399話・ロゼッタ、おしおきなんだよ・2
外でも困ってることがあると聞いたのでストイさんの元へ。
やって来てすぐに理解した。
手を洗うことなく泥だらけのまま鯛焼き包もうとしていた子供たちを声で止め、私とストイさんで接客しながら子供たちに幻術を仕掛ける。
突然おろおろし始めた子供たちに急造で作った木板にお仕置き中。と書いて紐を通し、頭から掛けておく。
これで他の人たちが見ても困ったりはしないでしょう。
突然助けてっ! ごめんなさい! を連発し始めた子供たちにぎょっとする御客さん達。
しかし、彼らの評判は把握済みだったようで、ようやくお仕置き始まったか。と苦笑いしていた。
う、ん? なんで苦笑い。
まるで子供たちの店員としての質が下がってたのをお仕置きで戻るのなら喜ぶべきことだけどちょっとお仕置き内容はどうなの? みたいな顔に見えるんだよ?
別に周囲に飛び火したりはしてないんだよ? ちょっと自分の不手際のせいで集団食中毒が急に起こった幻覚見せてるだけなんだよ? ストイさんも泡吹いて痙攣しちゃう頼れる人居ない状態編なんだよ!!
ま、いっか。とりあえずここは済んだ。次はレコール君の担当してる品出し係だね。
カウンターを見まわしながらダイニングルームへ。
うん、今日は奴は来てないようだ。
「はーい、お待たせレコール君。ここの新人はどんな感じ?」
「商品探してきたりはしてるんだけど、同じ場所に戻さなかったり、てきとーに置いてくんだ。僕らが片付けてるからまだ大丈夫だけど……」
「おっけ。あそこにいるのが新人ね。人数あれだけ?」
「はい。それだけですけど、口で注意したところで大して聞き入れてくれないですよ? どうする……」
「ミラージュミスト」
霧が発生し、子供たちを包み込む。
今回の幻覚はカウンターから呼び出し受けて商品を探しに行くけど全然見付からない幻覚だ。
時間を掛ければ掛けるほどにカウンターが地獄になって行く。
最終的に貴族様、折角だからこわもてのゴルディアスが怒り狂ってエルフレッドさんとかを斬り捨て御免してさっさと持って来いと恫喝する幻覚である。
子供たちは半べそ掻きながら無い無いと室内を彷徨いだし、唐突にびくっと震えてごめんなさいと叫びだす。
そのうち絶叫が響き、慌ただしく彷徨い、泣きながら何かを探し始める。
「あの、見ていて痛々しいのですが……」
「自分がやらかしたことで何が起こるかちゃんと理解させることが肝心なんだよ。ここは心を鬼にする所」
「いや、明らかにやり過ぎ……」
え? そうかな? まぁ、もうすぐ切れるから問題無い、あ、ほら、正気に戻った。
「おーい、皆、急にどうした? 大丈夫か?」
「ごめんなさいっ、片付けます。絶対片付けます!」
「商品探した後、後片付け忘れませんッ!」
「貴族怖い貴族怖い……」
「えるふれっどさんごめんなさい、くらむさーじゅさんごめんなさい、いきていてごめんなさい……」
あれ? ちょっと目がヤバいんだよ? 効き過ぎた?
「だからやり過ぎですって。なんで商品来ないだけで貴族が店員皆殺しにするんですか。現実だと僕等を殺すにはレベル200前後は必要ですからね」
「まぁ、幻術だからねー。フォローは任せるんだよ」
「えぇ!?」
「大丈夫、優しく接すればちゃんと言いつけどおりにしてくれるから」
「そ、そうですか……やっぱお嬢は劇薬過ぎたんだ……」
失敬な。
さって、お次は、クラムサージュ達の練金部屋ね。ここの新人さんはポアラに逐一報告してるらしい。それはちょっとゆゆしき事態だ。
なぜポアラに報告しなきゃならないんだ?
と、いう訳で、ここでの幻術はポアラが裏切って自分たちの漏らした錬金術で世界を改革するほどの事を行い、自分たち以外が死に絶えるというバッドエンド方式だ。
ちょっと、やらかしちゃった気がしなくもないけど、うん。ポアラなら問題あるまい。
「お嬢、ちょっといいか?」
「あら。フライジャルじゃない。どうしたの?」
「ああうん、俺の方からも報告っつーか密告っつーか。ポアラ組ってのが組織されてる。この子供たちは全部で四人だが、ポアラに完全に心酔していて彼女の言うことだけを聞いて情報を集めて来る奴らだ。仕事もせずポアラの為だけに動いてる」
あら、そんな子供たちもいるのね。随分と短期間で画策したじゃないポアラ。
「その面子、今は何処?」
「ポアラと一緒に寮の方に居るよ。寮の監査とか良く分からん事やってる」
「ふーん、私が指示したこと以外の事をやってるってことね。その面子、仕事は少しもしてないのね?」
「ああ、ポアラから給金貰ってるみたいだからな」
そうなのかぁ、まぁお金出してるのがポアラだってことなら問題になることじゃないんだけど、ウチの従業員を奪い取ってるってのはちょっと面白くないんだよ。