349話・ロゼッタ、商店から商会になるんだよ
「と、いうわけで、お店をチェーン店化しちゃおうかと思うんだよ」
「いきなり朝から来たかと思えば、凄く面倒な事思いつきで言ってくれたわね。却下よ却下、これ以上忙しくされたら手がつけられなくなるじゃない」
プライダル商店にやってきたら丁度クラムサージュが暇してたからさっそくチェーン店の話をしてみた。
しかし、あまり良い反応ではない。クラムサージュ曰く、既に限界近いらしく、このままだとブラック企業まったなしなのだとか。ヤバいな。
「新人も来ない、盛況で来客は増える。新商品も増える。人手が足りない。これでチェーン店化? 正気?」
「でも製作所と売り場を分けちゃえばスパイさんだろうと普通に雇えると思うんだよ」
「あー、確かに売り場は卸した商品売るだけだもんね」
「そう、売り場は適当な面子で責任者として経験者を一人置いとけばそれなりに回ると思うんだよ」
「それだと最初はいいだろうけど、結局商品作りが追い付かなくなるのが目に見えてるじゃない」
あ。確かに。最初は店が一つだから問題はないだろうけど、店が増えれば供給が追い付かなくなるか。結局自転車操業になったらどっかが破綻した瞬間に終わっちゃう。
んー。何かいい方法ないかなぁ。
「商会を立ち上げたらどうかな?」
「エルフレッドさん?」
私とクラムサージュが唸っていると、休憩に朝食を取りにやってきたエルフレッドさんが話に参加して来た。
そういえば朝食終わってからこっち来たけど、こっちじゃ今から朝食なのか。
ごめんねクラムサージュ。食事の邪魔しちゃって。
「その辺りは別にいいんだけどね。どうすんの? 商会? 商店とは違うんですか?」
「ああ。商店は個人経営の店だろう? 商会になると傘下の店を持つ事ができるんだ。そちらに商品を卸すことでみかじめ料を取る事が出来るようになる。人の流れもある程度分散するからチェーン店だったか? それに似たような効果が生まれると思う」
「はー、既に下地ができてたかー」
「お嬢の発想に似た発想出来る人いたんだねー、昔に」
「よくわかんないけど発想なら誰でもできるでしょ、何を思いつくかはその人次第だけど。それで、商会になるにはなにか必要なの?」
「確か、年会費をギルドに奉納するんだったかな? 他は興味がなかったので覚えてないな」
まぁ、エルフレッドさんは個人経営出来てれば問題無い人だったからなぁ。
「じゃあこれからちょっとギルド長に聞いて来るんだよ。あ、でもクラムサージュ。私居ないけど商会大丈夫?」
「はい? え? 居ないってどういうこと? 今まで通りヤバそうならすぐ来るのよね?」
「えーっと、北の砦に遠征予定だから、直ぐには戻れないかも? キーリも訓練所にいるし」
「えー、それ私達で対処しろってこと? 肉体的なアクシデントならねじ伏せられるけどさぁ、さすがに貴族関連は無理よ?」
「兵士を呼ぶにも向こうもなかなか面倒らしいしなぁ。せめて貴族の兵士が居れば丸く収まるんだが……」
貴族の兵士……フェイルが、居るわね……いや、でも、さすがに私的用件で兵士を個人商店に入れ込むなんて……
「と、とにかく商会について聞いて来るんだよ、その後のことはそこで考える。よし、行くぞーっ」
「あ、ちょっとお嬢逃げるなーっ!!」
クラムサージュが叫んでいたけど気付かなかったことにして私は商業ギルドへと向かう。
キーリ? プライダル商店に残してきたよ、あの子の今日の仕事はロリータファッションで接客らしいからね。それにしても、ああいう服もこの世界あるのね。ちょっとびっくりだわ。
商業ギルドに着くと、私の顔を見るなりギルド長が呼ばれるようになったらしい。
顔パスなのはいいけどおかしいな。なんでそんな慌てた顔で奥に来るよう促して来るの?
私は別に変なことはしてないんだよ?
「ふぅ。一安心だわい」
応接間にやってくるなりギルド長さんが大きく息を吐く。
「失敬な。私は他人が見てはいけない生物か何かですか」
「ふぉっふぉっふぉ。一般人に会わせてはいけないのは確かじゃの」
え、冗談だよね?
「常識が粉砕されるという意味では会わせん方がええじゃろ?」
うぐ、言われてみれば、なぜか反論できない。
こやつ、やりおる。
「それで今回はなんのようかの?」
「商会を立ち上げたくて。いろいろと便宜を計っていただきたいなぁと」
「ん? おお、そういえばまだ商会立ち上げてなかったの。お嬢のことじゃからもう既に立ち上がっとったつもりじゃったわい。それじゃ立ち上げ方から説明しようかの」
それからギルド長に商会について教わって行く。
ふむふむ。なんかチェーン店に似てるというか、ホテル複数経営と似たようなモノみたい。
簡単に言えば、ギルドの子会社としてさらなる下請けを持てるようになる、みたいなものかな?
必要なのも年会費だけみたいだし、あとはギルドとの打ち合わせが多くなるくらいか。クラムサージュたちに丸投げしちゃうんだよ?