3話・ロゼッタ、現状を把握する3
と、とにかく、この世界、もしかしたらゲームの世界かもしれない訳だし、ちょっと落ち着いて考えないと。
いや、まずはいろいろ事実確認しといたほうがいいか?
第一王子の名前は、確かエリオット、第二王子がガイウス、だったかな。
で、第二王子の婚約者がエレオノーラ。
第一王子の元婚約者がマルチーナだっけ?
で、主人公は名前自由に決められたけど、元の名前は……ミリア、だったっけ?
まずは王族の名前が合ってるか調べないと。
全員の名前が合ってたらもう確定だとは思うけど。偶然の一致説は最後まで付いて回る。
問題は何処までが一致するか、だけどね。
「あ、そうだわリオネッタ。頭を打ったから一応確認しときたいの。今から質問するから答えてくれる?」
「え? は、はい」
記憶照合と偽って名前を確認することにした。
「まず、そうね、この国の国王陛下は?」
「え? そんなのグランザム・ライオネル様じゃないですか? もしかして忘れたんですか?」
「だから、記憶の照合するって言ったでしょ? 私の言葉聞いてた?」
「あー。そういうことですか」
そうして質問をして答えが返って来る程に、あのゲームとの一致率がどんどん上がっていく。
王国名はライオネル。国王はグランザム、第一王子はエリオット、第二王子がガイウス、第三王子がリオネル、第一王子の婚約者がマルチーナ、第二王子の婚約者がエレオノーラ、そして第三王子の婚約者が、ロゼッタ。
……あれ? 私、第三王子の婚約者になってるんだけど?
ゲームと違うのか?
いや、でも他はゲームと同じだし……
待て、確かゲームの時期が学園生活三年間だった筈。
学生は確か十六歳から十八歳までだった気がする。
今の私の年は八歳。まだ八年以上先だ。
ということは、その間にマルチーナが婚約破棄されて、私が第一王子の婚約者になるんだきっと。
でもあのゲーム、第三王子なんて出てきたっけ? いや、出て来てなかったはずだ。
なんでだっけ?
もっと詳しく思いだした方が良さそうだけど、今は部外者居るしな。あとで落ち着いて思い出そう。何があったか書き出しとかもした方がいいだろうし。
折角なのでリオネッタに伝えて書くモノを用意して貰う。
すると紙と万年筆、ついでにインクを持って来てくれた。
万年筆とか使ったことないんだけど!?
しかもこの紙めちゃくちゃ書きにくそう。羊皮紙って奴?
植物性は無いの? え? 何ですかソレって、紙だよ? うん。わかった。この世界にはないのね。
とりあえずこれは放置だ。まずはお父様とお母様に無事な姿を見せておこう。
それから、お腹も空いたし、一先ず食事してお風呂入って、落ち着こう。あ、でも羊皮紙に書き込むとなったら汚れるな。じゃあ風呂は後の方が良い? いいや、明日の朝また入ろう。
とにかく今日中にいろいろ思いだして今後の指針を立てとかないと。
この世界がゲーム世界である可能性は非常に高いし、自分が悪役令嬢の可能性もかなり高い。
そうなると、ヒロイングッドエンドが起こった場合、高確率で私はバッドエンドを迎えることになる。
何しろ第一王子に婚約破棄されちゃうわけだし。その後どうなるんだっけ? 死ぬの? 私前世で毒殺されたのにまだ死に足りないの? 馬鹿なの? 死ぬの? いや、死ぬ気ないから。死んでたまるか。だから。生きる方法探さなきゃ。
まぁいいや、それは食事と風呂が終わった後だ。
「ろぜぇぇぇぇったぁぁぁぁぁっ!!」
っ!? ぎゅぼろばっ!?
食堂への扉を開いた瞬間、私の身体は抱き上げられ物凄い力でハグ、という名のベアハッグをされた。
全身の骨という骨が軋みをあげて潰されるような強烈な抱き付きだった。
あ、私、死ぬんだ……
「あ、あなたっ、ロゼッタが死んでしまうわっ」
「え? お、おぉ、すまんロゼッタ。お前の無事な姿を見て思わず……」
衝撃的な抱きしめから解放されてわた……ぎゃーっ、痛いのよ髭がぁーっ!?
すまんすまん言いながらお髭じょりじょりしないでぇっ!?
それ、刑罰だから。重罪刑の一つだからぁ。
連続攻撃のクリティカルヒットで撃沈した私に気付いたお母様が止めに入り、お父様の暴走は終わった。
ぐったりとした私はリオネッタにより助け出され、食卓の席へと座らされた。
にしても、お父様はイケメンなのに酷い親バカだな。
茶色の短髪で朝から処理してないために生えたらしい無精髭。この無精髭は兵器だよ。私の頬をすり減らすために用意された専用兵器なんだよっ。
お母様はエメラルドグリーンの綺麗なゆるふわウェーブのほんわか美人。
腰元まである髪はとっても綺麗である。
でね、誰か教えてくれるかな? 茶髪と緑髪掛け合わせたら金髪になるってどういうことっすか!?
この二人の両親から私が生まれる可能性ゼロに近いんだけど!? まさか髪の色は先祖返り? まさかなー。