437話・ロゼッタ、せっかくだから女性として過ごして貰おう
「お願いしますッ」
ラファーリアが土下座するような勢いで詰め寄ってきた。
さすがに弟子は取ってないんだよ。まだ家庭教師に習ってる弟子の段階だし。
「んー、普通に兵士の訓練だけじゃ駄目なのかね?」
「貴女の実力に追い付きたいんです」
まいったなぁ、私と同等、となると山一つ消滅させないとレベルが上がらないんだよ?
とりあえずレベル300以上は邪神洞窟に籠ってミノタウロス狩りして貰うしかないかな?
頑張れば500くらいまではあがるかも。二年くらい掛かりそうだけど。
「偶然要素が強いからさすがにこのあたりに追い付くのは難しいんだよ、一応方法としては邪神洞窟最下層で二年くらい頑張ればレベル500くらいまでは上がりそうだけど」
「えっと……何の話ですか?」
「ん?」
「え?」
あれ? レベルの話じゃないの?
「ふーむ。私の実力ってことは、大局観とかそっち系の話かな?」
「あ、はい、多分そっち、です?」
困惑しながらも答えるラファーリア。
うーん、他のメンバー以上となると、ふむ。だったらアレを覚えて貰うのがいいかな?
「多分だけど、貴女が目指すのは周囲から凄いと思われる動きと実力よね?」
「は、はいっ。ゴブリンたちをほぼ一瞬で倒した動きや、あの剣での一閃、凄く流麗で、そのなんといって言い表せばいいのか……凄かったです」
「それを目指したい、と?」
「だめ、でしょうか?」
要するに、皆に先んじて兵士達より強くありたい。皆より目立ちたいってことよね。
彼女、承認欲求強そうだし、剣聖さんの抑圧のせいでちょっと歪んでるみたい。
となると……ちょっと荒療治が必要か。私に出来るかなぁ、まぁ、やるだけやってみよう、失敗したら責任取って将来の面倒くらいは商店の方で見てあげよう。
「条件があるわ」
「な、なんですか! 強力な魔物を倒すんですか!? それとも伝説級のアイテムをもってくるんですか! 私、頑張ります!!」
「女性であることを表に出しなさい。服装もドレスよ」
「……はい?」
私が出した条件。それは私の訓練を受けるならば自分は男装しているということを詳らかにしてドレス姿で訓練を受ける、と言うものだった。
特別訓練を受けさせるんだからそれ相応の恰好じゃないとね。
「さぁ、どうする?」
「……」
凄く悩んでいる。
やはり父親からの呪縛は相当のようだ。男装して長男演じたところで結婚出来ない訳だし、子供だって作れない。ソレを理解できない父親では無かろうに、お家断絶するつもりかね?
それよりは婿貰って新しい家族作って孫を鍛えればいいじゃない。
ま、それはともかく彼女には女性として幸せを掴んでほしいし、ちょっと意識改革も兼ねて訓練して貰うんだよ
「……わかりました、やります」
「あ、それはいいけどドレスはあるの?」
「え? いえ、ありません、けど……」
「ウチの御用達の店があるからそこで買いましょうか。ドレスが来るまでは今まで通り、ドレスが来たらカミングアウトと同時に特別訓練を組むわ」
「わ、分かりました。覚悟しておきます。ただ、たまに見に来るって言ってたお父様がどう思うか……」
「あら、別に気にする必要はないわ。私と剣聖さんの問題になるもの、貴女は気にせず訓練してればいいのよ。頭の固いうえにプライドが高い人には得意なモノで勝負して打ち勝つのが一番なんだよ」
「あ、あの、一応、私の父親なので、あまりひどいことは……」
「さぁ、そうと決まれば早速採寸に向かいましょうか」
「あ、はい、そうですね」
「服装は……まぁそのままでいいか。じゃあ行きましょう」
アイテムボックスに鎧を仕舞ってドレスに早着替え。
普通の服って貴族だとほぼドレスなんだよね。
一応いろいろ作っては貰ったけど、他の人がなんだその服とか訝しみそうだから外ではドレスしか着られないのよ、面倒臭い。
家だと基本学校時代のジャージだったのに。あれってなんか着心地がいいのよね。気付いたら家の中の普段着になってるのよ。
さすがにこの世界には無かったから着れないけども、あったら多分家の中ではアレで過ごしてたね。メイドさん達の悲鳴が聞こえる気がするや。
この日は服屋でラファーリアのドレスの採寸を済ませ、ついでにもう一つ衣装を発注してからラファーリアを兵舎へと送り届けた。
キーリには待ってて貰ったので二人で家へと帰る。
訓練所でキーリと合流した時にはまだリオネル様が居て、私が帰ってくるの待っててくれたの。ああもう、リオネル様ったらマメよね。
またねロゼ。とか挨拶するためだけに残っててくれたのよ。ああもう、私の婚約者が天使過ぎて困る。
リオネル様が婚約者でよかったぁ。
キーリが凄く呆れた顔でこのバカップルとか言ってたけど、なによ、羨ましいの? キーリも彼氏見付ける? 主様がいるから問題無し? 私女の子だってば。




