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46話・ロゼッタ、二人だけの秘密

「あー、まぁ、こういう訳で、俺は平民じゃなく魔族だ。人間世界だとこの姿はさすがに取れなくてな。下手にバレりゃ兵士共に追われちまう」


「な、なんでそんな正体バラしちゃったんですか!?」


「そんなもん、あんたの秘密と取引って奴だ。これでもあんたを信頼したから正体現したんだぜ……ってか、お嬢、あんた俺の姿見ても驚いてねぇな」


 肩すかし喰らった様子のボーエン先生。私だって驚いてるけど驚いてる理由は悪役令嬢に魔族だってばらしたことであって魔族だったという理由じゃないと気付いたようだ。


「あー、その、えー。とりあえず魔族の王子さんだってのは分かりました。私としては魔法を教えてくれさえすれば問題はないので」


「……なぁ、俺、魔族だとは名乗ったが王子なんて言ってないんだが?」


 あ。やっべ……

 疑惑の視線を向けて来るボーエン先生。

 「ちょっと御花摘みに行ってまいりますわ~」と踵を返して逃げようとした私の肩を掴み再び自分の方へと私を向けた。


「こちらも正直に話したんだ。あんたも秘密を話して貰おう」


「えぇー、自分が勝手に秘密ばらしたくせにぃ」


 じぃーっとジト目で私を睨むボーエン先生。

 あー、これはちょっと、マズいかも?

 どうしようかなぁ。んー。まぁ確かに魔法創造を見せるのは既定路線だからいいんだけども……

 相手から魔族だとバラしてくれたし、私としては秘密共有みたいで嬉しいのよ?

 でも、でもねぇ……んー。


「わ、分かりました。ただ、その前に一つ、伝えておかなければならないことがあります」


「ほぅ、何かね?」


「君は、深淵を覗く覚悟があるのかい?」


 努めて冷笑を浮かべ。見下すように、試すように、デビルスマイルを心がける。


「っ!?」


 って、ちょっと、魔族の王子様!? なんで一歩退いた!?

 ヤバい、これ、もしかして魔族相手なのに引かれちゃう!?

 ただのか弱い侯爵令嬢が引かれちゃうの!?


「お、驚いた。俺を試すのか?」


 だ、だから、なんで身体が震えてるの!?

 おかしいよね? 女の子の笑顔だよ? なんでそんな、「か、身体が震えている、俺は、怯えているのかっ!?」みたいな顔しちゃうの!?


「つまり、それだけの秘密ということか……いいだろう。我は我が神に誓おう。これより暴露されし彼女の秘密を絶対に口外はせぬと。魔神王の御名において魔神契約を行う」


 そして私がよくわからない前口上を告げると、私とボーエン先生の間に謎の魔法陣が浮かび上がる。なんか、契約しちゃってるけどこれ、口外したらどんなことになるの? 多分ペナルティかなりヤバいよね? 魔神とか言っちゃってるし?


「覚悟は出来た。この魔法陣はお嬢の秘密を絶対に口外しないという人間と魔族の契約である」


「そ、そこまでして知りたいの?」


「俺としても不思議だが、お嬢の話は聞いておかなければならない気がする。まるで本能が叫んでいるような感覚でな」


 意味が分かりませんっ!?

 でも、これってもしかしてゲーム世界とかでよくあるゲームシナリオから逸脱しないように自己修復するシステム的なモノがボーエン先生に干渉してたりするんだろうか?

 教えちゃって、大丈夫なの? ボーエン先生神様辺りに抹消されたりしちゃわない?


「分かりました。その契約とやらがどれ程のものかはわかりませんが。私も墓まで持って行くつもりだった秘密を暴露致しますわ」


「ああ、頼む」


 正直、殆ど出会って間もないというのに、なんでこんなことになったのか?

 ボーエン先生の好感度を上げたつもりは全く無いんだけどなぁ。

 というか私ヒロインちゃんじゃなくて悪役令嬢なんだけど?

 はっ! まさか、裏ステージでボーエン先生を選ぶとロゼッタが暗躍してるルートがあったとか!? それはヤバいよ? ヒロインちゃんがボーエン先生攻略を始めたら私の断罪エンドが始まっちゃう!?


「数週間前です。私は頭を打ちました」


「……ん?」


「丁度そこの石に頭をぶつけちゃいましてですね」


「あ。ああ? ん?」


「そのせいで生死の境を彷徨ったようで。蘇ったんです」


「いや、俺が聞きたい秘密はお嬢の失敗談じゃなくてな?」


「蘇ったんですよ。前世の記憶が」


「だから前世の記憶じゃなく……は? 前世の記憶?」


 なぜか間抜けな顔をするボーエン先生。

 ちょっと、自分から秘密を話せと言っといてなんでそんなアホ面晒してんですか。

 あとそろそろ魔族としての身体幻惑で隠してください。メイドや執事が何時来るとも分からないんですから。


 ボーエン先生が人化するのを待って、私は私の秘密を初めて人に話した。

 小柴寛子として過ごした人生。その生涯の終わり、そしてライオネル王国の姫巫女の話。

 ボーエン先生自身がそこの攻略対象の一人だと告げてみると、なんか複雑な顔していらっしゃった。

 んで、その関係で魔法について科学の知識を使えば今まで編みだせなかった魔法も好きなだけ生み出せるんじゃいかなって思ってることを告げてみる。


 これで、ボーエン先生の魔族だって秘密と私の前世持ちだっていう秘密が共有された訳だ。

 二人だけの秘密、かぁ、ど、どうしよう、これ、恋愛フラグだったりするのかな?

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