47話・ロゼッタ、全力見せたら引かれたんだよ
「ちょ、ちょっと待ってくれ。そ、想定外過ぎて……整理が追い付かない」
全てを聞き終えたボーエン先生はあまりにも衝撃過ぎた事実に思わず頭を抱える。
教師が魔族でしたっていう事実も衝撃的なんだけどなぁ。
「お嬢の前世でこの世界がゲームとして存在していた? 俺が攻略対象の一人? 平民で光魔法の巫女候補ヒロイン? 魔法は知識があれば創造できる?」
ちょっと情報出し過ぎたなぁ。
ふーっと息を吐き空を見上げたボーエン先生はふむ、と頷く。
「とりあえず、その創造というモノを見せてくれないか?」
「え? 創造魔法、ですか?」
「ああ、そうだな。簡単にファイアーボールを独自の知識とやらを加えて新しい魔法に変えれるか?」
息を整え、情報を脳内の奥に押し込めたらしいボーエン先生。
少し期待に満ちた顔で私を見てくる。
新しい魔法、そんな見たいんですか?
「本来君との授業については数日後から魔法開発だったが、既にそこまでの知識があるのなら基礎を終えれば魔法創造と基本詠唱を同時にして行けば良さそうだしな。何より、その知識から生み出される新魔法とやらを見てみたい」
まー、そこまで言うのなら。
「ではでは、七色のファイヤーボールとかどうでしょう?」
「七色? それはまたすごそうだな。いいだろう。見せてくれ」
えーっと火に銅を混ぜれば緑色、他に鉱物で出来るのは、紫とオレンジ、と確か白もできたっけ? 黄色と赤とー、あと完全燃焼させれば青も作れる。うん、これで七つだ。
イメージ完了。ファイヤーボール!
まずは掌に普通のファイヤーボール。
これを空中に浮かせて、次のファイヤーボールを掌に作りだす。
魔力残量を確認しながら一つ、また一つと作っていく。
自分の周囲に漂う火の玉が七つ。
ほれ、どうだボーエン先生!
「これは驚いた。本当に七つの色を作れるのか」
「化学反応を使えば簡単ですよ。リチウムで赤い炎、ナトリウムで黄色、カリウムで紫色、銅で青緑、白いのは過塩素酸カリウムや過塩素酸アンモニウムとアルミニウムやマグネシウムを混ぜると出来るんですよ。青色は今回完全燃焼で作りました。他にも様々な金属を燃やせば色が変わりますわ」
私の説明に、心ここにあらず、と炎を睨みつけるように見つめるボーエン先生。
顎に手を当てなにやら考えているようだけど……
「……さすがに信じない訳にはいかねぇなこりゃぁ」
難しい顔で結論付けると、意識を切り替えるように私を見た。
「お嬢。今の実力で使える最大攻撃魔法、創造できるか?」
「え? 攻撃魔法、ですか?」
「ああ、あっちに見える山があるだろ。あの方面は魔物が凶悪だからって理由で人は滅多に入らないんだ。あっち側向けて、強そうな魔法放ってみてくれ」
創造魔法がどれ程の威力か見たいそうだ。
えーっとそうだなぁ。私が妄想で最強と思える魔法。
遠距離に高速で飛ばすって言ったらジャイロボールよね?
回転が命なんだよ。
ついで最強? 全属性付与とか? さっきのファイヤーボールの応用で全属性作っちゃう?
えーっとファイヤーボールにウォーターボール、マッドボール、ウインドボール。ライトボールにダークボール? 闇の弾ってどんなだよ?
ボーエン先生に尋ねてみれば、ダークボールを唱えて作りだしてくれた。
成る程、こんな奴なのか。じゃーダークボールっと。
あとサンダーボールとアイシクルボールとー、あとなにがいいかな?
属性属性……んー。融解属性、とか? 毒属性? あとー、核熱系はヤバそうだから止めとこう。
ブラックホールとか、入れちゃう?
こんなとこかなぁ? あ、爆発属性も入れちゃおう。
よーし、全属性を周囲に漂わせてぇ……残り魔力を推進剤に遠くに見えるあの山向かってぇ……
「発射(ファイア!)」
私の周囲に……って、あの、ボーエン先生? なんかダークボール生み出してからどんどん顔色悪くなってない?
まぁ、いいか、止められてないし、イケるっしょ。
と、いうことで周囲に漂わせた無数の属性に指向性を与えて遠くの山目掛けて螺旋を描くように吹っ飛ばす。
全ての属性魔法弾が螺旋を描き、まるで台風のようにジェットなストリームでぐんぐん飛んで行く。
そして狭まる弾同士。やがて回転により一つに合わさり、超高速で山の方へと消えていった。
「な、なんだ、今のは?」
「え? えーっと名前はないですけど、言うなればレインボーシューターとかプラズミックジャイロボールとか……? さすがにちょっとダサいかなぁ?」
「いえ、技名ではな……」
刹那、音が消えた。
二人して何かの異変を察知し、山の方へと視線を向ける。
ドーム状の衝撃波が山を覆っていた。
次いで衝撃波が国へと襲いかかる。
ぶわっと熱い風が吹き抜け周囲の木々をばさばさと揺らす。
光とも爆炎とも付かない何かが山の中央から立ち昇りドクロ柄の爆煙を噴き上げる。
そして鼓膜を揺らす程の盛大な音。
地面が揺れ、雲が吹き飛び、世界が悲鳴を上げた。
そしてその全てを吸い込むように黒点へと収束していく……
全てが終わった時には、山が跡形も無く消し飛んでいた。
―― レベルアップ 2 → 3 →4 …… ――
唐突に全身が痛みを発する。ゴキゴキと体内で聞きたくない音が鳴り響く。痛みが激痛に代わり悲鳴を上げる。
何が何だか分からなくて、私は意識を……失った――




