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422話・ラファーリア、お父さんの復讐に来た

SIDE:ラファーリア


 ようやくお父さんに許可が貰えた。

 剣聖の称号を持つ父はとても厳粛な人だった。

 ただ、こしらえた子供に息子ができなかったせいで、私を男として育て、剣術の極意を叩き込まされたのはちょっと怨みを覚えている。


 それでも、ここに来たのは父の為だ。

 父が厳格過ぎたが為に近衛兵たちがこぞって父を追放した。

 父を追放したのだ。許せるわけがない。

 だから、だから近衛に入隊して、私が今の近衛部隊を追放してやるんだ。


 そんな思いを胸に、男所帯の兵士団に入隊し、近衛兵に昇格を、と思ったのだけど……なんだ、これ?

 私は思わず目を疑っていた。

 目の前に対峙しているのは近衛部隊の一人と兵士の一人。

 いずれもプラカードを胸元に掲げていた二人である。

 話によると、近衛兵と普通の兵士を合わせた最弱決定戦で最下位を叩きだした、兵士達の中で最も弱い二人だそうだ。


 彼らの息子だろう、新人の一人が父親に向かって見損なったとか、なんでそんなプレートしてんだよ。とか自分の父親の実力とか知りたくなかったとか散々言ってたんだけど……

 さすがに居たたまれない気分にさせられるんだけど、本気であれ、大丈夫?


 いざ戦闘が始まると、その最弱二人を相手に、新人たちはなすすべなく散っていた。

 いや、ほんと、開始数秒で一気に新人たちが倒れだした。様子見のために距離取っててよかった。前の方にいたら訳も分からず空を飛んでるところだ。

 ほんと、意味が分からない。人が吹っ飛ばされて空を飛んでんのよ。


 一斉に打ち掛かられた筈なのに、気付いた時には新人の私達の方が倒れていたり、吹き飛ばされたり、誰も最弱兵二人にダメージらしき物を与えられていないのだ。

 不意打ちの攻撃も、全て当たる前に対処されて無力化されている。

 私の傍に居た息子さんも、自分の父親の実力を垣間見て呆然としていた。


 さっきまで散々蔑んでいたのに、想像を越えた強さを見せられ、あれ、ウチの親父どこが最弱? って顔で立ち竦んでいる。

 100人を越えていた面々が次々と地に伏せ、既に残るは20弱。

 それも徐々に減って行く。


「父に免許皆伝を貰ったんだ。負けてたまるか……」


「父さん、最弱なんて冗談だったんだ……ええい、クソ、散々酷い事言ってごめん……胸、借りますッ」


 私が動きだすと同時に、呆然としていた青年が父親向けて動き出す。

 ん、なら私は近衛の最弱を狙わせて貰う。


「お覚悟ッ」


「しねぇよっ」


 覚悟、っと叫んで特攻をしかけたら覚悟しねぇよ。と言葉と共に剣を受け止められた。

 完全な死角からの一撃だったはずなのに、これに反応出来るの!?

 さらに剣撃の応酬にも対応し、私以外の騙し打ちにも軽々対応して見せる。

 後ろに目が付いてるんだろうか? なんで見てもない場所に剣向けて攻撃防げるのよ!? お前は私のお父さんか! って思えるくらいの反応だ。要するに動きが剣聖並だ。


 正直言わせて欲しい。

 これで最弱? 最強じゃなくて?

 正直近衛兵舐めてた。


 一合一合剣をこすり合わせるだけで分かる。

 これで最弱など冗談が過ぎる。

 お父さんだって苦戦しかねない苛烈な攻めと的確な読み。

 遠くから狙う他の新人をも私との闘い中に意識から外さない大局観。

 どれもこれも一級品だ。なにが最弱だ。やっぱり最強の兵を嗾けて来たんじゃない。


 全てにおいて私の上を行っている。

 まるでお父さんを相手しているような気分だ。

 いや、今までのお父さんは私に対して手加減してくれていたから、むしろ手加減されてない今の状態の方が苦戦している。


 不意に、視線を感じた。

 気が付けば、既に息子さんを倒したもう一人の兵士がこちらをただただ見守っているようだ。

 おそらくだが、こっちの一騎打ちを邪魔する気はないのだろう。

 そもそも、一騎打ちを行っていても私の方が追いこまれているので、もう一人まで参戦されると完全に詰むのだが、この二人、個人個人でも強いのに、連携まで出来るのがズルい。

 そのせいで100人越えだった新兵がすぐに負けたのだ。


 悔しいが、私もそろそろ負けそうだ。

 手に力が入らなくなり始めた。

 向こうもそれに気付いたようで少しずつ力を抜いて合わせに来ている。

 おそらくだけど私が満足して負けるように手を抜こうとしているようだ。


 相打ちくらいには考えているかもしれないが、なんか悔しいのでさっさと剣を手放し両手を上げることにした。

 おっと、意外そうな顔をしつつも最後は寸止めか。


「もう少し粘れば同時に俺も負けてたかもだが?」


「手加減されて譲られた栄誉に興味はないわ。でも、さすが近衛兵は伊達じゃないわね。この人数をして無傷とは想定してなかったわ」


「そりゃあどうも、でも俺らが最弱なのは確かだぜ? 他の面子も俺くらいの行動は普通にできるからな」


 嘘だと思いたいけど、この態度に偽りを言ってる様子は全く見られない。

 つまりほぼほぼ真実だということになる。

 私の野望、というか復讐って、出来るんだろうか?

 なんかちょっと見ない間に兵士達の質が爆上がりしているってことでいいんだろうか?

 お父さん、兵士たちは怠けてばかりだから私でも勝てるとか言ってたのに、全然強いじゃん!?

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― 新着の感想 ―
[一言] >お父さん、兵士たちは怠けてばかりだから私でも勝てるとか言ってたのに、全然強いじゃん!? 当時はそうだったのだよ、でも今は性根から叩き直されて、魔改ぞ・・・げふん、厳しい再訓練を施されている…
[一言] 息子さんに父の大きさを見せれたゼオールさんの内心を知りたいですw ラファーリアさんは女性であることは隠す気無いんですね。 それにしても、父と父さんかぁ…グッときた
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