403話・ロゼッタ、慈悲は既にないんだよ
お父様に呼ばれ、訓練途中ながらリオネル様とキーリを連れ立ち家に戻った私は、想定外の事実を聞かされることになった。
お父様曰く、領地の方に戻るのが億劫だったので弟家族に任せきりにしてたらめっちゃくちゃ不正してたんだよ。てへぺろっ。ってことらしい。
「義父上、つまり、私が不正を向こうで暴き、独自に断罪しろ、ということですか?」
「私が気付いたので確認のために二人を派遣する。黒だった場合は慈悲はいらん。確実に弟家族を断絶してほしい。陛下に知られれば我が家にまで被害が及ぶが、内々に処理して領地を立て直せれば我が家への波及もなく、断罪した者がリオネル様とロゼッタであるならば婚約している二人の功績となり白紙になることもない……と思われる」
「なるほど、報告を行う時には既に解決済みだと告げる訳ですね」
「と、言うより、今すぐに私が陛下に告げるつもりだ。リオネル様にはお手数を掛けるが、ロゼ共々直ぐに領地に向かってほしい。断罪終了後は領主不在になるが……最悪私が領地に戻ろう。代わりに領主を出来る者が居ればいいのだが……」
「ふむん、心当たりはあるかなぁ。彼女にやらせてみせようかな」
「ほぅ、ロゼが任せるというなら適任か」
「あ、いえ、下手したら弟家族さんとやらと似たような状況になるかも? でも家系とは関係ない臨時職員だから私達への被害は最小限、になる人材です」
「ロゼが足切り予定で紹介するって珍しいね?」
「ポアラさんなんだけど、結構な悪女なんだよ。能力だけは高いんだけどちょっと信用するのは不味い人」
「それ、領主代理にして大丈夫?」
「一応次はないと告げてるから本人も必死にやるんじゃないかと、駄目なら仕方ないかなぁって」
あれ? なんでリオネル様もお父様も冷や汗流して押し黙っちゃうの?
「分かった。ロゼがそれでいいなら任せよう。とにもかくにも我が弟家族を断罪しないことには始まらん。リオネル様、いかがでございましょう?」
「うん。ロゼとの婚約破棄の危機だっていうなら行くしかないよね。ロゼ。一緒に、婚約破棄を回避しよう。来て、くれる?」
「当然ですっ!!」
「あー、ウチ部外者っぽいんやけど……訓練は任せて貰ったらええんかな?」
「何言ってんの? キーリも来るんだよ。捕縛要員必須だし」
「主はんおったら問題無い気がするんやけど?」
「いいじゃないか、一緒に行こうよキーリ、ロゼが一緒に行きたいって言ってるんだし」
「まぁ、ええけどね? 主はん、去年じゃなくて良かったなぁ、今年はフェイルたちがおるから訓練でんでもよー回るけど、去年やったらどうなってたか」
「まぁ、私達がいなくとも回るようにはなってるでしょこの時期なら。レイド戦は出来ないけど」
しかし、領地ねぇ、そう言えば昔は領地と行ったり来たりしてた気がするけど、リオネル様の婚約者に決まってからはずっとこっちにいたなぁ。
おそらく私とリオネル様がいつでも会えるようにお父様が気を利かせたんじゃないだろうか?
それで、領地の経営を弟家族に任せてこっち専任になったのだ。
それにかこつけて弟家族は調子に乗って不正万歳やっちゃったらしい。
このままでは私達にも連帯責任でお家断絶の危機らしいから次代の領主候補であるリオネル様と私とでちゃっちゃと断罪して戻って来いってことらしい。
「ロゼ、馬車は既に用意されてるんだって、直ぐに行く? 用意はいいかな?」
お父様の部屋を出ると、歩きながらリオネル様が尋ねて来る。
馬車かぁ。馬車だと時間掛かり過ぎるよなぁ。
「問題ないんだよ。何か必要なのがあったら取りに戻ればいいし。領地程度の距離ならひとっ飛びなんだよ」
「あ、そっか。飛行すればすぐか。じゃあ僕も何も持たずに行こうかな」
「馬車使ったら一日掛かる距離やで主はん。馬車どーする?」
「キーリお願い、馬車運んで?」
「えらいごっついこと頼んでんな!? いや、運べるけども。運ぶ筈の馬車を空路で運ぶって、どないなん?」
「馬車が遅いのが悪いんだよ」
と、言う訳で、皆で空飛んで向うことになった。
領地近くで馬車に乗って向うんだよ、あ、御者の人だちょなさんだ!
「だちょなさーん」
「お嬢、今日からしばらく一緒だちょな。ってだちょなは名前じゃないって何度も言ってるだちょな!」
だちょなさんに移動方法を話して納得させる。
折角ゆったり馬車の旅を考えてたらしいけど、ごめんね?
どうせならさっさと終わらせたいんだよ。
時は金なり、余計なことは少ない時間で終わらせるに限るんだよ。
「よし、それじゃあさっさと行こうかロゼ」
「はい、お供いたしますリオネル様」
キーリと馬車とだちょなさんという余計なモノが付いて来てるけど、これはリオネル様との遠出デートなのではないだろうか? 折角だし領地見回って改革案考えちゃおっかな。リオネル様との終の棲家になるかもなんだし。