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45話・ロゼッタ、秘密の暴露

「慎重に選んでいた努力を無に、した?」


 リオネッタが困ったような顔で戦慄する。

 うーん、私にはよくわからないんだけど、リオネッタはどんな間違いを犯したのかな?

 ボーエン先生、教えてプリーズ。


「独学で覚えた魔法は本来の魔法と逸脱している可能性が高い。その魔法が魔術ギルドに登録されればお嬢自身の名が発明者として刻まれる。だが、もしも、俺が極悪の教師だったらどうする? 折角秘密裏に発明した魔法を俺に見せることになり、その理論を俺がギルドに発表したら? 折角作った魔術の発明者はお嬢ではなく俺になる。自分の主人にとって不利になる秘密をそのメイドは暴露したんだよ。そりゃ俺はギルドの名声なんざ欲しくもないから発表なんぞしやしねぇが、普通に貴族の教師をしている魔術師共は魔術に関しては強欲だからな。お嬢だって、それが分かっていたからわざわざ信頼が出来ない教師どもを追い返して変わりモノの俺を雇ったんだろ?」


 全然違います。でも、とりあえず頷いとくの。良い方への勘違いなら否定する必要がないのだもの。

 私は賢しい女なのよ。だって、悪役令嬢ロゼッタだもの。でも悪い悪役令嬢じゃないんだよ?

 実際はまったく分かってなくて私にとって都合のいい教師を選んだだけなのよ。


「そ、そんな、私、そんなつもりじゃ……」


「分かったか? 分かったら今日は大人しく部屋に戻ってろ。この調子じゃ他にも何かお嬢の秘密誰かに暴露とかやってんじゃねーか」


 ふんっと鼻息を慣らし憤るボーエン先生。なんでそんなに怒るのかと思ったんだけど、よく考えればこの人魔族の王子だった。

 そりゃ部下が主人の秘密にしたいこと暴露しまくってたら怒るよね?

 だって王族の秘密を誰かに喋るとか王族への反逆に等しいもの。極刑よ極刑。

 リオネッタはメイドとして致命的なことやらかしてたわけか。

 普通の貴族だったら、多分解雇しちゃうよね? いや、むしろ暗殺?


 でも安心してねリオネッタ?

 私、そこまでバレて窮地に陥るような秘密はないんだよ?

 まだ何もやらかしてないはずだから問題ないんだよ。か弱い令嬢でしかないんだよ。ゴブリンさんしか被害者居ないからセーフなんだよ。


 リオネッタは泣きそうな顔で走り去ってしまった。

 さすがに言い過ぎじゃないかなって思ったんだけど、ボーエン先生は私の肩を掴むとリオネッタの後ろ姿を見送っていた私を無理矢理ぐりんと自分に向ける。


「お嬢、あのメイドは危険だ」


「危険?」


「このままあいつを雇ったら、いつかお嬢にとって致命的な秘密を最悪のタイミングで暴露しかねないぞ?」


 それ、多分だけど卒業式の日に私がそれまでリオネッタに頼んでやらかしていた悪役令嬢の御嗜みについてなんだよ。そっか、リオネッタってばゲームじゃ私の秘密を暴露する役だったんだっけ。

 つまり、今の彼女の状況ってまさにゲームの彼女の役割そのままなんだよ。


「問題ありませんわ」


「はぁ? 正気か?」


「彼女が知りえる秘密で私にとっての不利はありませんもの、せいぜい赤面するくらいの恥ずかしい話くらいですわ」


 しばし、私に視線を合わせていたボーエン先生、心配そうな顔されるとちょっとキュンときちゃうな。先生のイケメン顔を間近に近づけられると私みたいな四十路のおばさんなんて一撃でコロリだよ。いけないわ先生。それ以上近づかれたらキスしてしまいましてよ? はっ!? 私は8歳の幼女だったんだよ。四十路じゃないんだよ。誰だよ四十路。前世でてこないでぇーっ。


「はぁ、こりゃ何言っても聞かねぇ頑固者の眼か。まぁメイドに関しては俺の管轄じゃねーからな。一応親父さんには伝えるぞ?」


 しばらく見つめ合ってると、ボーエン先生は私から離れて頭を掻きながら溜息を吐く。

 ほんと、最初の印象からだいぶ変わるなぁこの人。

 最初はうだつの上がらない平民のお兄さんって感じだったのに。

 今じゃ心配性でツンデレなイケメン魔族のお兄さんだ。


「え? やめてくださいませ。親馬鹿なお父様にそんなこと言ったらリオネッタが消されますわ」


「嘘だろ……いや、あの親ならやりかねんか……わかった。メイドに関しちゃ俺は関わらん。お嬢のほうで対処してくれや」


「ええ。お任せくださいませ」


「さて、それじゃあ」


 と、ボーエン先生は居住まいを正す。

 何か真剣な話か? と私も居住まいを正した。


「お嬢、あんたどんな魔法が使える? ただ魔道書だけで出来る魔法を逸脱し過ぎだ」


 たった一つの魔法見ただけで分かるのか、魔族、侮りがたし。


「それは……」


「いや、分かってる。お嬢としてもそれは言えるモノじゃねーんだろ。俺だって分かる。むしろ、さっきメイドに窘めたばっかだしな。だから、ここからは俺も危険を負う」


 どゆこと? って、お、おいおい?

 なんと、ボーエン先生は眼鏡を取ると、身体を光らせる。

 なんでさっ!? と思ったのもつかの間、ボーエン先生の身体が変化して、紫色の蝙蝠羽を持つイケメンに進化した。

 あ、違った。魔族としての正体を露わした、が正解か。


 って、魔族って最大の秘密じゃんかーっ!?

 ヒロインちゃんでも好感度80以上でかつ魔族領に向かう直前の告白でようやく教えてもらえる秘密だよ!? まさかの本編より8年以上早くに悪役令嬢に教えちゃって良かったの!?

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