32話・ロゼッタ、魔法の授業が待ち遠しんだよ
ボーエン先生との話し合いを終え、数日後から本格的に習い始める事を決めた私は、ボーエン先生が帰った後にいつもの日課を行う。
なんでもボーエン先生、私と直で話し合ってから先生になるかどうか決めると取り決めしていたらしく、今から正式な書類を書くんだそうだ。
なるほど、今までは仮採用で私のことも生徒として的確かどうか見られていたわけね。やっぱり抜け目ないなぁ先生は。
お父様だけでいいのなら即採用でいいし、どっかの名家から出向で家庭教師紹介されるとかなら即採用で良いんだけど、見知らぬ人物を家庭教師として雇う、とかの場合、そうはいかない。とくにボーエン先生は平民の出と自称してるからなぁ。
侯爵家や公爵家は国王陛下に一報入れとかないといけないんだそうだ。
なんでも王宮や他の貴族邸で問題起こして追い出された奴がちゃっかり居座ろうとしてる時があったりするから、らしい。なので明日から、ではなく数日後になるんだと。もうしばらく待ちぼうけか。まぁいいけどさ。
あーあ、魔法覚えて冒険者ギルドに顔だしたり商業ギルドに登録したりして用心棒兼オーナーとして雑貨屋みたいなの作ろうかと思ったのになぁ。
もうしばらく大人しくしておくべきか。
あー、でも早く自分でお金稼げるようになりたーい。
ついでだ。平民街へ一人で出掛けるのはとりあえずあの街中の臭いがどうにかなってからにしよう。
何しろトイレのことリオネルに伝えて数日後、凄く嫌そうな顔をしたリオネルが、平民街、やばいね……と力無く答えて来たのだ。
確認のために実際兄たちと共に行って来たそうだ。
よっぽど嫌な思い出になったらしいよ。
さすがに王が直接向かうことはできなかったが、宰相と王子三人が揃って市井に出掛けたんだそうだ。もちろん護衛付きで。
結果を言えばあまりの汚さにこれが我が国の市井なのか!? と、びっくりするほどディストピア。だったらしい。
そして宰相が行動を始め、市民街の清掃活動を始めたらしい。
市民街には下水関連もあまりできてなかったらしいから今回の機に一気に近代化させるそうだ。
国庫も自国の事だから大盤振る舞い。
我がベルングシュタット家は市井の実情を王族に知らせてくれたということで報償貰ったらしい。お父様が凄く嬉しそうにしていらっしゃった。
ロゼッタの御蔭だから好きなモノ買ってやるぞー。とか言って来たので、何をお願いしようか考えた結果、商店持つ時に出資して貰うことにしたんだよ。
さすがに大金過ぎるかな? とか貴族が商売などと、なんて言われるかと思ったけど、私の社会勉強がしたいのです。という一言で両親は心臓を打ち抜かれたらしい。
涙を流して「「ロゼッタ……大人になって」」と感涙噎び泣いていた。
いちいち大げさなんだよ二人とも。ちょっと得意になっちゃうじゃない。悪役令嬢への階段一歩前進しちゃうんだよ? ダメじゃん。
「大量の魔法使いを雇って市街を一斉清掃するらしい。その日は市民に一斉休日を設け家から出ないよう徹底させてから掃除するらしい。浮浪者については一時的に隔離施設を誘致してそこに全て押し込むのだとか」
そんなことを言っていたので、それなら浮浪者の大人と子供は別の施設に分けた方がいいと口添えしておく。
理由? だっておっさんたちと女の子一緒にしたらいろいろ大問題になるじゃない。
浮浪者は危ないのよ?
偏見じゃないかって? いいじゃない、目を塞ぎたくなるようなことが起きるよりは別の場所に受け入れた方が問題も起きないし。
と、言う訳で、それを宰相に伝えてくれることになった。
我儘言ってる気がするけど、大丈夫だよね? リオネル様笑顔で了承してくれたし。
浮浪者にまで気使いするなんてロゼッタは優しいねって飛びきりの微笑で言ってくれたのよ。
あれはもう、萌える。太陽のような笑顔でありがとうございました。拝みたくなったよ。
まぁ、そんな感じでトイレ問題は解決に向かい始めていた。
なので、私はその辺りを気にせず日々の日課をこなしていくことにした。
王族が動かなければ自分で魔法清掃しちゃおっかなとか思ってたけど杞憂に終わったんだよ。
ちょっと残念なのは内緒だよ。
魔法の授業はまだやってない。ボーエン先生が正式採用されるまでおあずけである。
ボーエン先生が来るのは王族への報告、密偵調査、王族採用許可発布、お父様からボーエン先生に採用通知送付、とその後に授業開始の日取り決めるからまだまだ先らしい。
宰相さんがボーエンが安全かどうかを徹底的に確認するので数日から十数日掛かるんだそうだ。
さすがにここで魔族とバレるようなヘマはしないだろう。
というか、バレるようなら私の家庭教師とか受けてないよね。
隠蔽魔法とか得意なのかな?
これはもう習っておくしかないんだよ。
魔族の魔法も覚えちゃうんだよ。
リオネッタがまた嘆きそうだけど知的好奇心は抑えられないんだよっ。ヤバいな。