぇぞ!」
「そ、そう言われましても……」
「見ろよ! あそこにあった山、きれいさっぱり消えちまってるだろうが! なんで魔法一つ放っただけで山が消し飛ぶんだよッ! 一人で世界滅ぼす気か!?」
えぇー、理不尽!?
私はただ全力が見たいっていうから飛ばしただけだし?
よくよく指差された方向見てみれば、確かにあった筈の山が一つなくなってる気がする。
いや、でもあそこに山なんてあったかしらぁー。
「あまりにも想定外過ぎてお前が倒れるまで何も出来なかったんだからなッ!」
襟首掴まれてがくがく振られる8歳児。
いやー、私としてもまさかあそこまで破壊力あるとは思ってもみなかったというか、ほら、私が出来る最大級の魔法プリーズっていったじゃん?
「言った! 言ったがあそこまでとは言ってない! お嬢、やり過ぎなんだよっ!」
半泣きだ。魔族の王子様が半泣きだ。
「あの後お嬢のメイド呼んで事情説明したら親父さんが突撃して来て殴られたんだぞ! 貴族の、しかも侯爵のおっさんが何の理由も聞かずに頬に拳で一撃だぞ!」
うわー、お父様何やってんの!?
「必死に理由を説明してなだめるだけで一時間、お前のアホ面で寝てる姿見せてようやく納得したんだからな! 仕方なく、本当に仕方なく魔法を放ったら魔物を殺してしまったらしくレベルアップしたと言わざるをえなかったんだ! ああ、こんなことなら契約なんてするんじゃなかった! 契約さえしてなければあそこまで話し方に気を使う必要無く御宅の遠慮ってもんを忘れた娘が魔法使って山一つ消し飛ばしたって告げれたのにっ」
いや、さすがにそれは止めてください。