357話・ロゼッタ、雪上訓練、というなのスノボータイムなんだよ
「では、雪上訓練を開始する!!」
シュヴァイデン隊だけを国境砦越えた先の雪原に呼び出し。本日の訓練を始めようと思う。
前方上方に見えるデーバルデ側の国境砦はあえて視界に収めない。
「いや、無理っしょ、現実直視しましょう!」
「無理だよぅ、なんか朝になったら被害が露わになって想定以上過ぎて直視出来ないっ」
「こうやって、お嬢伝説が積み重なってくんだなぁ……見事な焼け野原」
デーバルデ帝国国境砦は消えた。
昨日まではしっかりとその威容を見せつけていた丘の上の砦は今、内部からの爆発で吹き飛んだ瓦礫の群れとくすぶり続ける煙のせいで、廃墟にしか見えなくなっている。
何があったのか理解できてないデーバルデ兵たちは未だに理解が追い付いていないようで、砦前で全員整列して煤けたまま呆然と廃墟を見上げていた。
そんな面々は私達が近づいて来ても戦争どころじゃないようで、普通に近所のおっさん同士の会話みたいに「なにがあったんすか」「いや、俺らもなにがなんだか」「突然物凄い風が吹き上げて味方が吹っ飛ばされたと思ったらもう、こうなってた」だそうだ。
頬抓ってる兵士さんもいたので現実味がまだないんだろう。
さすがに復興手伝う訳にはいかないので、雪上訓練と称して遊ぶことにした。
その間に攻め込んで来ようなんて向こうには考える余裕なさそうだし。
デーバルデ側からだとスキーとかスノボ使ったら凄く楽しそうなんだよ。
常時だと近づいたら矢の嵐が吹き荒れるけど、今日は復興第一みたいなので、私達からは攻め込まないでおきますと告げておけば近づいても襲って来たりすらしないんだよ。よっぽど衝撃的だったんだね。犯人、ここに居ますよ。
ゴーレムをスノーボード型で呼び出し、雪の丘を滑ってデーバルデ砦からライオネル北砦へ。
うっわ、結構速度出る。意外と楽しいっ。
丁度ライオネル北砦周辺が平地になっているので止まるのも問題無いし。なんだここ、めちゃくちゃ楽しい雪遊びスポットじゃん。
「何をやるかと思えば、なんか楽しそうじゃねぇっすかお嬢。俺もやっていいっすか?」
「ゴーレムで作ればいいけど、滑るのもコツがいるんだよ」
「うわぁ、お嬢がなんか子供みたい……子供だった!?」
「そういえばお嬢子供じゃん。今更気付いたわ」
それはちょっと酷くない!?
皆滑ってみたいというのでスノーボードに付いて諸注意を行っておく。
特に転倒には気を付けるように。後頭部を打ったらその時は大丈夫でも時間差で死ぬときもあるとしっかりと伝えてやる。
御蔭で魔法で補助しながら慎重に滑ることから始める兵士達。
意外と慎重ね。というか、初めてのことは慎重にやるように訓練したのは私だったわ。
とはいえ、精神的にはおおざっぱな兵士たちだ。
少し慣れたら調子乗って大技やりだしてド派手な転倒。
一応体は物理結界っぽいので守ってるみたいだったからいいけども、調子乗り過ぎて大怪我しないでよー。
「くそ、あいつら楽しそうに……ガキのお守かよ」
「襲撃されないだけマシだろ、頭の悪い平和思考のライオネル兵どもは放っておけ。これが別の国ならもう砦を落とされていてもおかしくないぞ」
というか、すでにその砦は落ちてると思うんだよ?
「相手がライオネルだから日数を掛けて復興しよう」
よし、半年ごとに砦爆散しに来よう。こうなると他の砦も見に行きたくなるなぁ。相手の砦爆破しまくってこようかな? そしたら復興に労力割かれて攻めてこないだろうし。多分まさかライオネル軍がやってるとは思いもしないみたいだし。
「しかし、一体何が起こったんでしょうか? 隊長、もしかしてライオネル側の破壊工作では?」
「だったら既に攻め寄せて来るだろう。あいつらを見ろ、こんな好機に馬鹿騒ぎしてる連中だぞ?」
だっていつでも制圧できるからこんな状況で侵略する意味がないんだよ?
半年毎に砦復興してればこっちに攻める機会なんてなくなるだろうし。
よし、この方法でいこう。兵舎の方を爆散させなきゃ死亡者は極力避けれるみたいだし。今回死者ゼロだって、逆に凄いけどむしろ安心したんだよ。
「しかし、楽しそうだな……」
「おい、アホなこと言ってねェで瓦礫撤去始めろ」
デーバルデの兵士さんたちご愁傷様。なんで突風なんて吹いたんだろうね。不思議だねー。
あ、しまった、日焼け止め塗ってない。UVカット魔法創っちゃおう。
これで日焼けの心配なく遊べるんだよ。
あー。久々だなぁスノーボード。いつかの同期と行ったのは何年前だっけ?
初めてであまりにも滑れなくて、同期に笑われまくったから翌年までに練習したんだよ。
折角今年こそは、と思った矢先にその同期が寿退社して結局リベンジ果たせずじまい。
その鬱憤を今、ここにっ。ひゃっほーぅ、なんだよ。
「おー、お嬢すげぇ! 横回転してるっ!!」
「止めとけよお前ら、お嬢の真似したら事故るぞ!」
あはははは。なんか久しぶりに童心に帰った気分なんだよーっ。あとで雪だるま作っちゃうんだよ!