467話・ロゼッタ、想定外の危機
結局新年祭にイベント行うのは却下になった。
なんかギルド長に企画伝えたら商業ギルドのギルド長まで幼児化しちゃったのだ。
幼児化、流行ってるんだろうか?
しかも一カ月ギルド立ち入り禁止令まで出されちゃったし。
私が何か用事があったとしてもクラムサージュ通して伝えなきゃいけなくなったんだよ。面倒だな?
仕方ないから魔術ギルドで新魔法を登録しにいったらこっちのギルド長も幼児化しちゃったし。
お婆さんは物凄く楽しそうにしてくれるんだけどなぁ、なんでギルド長って幼児化するのか謎なんだよ。よっぽど役職が疲れるのかな?
「では、本日はちょっと趣向を凝らすんだよ」
ようやく兵士達全員が戻って来たので早速次の訓練を告げる。
今度はレイド戦だけど闘う相手は私やキーリ、ましてフェイルたちでもない。
「皆の対戦相手はゴルディアス、ケリー、オスカー、サロック、ゼオール、ラファーリア」
本来オスカーを入れないつもりだったんだけど、さすが近衛兵隊長だ。なんと自力で大局観に辿りついてたんだよ。
そう、今回皆がレイド戦で闘う相手は、大局観を覚えたメンバーなのである。
大局観を覚えることがいかに大事か、皆に知って貰うんだよ。
「お、お嬢、さすがにこの六人は強く成ってますが。俺ら全員となんてのは……」
「ミリスタシオン、落ち付け。この六人を選んだってことはそれなりに理由があるんだろ。とりあえずやってみようぜ。意見はそれからだ」
アルベールの方がミリスタシオンよりは理解できてるっぽいな。
さぁって、三月までに全員同レベル帯にできるかな?
と、戦闘が始まった。
初めこそ、数の多い兵士達が押していたんだけど、なぜか徐々に切り崩され始める。
特にゴルディアスの怪力に吹っ飛ばされる兵士が多いのと、協力し始めたサロックとゼオールに倒されていく兵士が多い。
あの二人、ホント仲良くなったなぁ。
ラファーリアはドレスこそ汚れているがちゃんと他のメンバーに付いていけている。
まぁ一人だけレベルが突出しているので一番動きやすいんだろうけど、やっぱりまだドレスの汚れ気にしてるせいでちょっとぎこちない。そこを隙として突かれて苦戦中だ。
ケリーは危なげなく闘えている。
オールマイティーキャラだけに突出出来ないのがなぁ。どうしても他の兵士達と比べると動きが地味に見えてしまう。堅実と言えば堅実だし、一番持ち場を崩してないのがケリーなんだけど。
あと妹さん煩い。応援するのはいいけど声張り上げ過ぎ、あと、「そこだー、殺せー」は掛け声にしちゃダメなんだよ、もう一度御令嬢としてやり直して来なさい。
オスカー、強いなぁ。
強者を見付けて的確に一対一を形成してから倒してる。
多分一番オスカーが厄介だろうなぁ。
彼のせいで司令塔がどんどん潰されていくから兵士達が戸惑いを浮かべてしまう。
皆、それがダメだとはわかっているので、率先して皆に指示出ししようとするけど、指示出しを始めるとそいつがオスカーに狙われて潰されてしまうので、どんどん指揮官が変わっていく。
そして指揮官が変わるせいで命令がとっちらかって動きが鈍る。うん。相手にとっては悪循環だ。
「くそ、俺らと同じ時期に訓練始めてんだぞ!?」
「なんでこんなに差が……」
「人数差が、差になってねぇ!?」
「指示出しが多過ぎてどれに従えばいいんだよ!? 俺が指示だしていいのか!?」
もはや烏合の衆だ。
こうなると幾ら強い兵士達になっていたとしても各個撃破されていくだけである。
結果を言えば、なんとか兵士達の辛勝ではあった。ゴルディアスを撃破出来たのが大きいだろう。あと、ドーラスの指示でオスカーを撃破出来た御蔭で徐々に盛り返し、兵士側が勝ったのだ。
「な、何とか勝てた?」
「で、でもよ、なんで相手六人しかいねぇのに、ここまで凄惨な闘いになってんだよ?」
皆、思うことは一緒だろう。
だから、私は一歩踏み出し皆の視線を集めてから告げる。
「今回闘って貰ったメンバーは既に大局観を真の意味で習得したモノだ。他の者たちは大局を見ようとはしているが身についてはいない。これは私の不徳とするところだろう。今まで私自身で皆に伝えてはいなかった。ゆえに、本日より目標として、全員に大局観を覚えてもら……」
「お嬢、ちょっといいか?」
いや、今丁度良い所だったんだよ? 皆に宣言中なんだよ?
「おっと影のおっちゃん? なんかあった?」
「今さっき陛下側の影から連絡されたんだが、宰相が倒れたらしい」
なんと?
「おそらくだがもうすぐ話が来るからしばらく総指令官業務を休んでもらうかもってさ」
どういうこと? あ、近衛兵の一人がやってきた。あれは今日陛下の警護に入ってる二人の内の一人だね。名前は確か……
「ラインバッハ?」
「陛下からちょ、勅令です。おじょ、いえ、ロゼッタ・ベルングシュタットに勅令を申し上げる。本日より宰相閣下の療養が済む数日の間、宰相の任を与える、と」
私が、宰相? 正気か陛下?