表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
440/1873

435話・ゴルディアス、打ち取ったぜゴブリンキング! 俺ら凄いだろお嬢……おおぉ!?

SIDE:ゴルディアス


 くあぁ、効いた。

 ゴブリンキングの拳をまともに背中で受けた時には一瞬意識が飛んじまった。

 ポーラックの奴は後でお仕置きだ。


 しっかし、ゴブリンキングの野郎も大した事ァねぇな。

 人間様が一撃受けたら即死の攻撃? 現に俺がこうして生きてんじゃねーか。

 内臓結構ヤバかったが回復魔法の御蔭でだいぶマシだ。

 あとでお嬢の検診は受けなきゃいけねぇだろうがな、まだ腹ン中がぐちゃぐちゃになってる気がして気持ち悪りぃし。


 しかし……とゴブリンキングに視線を向ける。

 そこには回転するように左右から攻撃を仕掛ける二人の兵士達が居た。

 最弱として最近有名になりだしたサロックとゼオールだ。

 正直嫉妬するほどに良い動きしてやがる。

 互いに時間差を付けて攻撃、片方が斬れば反撃される前にもう一人が攻撃して反撃方向を惑わせているのだ。


 最初の矢で両目を潰したのが効いてる。

 個別に認識されてりゃ、ああいった方法は使えなかっただろう。

 でも、良い動きなのは確かだ。同じ動きを誰かとやれと言われても俺にゃあ出来そうにない。

 なんというか、余程相手の動きが分かってないと出来ない動きだ。

 よくフェイルたちが大局観大局観と言ってたが、あいつ等習得したのか?


 そうこうするうちに二人が突然ゴブリンキングから距離を取る。

 なんだ? 

 と思ったがむしろそれより先に叫んでいた。


「全員離れろォっ!!」


 皆もある程度何かを察してたのだろう、俺が叫ぶより早く回避行動に入っていた。

 遅れ、ゴブリンキングが高速で一回転。

 長く丸太のような腕を伸ばして周囲を薙ぎ払う。


 残念だったのは皆が回避したことで空回りしたことだろう。

 間抜けに回ったゴブリンキングは足の腱が切れていたせいでバランスを取る事が出来ずそのまま倒れて行く。

 好機到来だ。


「行けポーラックッ!!」


 フェイル達が何か指示するより早く、俺の声が響き渡った。

 当然、俺も走りだす。

 気合と共に突撃したポーラックが先程の失態を巻き戻す一撃で立ちあがろうとしたゴブリンキングを背中から地面に縫い付ける。


 ゴブリンキングの悲鳴に、皆、弾かれたように殺到し、槍部隊が一気に槍を放つ。

 サロックが振られそうになった腕を切り払い、逆の腕をゼオールが切り裂く。

 それでも暴れようとしたゴブリンキングの足をアルベールとミリスタシオンが縫い止め、バルガスが背中に跳びつくような一撃。


 轟く悲鳴をあげて仰け反ったゴブリンキングが見た最後の光景は、俺が両手剣を振り上げる姿。

 よくも一撃くれやがったよな?

 これは、お返しだクソ野郎ッ!!


「おぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 気合と共に叩き伏せる。

 それが、トドメの一撃になった。

 しばし残心し、動かなくなった事を確認する。


「俺らのォ、勝ちだァァァッ!! うおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――ッ!!」


 勝利の咆哮を叫ぶ。

 一瞬、皆があっけに取られていたものの、ようやく理解したらしい。

 ゴブリンキングを相手に誰一人欠けることなく勝利したんだと。

 これは、快挙だ。

 正直ゴブリンソルジャーの群れだけでも死人が出ていた今まででは想像も出来ない快挙である。


 皆が抱き合い喜び合う。

 俺も嬉しい。こんなに嬉しかったのは初めてじゃないだろうか?

 なぁ、お嬢、どうだった! 俺達はやったぞ!

 ゴブリンキングを討ち取った……は?


 歓喜は一瞬で吹き飛んだ。

 そのあまりにも意味不明な光景に、内から溢れた感情はどこへともなく吹き飛ばされた。

 視線の先に……山があった。

 およそ数万のゴブリンたちが積み上がって出来た死骸の山。

 ただのゴブリンだけでなく、ソルジャーアーチャーナイトにマザー。あらゆる上位ゴブリンごちゃ混ぜに。


 目がバッテンで舌だしながら積み上げられたゴブリンの群れの頂上に、彼女は剣を突き刺し、柄に両手を置いてこちらを静かに見降ろしていた。

 ぶるり、全身が震えた。


 俺は、なんでゴブリンキング一匹倒した程度で浮かれていたんだろうか?

 今、攻めて来ていたのはゴブリンキングだけじゃ無かった。

 ゴブリンの群れ、数万匹のモンスターパレードだ。

 一度起これば国すら滅ぶ大災害。


 強敵に気を取られて守るべき背後に敵が行っていたかもしれないことに冷や汗が流れる。

 だが、現実はそうはならなかった。

 俺達がたった一体の強敵と闘える環境を整えるために、自らは残り数万のゴブリンを一人で引き受けていたのだ。


「お、お嬢、それ……」


「よくぞ誰も欠けることなくゴブリンキングを討ち倒した。君たちの成長を私はとても嬉しく思う。これからも日々の成長を期待する。国を守る立派な兵士になってくれ」


 ちょ、ちょっと待て。ちょっと待てェッ!!

 その状態でそれ言っちゃうんですかお嬢!? あんた自分がどんな偉業達成したか理解できないんっすか!? モンスターパレード実質独りで平定してるんっすよ!?

 その光景見せられたらゴブリンキング討伐なんてまったくもって誇れないじゃないっすか!?


 俺らが唖然と見上げている理由が分からないらしく、お嬢はどしたの? と小首を傾げるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これ他国の兵士長が王様にあの国はゴブリンパレードをほぼ一人で倒す幼女がいるからあの国を攻めるのは止めたほうが良いと進言しても、そんなことあるわけないだろうと、言われて相手にされなそう…。
[一言] 次は他国の兵士さん視点かなぁ?笑笑 ゴルさん、気持ちは分かるです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ