326話・ロゼッタ、会議には二種類あるんだよ※ロゼッタ個人の感想です
「これより第何回だったか忘れたんだよ緊急会議をはじめますっ」
ガレフが街門10周を終えた頃より遡る。
兵士達との訓練終えた私は、リオネル様と共にプライダル商店に向かった。
既に連絡済みだったので用意は整えられており、子供たちは既に食事を始めている所だった。
大人たちの内、クラムサージュ、エルフレッド、ルインク、ボーエン先生はデフォルトとして、今回はお父様たちは居ない。
リオネル様と私とキーリを加えてこの面子で話し合いである。
「まぁ、何回目でもいいけどさー。こっちもこっちで大変な時期にどったの?」
「ちょっと大変な事に気付いたんだよ。しかも精神的なもの」
「精神的、ですか?」
「お嬢の精神的、ねぇ」
「悪役令嬢化してる気がするんだよっ、ほら、ヒロインちゃんと出会ったあの日からなんかこう、悪い子ムーブとかじゃなくて悪人ムーブし始めてるんだよ」
「ん。んん?」
なんでそこで困惑した顔で互いに顔を見合うかな? かな?
「あー、っと、主はんが言うにはなぁ、昨日伯爵の息子さんがいちゃもんつけたやない、アレの反撃気分で伯爵邸忍びこんで重要機密書類奪って来たんよ。それをいまさら後悔してる、というか、そのことが悪人思考や、ゆうことらしいわ」
「あー、確かに、今までのロゼッタなら他人の家に無断侵入なんて……するよね?」
あれ? リオネル様?
「あー、そう言えば、お嬢ってぱるくーるだっけか? アレやる時人ン家の庭とか平気で侵入してるよな?」
「たまに家の中まで侵入してるよね?」
それはないっ。熱血な運動会じゃないんだからそこまではしないんだよ? お茶飲んでるお父さんの頭に鉄アレイ投げたりなんてしたこともないんだよ。
「まぁ、確かに、お嬢の精神的にはそういった行為はあんまししそうにねーかな」
「やってきた伯爵令息をぎったぎたにボコっちゃうタイプだもんね」
「それは確かにそうだな。お嬢ならそのままそいつを路上に全裸放置しかねん」
なんだろう、そっちのほうが悪人ムーブな気が……皆の私に対するイメージってそんななの!?
「だから屋敷に侵入するとか不要な事を、というか、そうか、お嬢が随分と自重した行動をしてる事が異常だ」
「「「確かに!?」」」
いや、待って、おかしいんだよ。
目の付けどころがおかしいよね?
私自重してるよ? ちゃんとしてるよ?
「確かに、結果的にはやらかしてるけど、そもそも向こうの息子が火魔法使って自滅しただけだし、実質的には自重してたのよね。派手にやってたら屋敷全壊しててもおかしくない訳だし」
「じゃあ、悪役令嬢としてのロゼッタが目覚めたと言うのは事実ってことか。お嬢、ソイツは徐々に強くなってるって奴か?」
「どうかな? その辺りはちょっと分かんない。自分でどこか悪人化してる気がするって思えるだけで、ほら、ゲームのロゼッタってばガイウス王子と結託して暗殺毒殺なんでもござれの極悪人だったじゃない。私もそんなことになったらってちょっと不安になってるんだよ」
「お嬢なら大丈夫だと思うが……」
「主はんが悪人になったらウチは速攻で逃げるからな。とりあえず触手に手紙書かせて世界の果てに逃げとくわ」
「お嬢からは逃げられない」
「いややーっ、ウチ死にたくないん。こうなったらやっぱり服従のポーズでハァハァするしかないんちゃうやろか。さ、最初は優しくしてな?」
何をだよ。
「はぁ、折角の会議なのに駄目駄目なんだよ。会議には二種類あって、これは駄目な方の会議なんだよ」
「なんのこっちゃ?」
「クラムサージュだって少しはOLしたんでしょ。会議したことない? 数時間使って私のチームはこれをこの期間でこれだけの事しました。皆さん素晴らしいですね、では来月はこの日に会議します。みたいな子供のお遊戯会会議」
「あー、まぁ会議って大体そんなもんじゃない? 言い方酷いとは思うけど」
「違うんだよ、これは会議だけど会議じゃないんだよ。本来の会議っていうのは私のチームはこんな事をしました、じゃなくて私達のチームはこんな事を別チームとやろうとしてます。皆さんどうでしょうか? 他にもっといい案はありますか? みたいな発展性のあるものが会議なんだよ!」
だから、なんで皆そんな困惑した顔で顔を見合わせてるの!?
「まぁ、お嬢の悪役化ってのは確かに気になりますしね。私の方でも調べてみましょう」
さすがボーエン先生。でもなんでいつもの口調じゃないんだろう? ああ。他の人が居るから猫被ってるのか。
「現状我々では打つ手がないだろう。会議というならば丁度いい、こちらの問題をなんとかしてくれ」
エルフレッドさんから何か問題があるらしい。
「その、ヒロインとやらのことだ。どうもウチの噂をあることないこと言い始めているらしい」
「ありゃー」
「別に常連たちは気にしてはいないが、数人彼女の声に耳を傾けてる奴が居る。正直、このまま数が増えれば暴徒と化す可能性がある」
「うーみゅ。それはさすがに捨て置けないなぁ。とりあえずもうすぐ兵士達が交替しちゃう時期だから、フェイルの部隊に注視して貰おうかなぁ。あと顔面土砂崩れさんにも」
「あの人ヤバいでしょ。あんまり仲良くならない方がいいと思うわよ。足掬われかねないし」
「紳士さん、変人だもんなぁ。まぁでも大丈夫っしょ」
あの人は結構言葉とは別に優しい爺ちゃんって感じなんだよ? 信用は出来なくても信頼はできるから充分使える人材なんだよ。