384話・ロゼッタ、王様に一つ一つ説明してさしあげるんだよ
「面をあげよ」
本日私は再び謁見の間に呼ばれていた。
傅いた状態から顔を上げる。
今回は私一人。なんでも頼みたい事が出来たそうで、ぜひ忌憚ない意見を言ってほしいとか。
うん、全く内容が分からないんだよ?
部隊教育に関してはフェイル達がいるから問題はないし、一応キーリ置いて来たから余程のことがあっても問題はないだろう。鎮圧なら彼女を越えれる存在はあの訓練場には居ない筈だし。
リオネル様に関してはフェイルに任せた。
私だと婚約者としての面が強く出過ぎて厳しくとか出来ないし。
リオネル様は少し残念がっていたけど、目的自体はフェイルからの訓練でも問題なく行えるので皆に混じる、のはちょっと置いといて個別指導で実力をあげて行く。
リオネル様も一応レベル300だからね。他の兵士達と混ぜちゃうと訓練にならないんだよ。
「本日の用事なのだがな……クリス」
呼ばれた宰相さんが私に視線を向ける。
「返事の日の時期にな、全国の王が集まる世界会議というのがあるのだが、知っておるか?」
「いえ、初耳です」
そんなのあったっけ? いや、ゲームにも無かったと思う。いや、確か、ファーガレアの野望にあったっけ? 世界会議に向かう王様襲撃して戦争することなく国を落とす方法とかあった気がする。
ただ、それをやると他の世界中の国が敵対状態になって襲いかかってくるとかで会社の若手達が話題にしてた筈だ。
聞き耳立ててただけだし。ファーガレアは殆ど情報収集しただけだからなぁ、大して知識がないんだよね。
「返事の日近く、ということは三月……新年祭から三カ月頃、ですか?」
「うむ。本来ならばもっと遅くから準備に取り掛かるのだがな。今年は最西端であるファーガレアのすぐ隣、スグニマケイル帝国で議会が開催されるのだ」
うわぉ。出て来ちゃったよファーガレア。
嫌だなぁ。やっぱりあるんだ。
というか、世界会議かぁ、そこ襲えば全部の国の王を倒せちゃうから一瞬でゲームエンドになったりするのでは? そんな話は聞いたことないから出来ないんだろうけど。
ウチの国だとグランザム王が居なくなってもエリオット王子が居るし、実質取り仕切ってるのはクリストファーさんだからそこまで問題無かったりするんだよね。
ファーガレアでもしばらく放置してるとライオネル王国代替わりして無駄に強いヒロインちゃんとエリオット王子が代表になるらしいしなぁ。
「大体向こうに向かうのに三カ月掛かる」
「……はい?」
「つまり、そろそろ準備して向わねばならん。しかも陛下が向うわけだから近衛兵も連れて行かねばならん」
あれ? それって近衛兵の訓練は?
「確か、今年から近衛の訓練も行う筈では?」
「う、うむ、その時は記憶からなくなっとってな、いやー、世界会議、スグニマケイルだったことつい先日思い出したんじゃ」
「私が提案しておかねば完全に近場に行くつもりでしたな」
「うぐ……」
つまり、三か月掛かる場所に近衛と陛下が向うらしい。
三月中旬くらいに始まるらしいのでそれまでに向こうに着かないといけない。
その間近衛は訓練が出来ない、と。
「そこでそなたに提案があるのだが」
ああ、私が呼ばれたのは近衛が訓練出来ないって理由じゃ無かったのか。
「陛下を連れてスグニマケイル帝国まで転移してくれぬか? 出来るのならば、二月ぐらいまで陛下は国で業務を行えるし、近衛兵も訓練が出来るのだが」
「え? 儂まだ働くの?」
とりあえず陛下の呟きは無視するとして、転移、か。
「私は転移に付いてそこまで詳しくないのだが、陛下や近衛を纏めてスグニマケイル帝国に向かえるのか?」
「人数的なモノは問題ありません。人が多くなるほど消費する魔力も多大になりますが、私ならばその辺りも問題となりません。ただ、一つ」
「ふむ。何が問題かね?」
「転移先は使用者が一度行ったことのある場所である必要があります」
「なんと!? ではスグニマケイルには行けないではないか!?」
「くっ、やはり無理か……」
すぐに転移出来るとでも思ったんだろうか?
転移するにも向こう側が分かってないと跳べないんだよ?
石の中にいるとか壁に填まったとか世界の狭間に挟まったとかとんでもないことになるんだよ?
「なんとか、ならんか? このままでは六か月分の食料を今から入手せねばならんのだ。既に年貢は収められた後、国庫から捻出するとなると、少々馬鹿にできぬ損失になってな」
宰相さん。初めから私目当てで国庫の食糧在庫、何とかしようと思ってたな。
そんなにヤバいのかな今年? 財務大臣とか引き継いで私が管理しましょうか?
フェイル達に任せててもちゃんと兵士が育ちそうだから総司令官役、降りても問題無いんだよ?
次は内政? どんとこいっ。
「たとえば、たとえばの話だが、事前にそなただけスグニマケイルに入り、陛下を転移させることは可能だろうか?」
「可能ではありますが、私はスグニマケイルの場所を知りません。どの辺りで会議が行われるのか、近くに転移しても問題の無い場所があるかも調べねばなりません」
「転移に問題無い場所?」
陛下が小首を傾げる。
もしかして、転移失敗の結果って知らないのかな?
「陛下はもしかして、転移失敗については知りませんか?」
「う、うむ。失敗すると、どうなるのだ?」
「石の中に居る」
「う、うん?」
「壁に挟まって人体切断」
「う、うむ……」
「次元の狭間でグッバイフォーエバー」
「よし、辞めよう宰相!」
「案内役を用意しましょう。辿りついたら転移でこちらに戻り、転移日までは今まで通りの業務をするといい」
「ちょ、クリス!?」
「陛下、効率的なのですよ。御覚悟を」
「は、謀ったなクリストファーッ!?」
なんか、寸劇が始まったんだよ?