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402話・レニファティウス、想定外の危機

SIDE:レニファティウス


「以上が報告内容となります」


 影からの報告を聞いた私は思わず天を仰いだ。

 最悪だ。

 想定外の大失態だ。


 まさか、領地を任せていた弟夫婦がとんでもない不正を行っていたなどと、これが発覚すれば我が家が終わりかねない。

 今までなぜ気付かなかったのか。

 ロゼッタの成長する姿に目を奪われていたなどとう言い訳は効かない程に、これはもう気付かなければいけない類の大不正。

 いや、一つだけならばまだもみ消しも出来るのだ。


「主様、お呼びで?」


「ああ、来たかラシウス」


 執事の中でも絶対的に信用が置ける最古参の執事だ。私の汚れ仕事を請け負う時は基本彼に命令を下している。

 彼に頼めば暗殺組織などに依頼が行き、邪魔な存在を消すなどの仕事が行われる。

 侯爵家ともなればこのような闇組織との繋ぎは必ず一つは持っている。

 これは他の侯爵家、伯爵家にも共通するものなので、皆、どれ程相手が憎かろうと、闇組織との繋がりを暴露することは決してしない。翻って自分の身も危うくなるからだ。


「暗殺ですかな?」


「いや、意見を聞きたいだけだ。正直手に余るほどの不正が発覚した。このまま陛下の耳に入れば我が家は終わる」


「それほどで?」


 思わず目を見開くラシウス。

 90越えた老人のようにすら思える長いあごひげと眼すらも覆い隠す太い眉。いずれも白髪になっているのだが、本当に見えているかラシウス?


「弟夫婦に任せていた領地を影に調べさせていたのだが、先日ようやく発覚した。向こうで影に接触されて担当していた影まで不正に加担していたらしい。既にそちらは粛清済みだが、領民への重税、税のちょろまかし、息子達による婦女暴行とそれの揉み消し、さらに他貴族のむやみな暗殺と周辺盗賊との結託。他にも数え上げればきりがない。よく今まで発覚しなかったと言えるほどに、酷い」


「なんと……確かにソレを放置していると発覚すればこの家は取り潰し、お嬢様とリオネル様の婚約も白紙ですな」


「ああ。ロゼッタの記憶にはこのようなことはなかったので油断していた。齟齬があるのか、あるいは、彼女の前世の時では私がもみ消していたのかもしれん。ロゼが、ゲームとはいえ断罪された後におそらく発覚するのだろうな。背景を調べる意味で我が家を調べられた時に、そこで我が家はロゼ諸共滅びる、という訳だ」


「うぅむ、なんとか出来ますか?」


「その何とかするためにお前を呼んだのだ。何か良い方法はないか?」


「……いっそ、全てをつまびらかにするのはいかがです?」


「何?」


 そんな事をすれば我が家は今すぐにでも破滅する。それを理解していての言葉とは思えない。


「陛下に伝えろと?」


「はい、そしてその不正を正すためにリオネル様とロゼッタ様を送り込むのです」


「っ!?」


「要は見付かった不正を自浄できると証明すればよいのです。領地の不正があったのならば、王族とその婚約者候補が不正を暴き断罪した、その事実を報告すればよいかと思われます」


「なるほど、今気付き確認のために二人に調査を頼む。二人ならまず間違いなく領地の立て直しを行ってくれる、そう言うことか?」


「別にそこまでは期待しておりません。二人ともそれなりに忙しいでしょうし、今回は確認と断罪を行って貰い、領地経営は別の者に任せ、二人の手が空くか、主様自ら領地の立て直しに向かうべきかと」


「なんとも頭の痛い話だな」


 恩を仇で返すか。うだつの上がらぬ弟とはいえ、弟だからと任せてみれば……父に申し訳が立たん。あの役立たずを領主代理にしてしまったなどと……今すぐにでも暗殺してやりたいところだが、ロゼとリオネル様を送り込む際に処罰対象が生きていなければややこしいことになる。

 二人に手柄を立てさせるためにも、生きていて貰わねばな……


「リオネル王子を呼んでくれ。王城で話すよりはここで伝えた方がいい。緊急事態と伝えてほしい。加えてロゼの招集も頼む」


「かしこまりました」


 さて、と椅子に深く座り直して息を吐く。

 面倒なことになった。

 正直、私だけでは弟達を皆殺しにして全てを闇に葬る以外考え付かなかった。

 しかし、王族を巻き込む、か。


 しばらくして、リオネル様とロゼ、キーリが同時に到着した。

 キーリもいるが、まぁ問題はないか。


「お父様、緊急事態とお聞きしましたが? リオネル様まで召喚されるというのは?」


「うむ。正直私も想定外でな。つい先日、我が領地を任せていた弟家族が不正をしていたことが発覚した」


「「っ!?」」


「しかも我が影がそれに加担していたせいで長期に渡り発覚が遅れた。そのせいで不正は致命的な程巨大になり、陛下の耳に入れば間違いなく、我が家は取り潰しになる」


「取り潰しッ!?」


「国家反逆の類、ですか? それを僕に伝えるのは逆効果では?」


「正直に言えば、我が家が取り潰しになるのはどうでも良いのだ。問題はロゼとリオネル様の婚約が白紙になるという事実」


「「あ……」」


 二人とも、気付いてなかったのか!? いや、あまりの事実に理解がまだ及んでいないだけか……

 頼むぞ二人とも、我等の全てが二人に掛かってるんだからな。

 ああ、ロゼをあ奴の元へ送ることになろうとは……何事もなく捕縛できればいいのだが。

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― 新着の感想 ―
[一言] 辺境の盗賊やテイム持ち領主の時も思いましたが、よくこんな奴らがのさばってる状態で国として成立してるなーと感じるくらいに治安が悪いですな。
[良い点] 私『レニファティウス?だれかな?…あぁ〜ロゼパパかぁ〜』 [気になる点] 領民への重税、税のちょろまかし、息子達による婦女暴行とそれの揉み消し、さらに他貴族のむやみな暗殺と周辺盗賊との結託…
[良い点] 王様としても宰相としてもロゼッタとの敵対を1番恐れてるわけで最悪今までの功績でロゼッタに爵位渡して独立させでも回避してきそうだけども…… 面子で国潰れたら元も子もないので……まぁ公爵家側か…
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