482話・カール、守る者がいる闘い・1
SIDE:カール
最悪だ。
アルベール隊長に褒められたから思わず酒解禁したら飲み過ぎたらしい。
一応おぼろげに誰かに突っかかったのは覚えてるんだが、記憶が定かではない。
むしろ気付いたら他の二人と共に牢屋に入れられていた。
その当時は何が起こったか全く理解できずその場に居た兵士達に何かの間違いだと思わず叫んで暴れてしまった。
徐々に記憶を取り戻すごとに自分がやらかした事に気付いたが、正直なんであんなことしちまったのか、これでは兵士じゃなくそこいらの迷惑客じゃないか。
しかも俺達のせいで他の兵士達まで纏めて粛清対象にされたみたいだし……
これじゃもう出世の道など閉ざされたようなもんだ。
問題起こした兵士なんぞどこも雇ってくれないだろうし、どうすりゃいいんだ?
このまま兵士を続けるのも難しいだろうし、俺、人生終わったんじゃ……
「お嬢、ここは?」
「森の中なんだよ? とりあえず周囲をキーリが触手で囲っておいたから、この森の中に居るコボルトを全て倒してくれる?」
「え? コボルト、ですか? 亜人認定されてませんでしたっけ?」
「ええ、意思疎通可能なコボルトは犬人族として亜人に認定されてるわ。この近辺に生息するのは意思疎通出来ないコボルトでね、最近勢力を拡大させて亜人のコボルトたちの縄張りに侵略し始めたらしいのよ。政務を手伝ってもらう代わりに何とかしてくれって頼まれててね。丁度良いから貴方達で殲滅お願い。隊長格もいるし問題はないでしょう?」
ゴルディアス隊長が頬を掻く。
「あー、つまりお嬢、粛清は粛清でも俺らがやる方なのか」
「さぁてどうでしょう。まぁ、この辺に一般人はいないはずだから存分に倒して良いんだよ。終わったらキーリに触手消すように頼んでいるから国に戻ってきてね。それじゃ」
いや、それじゃって、あ、本当に置き去りにされるんすね?
まだ雪の残る森に俺達だけが取り残される。
キーリ嬢が円形に囲っているフィールドらしいけど、ここからだとその触手の壁とやらは見受けられない。
結構広い範囲だろうか?
「しゃーねぇ、とりあえず全員集まれ。作戦会議だ」
この場に居るリーダー格はゴルディアス隊長だけだ。
今でこそちょっとは考えて作戦ひねりだしたりしてるものの、元々の性格が考えるより突撃して踏み散らせ。なので面倒臭がると突撃し始めるのは未だに変わってない。
確かに、お嬢からすればゴルディアス隊長の気性は問題なのだろう。
「あーっと、とりあえず点呼取るぞ。ポーラック、カール、ハーディ、ギルドレイ、ツツリオ、オステール、ヒオロ、ヘイデン、カラード、セルドバレー、ラファーリア……と剣聖殿?」
「うむ」
け、剣聖殿参加しとる!?
「何で居るんですか」
「いや、ラファーリアがここに来させられるのはおかしいと意見したら連れて来られた。どこだねここは?」
俺らも知りませんぜそんなもん。国近くの森だってことくらいしかわからないし。
「ラファーリア。お前お嬢と仲がいいだろ。何か聞いてないか?」
「多分咄嗟の思い付きでしょ。キーリさんも寝耳に水とか言ってましたし、でも、ロゼッタ総指令官の目的は私達が他の兵士達と違って民や国の為に闘ってない、あるいは部隊に迷惑を掛けるなど何かしらの問題があったから、その意識改革が目的のはずです」
「だろうな。あんま認めたくねぇが、確かに俺は基本突っ込みゃ解決すると思ってる。当然そのせいでチーム訓練始めたころは全戦敗北だった。今もたまに破れかぶれで突っ込むこともあるが十中八九そのチームが負けちまう。直したいとは思ってんだけど、考えるのが面倒でよ」
隊長としてどうなんだそれ。アルベール隊長見習ってほしいぜゴルディアス隊長は。
「お前らはどうだ? 自分の欠点が言える奴はいるか? ソレを直すのが今回の目的になるはずだ」
「ふん、ラファーリアに欠点などあるわけが「では、次は私が」ラファーリア!?」
「私の欠点はおそらくドレスが汚れることに意識を割き過ぎていることですね。何度も注意されているのですが、泥が付きそうになるとついついそちらに意識が行ってしまいます」
「それでも俺らと十分渡りあえてるだろ?」
「はい、ただ、私は既にパワーレベリングというのを終えてますので、皆さんが終えた後は私は負け続けになるでしょう。それくらいの致命的欠点です」
「いや、もう、それ欠点ではなかろう。汚れを意識しなければ普通に闘えるのだし?」
「お父様、確かにそうかも知れませんけどドレスを汚さずに剣舞で闘うことが私の目標なんですよ、その為にはまだまだ欠点だらけです。お父様に闘いを挑むのもまだ先の話になりそうですね」
「そ、そうか……楽しみにしておこう」
なんか凄い顔引きつってないですかね?