364話・ロゼッタ、個人的社会見学・3
「ごきげんよう」
食事を取って多少ぶらついてみたものの、ヤバそうな場所は兵士さんが血相変えて拒否って来たので結局散策らしい散策はできなかった。
行く場所行く場所殆ど止められるんだもん。
この町不正横行し過ぎでしょ。
そこかしこで兵士さんが闇組織と繋がってるし。
リベート受け取り過ぎなんだよ。陛下にお伝えしとこう。
結局散策は殆ど無理だったんで探知スキルで手に入れた情報を精査しながら領主邸に顔を出してみた。
すると丁重におもてなしされて領主さんと二人で会食という謎の状況になってしまった。
まぁ、別にいいんだけども。
まずは挨拶して、相手の挨拶を聞く。
なるほどー、覚える気はないけど、ここの領主になってもう十年以上経つのかぁ。
そろそろ引退考えた方がいいんだよ? この屋敷の中、地下牢あるよね?
女の子の反応が幾つもするし、これは黒なんだよ。
というか、食事に睡眠薬混じってるし。この辺りは食事に睡眠薬入れてお客に出すのが流行ってるんだろうか?
「ん? ど、どうしたんだね? 食事には手を付けないのかな?」
「私、睡眠導入剤入りの食事をするつもりはありませんわ。まだ寝るには早い時間ですもの」
「っ!?」
「それと、ご領主、随分といい趣味をなさっていますわね。地下に居らっしゃる女性陣はどのような理由で暮らしているのかしら?」
「な、なぜそれを……くっ! で、出合え出合えぃ 曲者だァ!!」
悪代官かな?
ならば折角だし、刀を使わせていただくんだよ?
悪徳領主を守るために兵士達がこぞってやって来る。
すらりと刀を引き抜き口上一つ。
せっかくだからなんかそれっぽいこと言いたいよね? ひとぉーつ、とか言っちゃう? 三つは三日月ハゲがある。あ、そっちはギャグの方だっけ?
「不正不正の悪行三昧、お天道様が許してもぉ、悪役令嬢が許さねぇ、なんだよ」
「ええい、わけのわからんことを! 者どもかかれぇッ」
襲いかかる兵士達。
近づく者から切っては捨て切っては捨て。
剣舞というよりも殺陣を行ってる気分になって来る。
普通に血飛沫とかは飛ばないよ? 拙者、不殺の誓いを守るでござる。刃を返して逆刃にしてるんだよ。
「な、なんだ? なんなんだ貴様は!」
「なんだなんだと聞かれても、答える情けは為ならず。ということで教えないんだよ」
「く、ええい、どうでもいい。この魔術さえ当たれば……『隷属契約』」
ぱぁーっ、ガキキキキキキキキキキンッ
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯をテイムした ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
ほわっと?
え? どゆこと? テイム?
待って、今、こいつ何使った? 奴隷契約……?
私の身体がぱーっと光ったと思ったら魔法反射結界が十連反応して魔法を弾き返した。
そしたら悪徳辺境伯がテイムされた。
いらないからリリースで。
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はさみしそうに去って行った…… ――
去ってないじゃん!?
なんなのこの視界の片隅に表示される文字は?
いや、それはまだいい。それよりも問題だ。大問題が発覚した。
奴隷契約のスキル持ちは相手に上手く掛けることが出来れば奴隷化できるらしい。
テイムと同じ状態な所をみると、テイムスキルの名称を変えただけみたいだけど。
今のは私の結界が反射したから良かったけど、もしもこれがあのゲームの主人公だったら?
もしも、強制的にテイム出来る反射貫通持ちだったら……
全身を鷲掴みにされたような不安感が襲いかかる。
対策、考えなきゃ。それも早急に。
ぱぁーっ、ガキキキキキキキキキキンッ
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯をテイムした ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
―― イチゲン・サンデスヨー辺境伯はすでにテイムしています ――
……なにを? しているのかな?
ええい、とりあえずテイム状態のままにしとこう。
「奴隷契約スキルの使用禁止、あと貴方の罪を全てそこの羊皮紙に書きだしなさい。それから地下の場所を教えてくれる? 奴隷にされてる女性達全員解放するから」
「了解ですご主人様! あ、あれ? なんでこんなことに?」
さぁてさっさと解放して帰ろう。なんか、リオネル様に会いたくなって来ちゃったなぁ。ちょっと、甘えてみちゃったり、しちゃったりなんかしてっ!?
とりあえず、この辺境伯は盗賊さんと一緒に本国更迭しちゃおう。慈悲はないんだよ。