380話・シゼル、お嬢式店員選別法・3
SIDE:シゼル
「さて、とりあえず貴族の愛人組は解散してもらったんだよ」
残ったのはここに居る女性陣。他の女性陣はすでに自室に戻ってごゆっくり休憩している。
メンバーはまさかの6人。
愛人候補がかなり多かったのは、盗賊達に求められることで駄目男に目覚めちゃった女性が結構多かったせいだろう、あの人には私が居ないとだめなの。とか訳わかんない事言ってお嬢を困らせてたのだ。
盗賊の個人名出して彼が帰ってくるまでに養えるだけのお金が欲しいって人は色町に声掛けることになった。
楽して愛人になりたいって人は貴族に掛け合うことになった。
そして、盗賊や男に復讐を考えてる人達は冒険者になった。
他にも、自分探しの旅に出たい、とかもう男はこりごりだから女性の相手がしたい、とか小さい男の子の居る場所教えてください、とかよく分からない理由も一部あり、彼女等の割り振りも終わったのだ。
んで、残ったのが目の前にいる6人なのである。
最初の面接したラオさん。
ポニーテールの優しいお姉さんなのだ。
あのポニーテール。歩くたびにゆさゆさ揺れるので後ろから見てるとついつい跳びついちゃうのだ。
その度に驚かれるけど、怒られはしないので優しいお姉さんなのだ。
ヴィオリアさんは片目に刀傷がある元冒険者のお姉さん。
腹筋が六つに割れてるのだ。凄いのだ。
なんでも、冒険者稼業はもともと町に定住するために始めたらしくて、孤児からの成り上がりさんだったのだ。
さすがに民兵といえども複数いた盗賊になすすべなく捕まってたらしい。
容姿が容姿なので殆ど襲われなかったとか不満言ってた。下ネタ普通に言ってくる粗野な口調のお姉さんだった。
リキアさんはショートカットの外跳ねな髪型のお姉さんなのだ。
読み書き出来ない村の出身なんだけど、人付き合いは結構好きらしい。
盗賊に襲われたこともすっごく楽しそうに何でもないように話してくるのがちょっと切なくなるのだ。
ローミさんは今回の盗賊のせいで男性不信に陥ったのだ。
でも、颯爽と助けてくれたお嬢に見惚れて、お嬢に頼まれたからここで働くことにしたらしいのだ。
眼が恋する乙女みたいになってるのが怖いのだ。
しかもお嬢がもふもふ好きだからって膝に乗せて撫でまわしている私を見てライバル視して来てさらに怖いのだ。
ピッキアは殆ど私達と変わらない、少女から大人になりかけの女性なのだ。
垢抜けないソバカスのブラッド三つ編みヘア。深紅の髪を見たお嬢は赤毛のアン、とか良くわかんないことを言ってたのだ。
人前に出ないことを条件に、商会の商品作成部隊に入るらしい。
そして一番問題なのが、ポアラさん。
一番の年上で、容姿がどう見ても色町を取り仕切る姐さんって感じの身体付きと顔。
微笑む姿は何かあくどい事考えてますって顔で、どうも周囲の話を聞く限り、盗賊の頭を手玉にとって操ってたらしい。大問題の極悪人なのだ。大毒婦なのだ。怖いのだ。
でも、彼女曰く、お嬢を嵌めるなんて死ぬより恐ろしいことはしないから安心しなさい、だそうなのだ。
彼女曰く、お嬢程悪人が似合う女には私などでは敵わないわ。とのことで、ある種心酔した顔でお嬢を見つめることがあるのだ。
切っ掛けは仲間だった女性陣の割り振りを聞いて少し思案したあと、一人で納得してからだったと思う。
この人は大毒婦。そんな彼女に認められたお嬢は傾国の美女だとか言われてたのだ。
お嬢自身はこの国傾けるつもりはないんだよ。と力説してたけど、それをポアラさんはからから笑いながら、この国の為に他国傾けるんでしょう? と楽しげに笑っていた。
それを聞いたお嬢がデビルなスマイルして応戦し始めて、二人して怪しげな笑いしてたのだ。
悪女同士の会話、滅茶苦茶怖かったのだ。
ただ、商才というべきか、人を見抜く力などは群を抜いていて、誰を何処に配置するべきか、結構口出しし始めていたのだ。
お嬢が怒るかと思ったけどその助言を聞いて納得してたのだ。
だから優秀な人には違いない。ただ悪女なだけで。
「さて、紆余曲折を経て我がプライダル商会は、貴女達6人を雇わせていただきます。しばらくは他の店員と商店で働いて貰いますが、その後は本人の希望を聞かせてもらい適材適所に割り振って行こうと思うんだよ。あと、何か緊急の連絡があれば兵士さんにお願いしてくれれば私に伝わるんだよ」
今、街中を警護しているチームはガレフ隊というお嬢が訓練し終えた兵士さんたちだ。
御蔭でお嬢に頭が上がらないらしい。
むしろ率先してお嬢の役に立とうと、彼女を見かけたら自分から寄って来たりもするのである。
さすが総司令官なのだ。
「それでは授業を始めます。まずは商業に必須の算数基礎から」
この算数、本当に覚えるまで大変だったのだ。
計算嫌いになりそうになったんだけど、解けた時が意外と楽しくて気付いたら計算公式が頭に浮かぶようになってしまったのだ。お嬢はやり手だったのだ。
あ、お嬢そこは触っちゃダメにゃぁ、ゴロゴロゴロ。