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460話・ミリア、運命の日

SIDE:ミリア


 ふっふっふ。ついに来たわ、この日が!!

 クラムサージュはきっと理解してないでしょうね。

 この私が歌ウマ歌謡祭の常連だなんて、歌は上手いのよ歌は。

 今日のためにこの世界の歌をいろいろと調べて万人受けする歌を覚えて来たわ。

 歌詞と私の歌唱力が合わされば、優勝待った無し! ふふ、あはは、あーっはっはっはっは。クラムサージュ破れたりッ!


 これでプライダル商店幹部候補になってお金がっぽがっぽだわ。そうすれば冒険者なんて土臭いことしなくともいいし、王子たち攻略対象といろんな高級店で食い倒れしてもお金の心配しなくてよくなるのよ。おーっほっほっほ。我が計画に死角無しぃっ!

 さぁ、栄光の架け橋となる音楽会場に、向……あうちぃっ!?


「痛ってぇなクソガキ」


 ぎ、ぎゃぁ――――!?

 なんが頭の真ん中以外スキンなヘッドになってる頭頂部四角に刈ってるガチムチのおっさん出たぁーっ!?


「あぁん? どうした相棒? おりょ、こりゃ可愛らしい嬢ちゃんだなぁ。アァ? ウチの相棒になんかようかァ」


 お約束的ヤッバい人にぶつかった!?

 ってかこんな場面でのイベントなんか知らないわよ!?

 に、逃げ切れるわよね。捕まって酷い事になったりしないわよね?


「ムカつくぜぇ、俺ぁションベン臭ェガキが一番でぇきれぇなんだよっ」


「わぴーっ」


「お、逃げた」


「待てやクソガキぃっ!!」


 な、ななななんなの!? なんなのなんなのなんなのーっ!?

 なんで私追われてんのーっ!?


「あはは、なんか楽しいなぁ、クソガキ追いかけるの、相棒、あんましイジメてやんなよー」


「うるせぇ、ぶっ殺すっ!!」


 ヤバいヤバいヤバい、なんか精神構造危ないのにぶつかった!?

 必死に走る。多分スプリンター走りになってるだろうけど周り気にしてる場合じゃない。


「ってか、足速ぇなあのガキ」


「うぜぇぇぇぇぇッ」


 なんで追い掛けて来られるのよぉっ!?

 人々の合間を駆け抜け、時に潜り抜ける障害物競争。

 背後を見れば、ガチムチ男が通行人を弾き飛ばして道なき道を作りだし、相方の細長い男がその後ろを駆け抜けて来ている。


 ちょっと兵士、あんたたちああいうヤバいの捕縛するための人でしょうよ!?

 なんでこの周辺にいないのよっ!

 誰かっ。誰か助け……あ、しまっ……


「へぶっ」

「おわっ!?」


 焼きそばとりんご飴を持っていた冒険者に激突。

 胸のプレートに顔面ぶつけてめちゃくちゃ痛い。鼻折れたかも!?

 ったく、何処見て歩いて……


 トゥンク


 顔を見上げて文句の一つでも言ってやろうとした。

 そこにあったのは、金髪の少年の顔。

 中性的というか、ともすれば女性かと思えるほどに綺麗な浅黒い肌。いえ、これ、化粧?


 長い髪をポニーテールに縛って軽鎧を着た華奢な少年。

 眼つきこそちょっと悪いけど、これはこれで、良い。

 私のハーレム候補の攻略対象じゃないけど、この顔立ちは、アリじゃないかしら?


「げっミリ……お嬢さん、前を見て走らないと危ないよ?」


「あ、その、ごめんなさい?」


 うぐ、その微笑みが卑怯だわ。

 で、でも今、何か言おうとした?


「げみり?」


「随分急いでいたみたいだね? 気をつけなよ?」


「あ。そ、それ、それよ、追われて……」


「クソガキーっ!!」


 げぇ、来たァ!?


「た、助けてっ」


「え? あの……」


 当然のように少年の背後に回り込み、押しだすように追って来た二人組に差し出す。


「邪魔すんじゃねぇっ!!」


 と、走り込んできた巨漢が、突如その場で真横に一回転。

 え? っと思わず呆けた私の両手を腰から離し少年はゆっくりと前にでる。


「テメェ、よくも相棒をッ!!」


「いや、私がやったわけでは……はぁ、全く、ガレフたちは後で説教だな」


「死に腐れぇっ」


 細長い男が剣を引き抜き駆けだした。

 街中で抜かれた剣に周囲から悲鳴が上がる。

 しかし、少年が腰だめに構えた次の瞬間、少年は一瞬で男の背後に駆け抜けており、手には鞘から引き抜かれた刀。あれは、刀、よね?


 そして音もなく倒れる気絶した細長い男。

 一体何が行われたのかすら分からず、危ない二人組は沈黙した。

 ただ、私の瞳に、煌めく金髪をなびかせた少年の背中だけが焼き付いたように残った。


「ふぅ、ダール、こいつ等兵士に持ってくよ」


 少年に呼ばれて動きだしたのは、私の横にいた全身鎧。

 あ、これオブジェクトじゃなくて相方さんだったのね。

 無言で動く全身甲冑、気のせいかしら、今、鎧の隙間からタコの足みたいなのが……気のせいよね?


 私が何か声を掛けるより早く、彼らは気絶した男達を引きずって去って行った。

 ダールさんの相方、ね。覚えたわ。ばっちり覚えたわよ。

 私がハーレム形成した暁には、あの人を迎えに行きましょう。絶対、モノにしてやるわっ。

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― 新着の感想 ―
歌うまコンテストって今年からですよね。なのに常連とは奇々怪界でした。
[一言] 分身作る魔法(性転換などのカスタム可能)ありますけど身代わりとして使います?
[一言] (´º∀º`)アラマァ めんどくさい形になったんだよ…|´-`) まぁ、発覚しても百合百合してくれるなら別にいいんだよ|´-`) 逆恨みしてきそうな希ガスるけど…'-')
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