424話・ロゼッタ、がんばりました!
その兵舎はロの字型の建物だった。
入口側からは四角い三階建ての施設にしか見えないが、奥に広く正方形に設計したのでかなり奥行きもある。
正面は旧兵士寮、ようするに今いる現存の兵士達用の部屋を用意しておいた。
あとはシャワールームとか更衣室とか全部ここである。
中央以外に右端の一番下にも入口を設置。ここは更衣室に直結してあるので着替えたらすぐ外に出れるようにしている。
商店と同じ結界張っといたからたとえ開けっぱでも不審者が入り込んだりすることもないし。
近くにシャワールームと洗浄ルームを作っておいたから汚れた武装を洗浄ルームで洗ってる間にシャワー浴びればいい感じの時間短縮で綺麗になれるはずだ。
多くの兵士がくつろげる談話室も用意、ソファくらいしか用意してないからあとは皆で必要なモノは買いそろえる感じでいいだろう。
一番上の階に部隊長部屋を用意し、二階と一階の半分位を今いる兵士たちに割り振った。全部個室である。
ここを南側兵舎として、西と北兵舎はまだ無人。しばらく使うことはないでしょう。
東兵舎を今回の新人たちに割り振ることにした。
部屋については最初だし四人部屋にしておいた。
さすがに個室にするといろいろ面倒なこと起こしそうだし。
ついでに言うと、一人だけ男と偽ってやって来ている剣聖の娘さんはこの男所帯に放り込む訳にもいかないので総指令官室として私用に作っておいた部屋で寝起きして貰おうと思う。
その話をするためにも、彼女とは個人面談である。
「それじゃフェイル、私達は総指令官室に行くから、案内よろしく」
「ちょっと待ってください。私達もこの兵舎は初めてなのでさすがに無理です」
「えー」
やっぱり説明しないと駄目?
仕方ないなぁ。
「では皆さん説明します。まずはこの兵舎の中央にある入口が正面玄関。東側にある入口は更衣室から直接外に出るための出入り口よ。兵装を整えたらあそこから出ればすぐに訓練を行えるわ」
まだ呆然としたままの兵士達に伝えながら正面玄関へと向かう。
皆、私に従うようにぞろぞろと続く。
「正面玄関には下足場を用意したわ。一応ネームプレートは用意しておいたけど新人さんたちの名前はまだ私が覚えてないから作ってないわ。ここの一列好きな場所を使って。後で名前を書いておく事をお勧めするわ。フェイル達はこっちの下足場ね。名前を入れてあるから下足やグリープはここに入れてから上がりなさい。上履きは既に用意しておいたわ。こちらを履いて頂戴。くれぐれも下足場以降を土足で歩かないように、掃除するのは貴方達だから別に問題無いなら歩いても構わないわよ」
「私達で掃除ですか?」
「今までの兵舎はどうしていたの?」
「何も決めてませんでした」
え、全部放置? ソレはさすがに引くんだよ?
「あとで会議を開きましょうか? 兵舎の取り決めは最優先でしておいた方がいいんじゃないかしら? 貴方達の住まいなのだから快適にするも不衛生にするも皆自身よ?」
「そうします。皆、後で会議を開くぞ。部隊長以上は会議室に集まってくれ。会議室は……」
入口近くにあったドアを指差す。ちゃんと学校みたいにドアの上にプレートで会議室と書いてあるんだよ。分かりやすいでしょ?
主要な部屋はほぼ一階に集中させておいた。
御蔭で移動はしやすいでしょ?
そのまま更衣室へと案内しておく。
皆シャワールームや洗浄室を見て目を輝かせていた。
といっても新人さんは物珍しさからだったけどね。
実際に使用用途が分かったフェイル達はもの凄い喜び様だった。
魔法使えないとシャワーとか洗浄室使えないんだけど、魔力運用は既に実戦に取り入れてるフェイル達にとっては何ともない便利器具でしかなかった。
新人さんにはまだ使えない施設だね。その辺りはフェイル達にお任せだ、新人に使わせるかどうか、存分に話し合ってほしい。
更衣室を案内した後は新人さん達の寝床紹介のために東兵舎へと向かい、三階で説明を開始。
新人たちはここでお別れだ。皆我先にと自分の部屋を決めて四人部屋に割り振られていく。
キーリ、新人さん達についてはお任せするね。トラブルがあるだろうからしばらくこの辺りで居残っててね。
お次はそのまま南兵舎に戻って三階の左端へと向かう。
はい、ここから部隊長部屋ね。一応こっちで勝手に名前付けておいたから、気に入らなければ自分たちで相談して決めてほしい。
フェイル達も自分の部屋を確かめたいそうなので彼等とも一旦別れ、私と剣聖の娘さんだけが残る事になる。
「あの、私も部屋を決めたいのですが……」
「貴女には個室を用意してあるわ。さすがに男共の巣窟に混ぜる訳にはいかないんだよ」
「っ!? それは……」
「幸い、サロックといい勝負をしてたから、貴女を特別扱いしてもそこまで問題にはならないでしょう。さて、ここが総司令官、つまり私用の部屋なんだけど、私は家からの通いなので殆ど使わないんだよ。一応ユニットバスは付けておいたから自由に使っていいんだよ」
「こ、こんな豪華な部屋なんて使えませんよ!?」
「使いなさい、これは命令です」
「うっ……」
「全く、男を名乗るのはいいけどバレたらどうなるかくらいは考えておきなさいよ。はい、とりあえず荷物適当に置いて、武装を解除、それが終わってからオハナシしましょうか」
「……はい」
観念したように剣聖の娘さんはうなだれるのだった。




