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31話・ロゼッタ、攻略対象最接近

「貴賎は問いません。問題はしっかりとした知識を持ち私に魔法を教えていただけるかどうか。でも、平民となれば魔法を使える方は少ないでしょう? 先生は凄いのね。と単純に感心しましたのよ」


 実際、魔法の教師が平民だと聞いた時は驚いた。

 しかも冒険者かと思えば一般人なのだとか。

 冒険者だとすれば依頼として引き受けたのだと分かるし、魔法が使えても冒険に必要だから覚えたのだと分かる。

 でも一般人で魔法が教えられるほど上達しているとなれば、完全な趣味人だ。

 滅多に居る筈も無くわざわざ貴族の小娘に教えてやろうなんて酔狂な平民はまずいない。

 だからいろんな意味で感心したのは本当である。


「そりゃぁどうも。まぁ、言った通おり、僕は平民出なもんで、言葉遣いはあまり良くありませんが、それでも良ければ、魔法をお教えいたしましょう。僕が使える魔法は風と植物ですが、他の属性も教えるだけならできるので」


 ほぅ、得意分野以外も教えられるとな? なんて好都合。まるで私に魔法を教えるために生まれたかのようなお方だわ。

 運命的でしてよ、恋に、落ちてもいいかしら?

 あ、でも家柄的に釣り合わないか。さすがに平民を侯爵家の家督継ぎにするのはマズいわよね?

 ぼさぼさ頭だけど素材は最高なのにぃ。仕方ないわ、エルフのお兄さんと掛け算するしかないわね。腐腐腐の腐。


「まぁ、それは頼もしいわ。さっそく、と言いたいところですが。その前にお名前をお聞きしてもよろしいかしら?」


「ああ、そう言えば自己紹介してませんでしたね。お、僕はボーエン・マクレガー」


「ボーエン・マクレガー……マクレガー先生、いえ、ボーエン先生の方が言いやすいですわね」


「あれ。名前呼びになるの?」


「私はロゼッタ。ロゼッタ・ベルングシュタットと申しますわ」


 自己紹介を終えると、リオネッタがお茶を汲んでくれる。

 飲んでいいのかい? と驚くボーエン先生。

 当然、何の問題もないのでどうぞと促す。


「ふはぁ、こりゃぁいい茶葉だ。初めてかも」


 お口に合ったらしい。

 舌で口元を舐め取るほどに気に入ったボーエン先生はもう一度ずずっと紅茶を飲む。

 ほっこりする顔がなんか癒されるわぁ。

 ああ、なんかこうして二人でお茶してるの、いいわね。

 この人が未来の旦那だったらゆったりした人生を送れそうだわ。


「それは良かったですわ。ではお茶を飲みながら聞いて下さいまし。今後何を行いたいのかお伝えしますので、それを加味した教鞭を取っていただきたいのですわ」


「了解です」


「あと、私とリオネッタしか居ない時に敬語は不要です。一人称も無理に僕と言わずともよいですわ」


「え? いいのか? 人間の貴族ってのは結構そういうの煩いって聞いたんだが……」


 人間の貴族? ……ん? ちょっと待てよ、なんか、この名前聞き覚えあるぞ。

 あるぞ、っていうか、確か偽名だ。思い出したッ。

 ヒロインちゃんと初めて会った時に告げる偽名だよ!?


 こ、この人、まさか、あ、アレか、アレなのか!?

 やっべぇ、マジか。こんなことあんの!?

 まさかの攻略対象が悪役令嬢に接触して来ちゃってるんだけどどうしたらいい? 状態ですよ!?

 夫だったらいいのに、とかそりゃメイン攻略対象の一人なんだから美形で素敵な男性なの当然じゃんっ!? なんで今まで気付かなかったの私!


 ボーエン・マクレガー。

 12人いる攻略対象のうち、唯一人外である人物だ。

 魔法の扱いにたけた魔族と呼ばれる種族で、魔王陛下の息子様である。

 つまり、魔族の王子。平民じゃないんだよ!? なんでこんな所に居るんだよ!?

 悪役令嬢に魔法教えてる場合じゃないでしょう!?


 にしても、そうか、魔族だから人間と同じように年を取らないのだ。

 私が幼くともゲーム時の年になろうとも、彼はずっとこの姿のままなのである。

 今はメガネをしてるから分かりづらかったけど、メガネ取ったら結構鷹の目といえるきっつい眼光で睨んで来るのである。

 理由は近眼だから目を細めてるだけって物語中盤で分かるんだけどね。

 そっか、どうでもいいけどこの世界ってメガネあるんだ。


「ん? なんだその見知った顔に出会ったような顔をして? 俺とあんたは初めて会う筈だが?」


 そう言えば作中でも最初は一人称、僕呼びだったのに、親しくなると俺と呼びだしたんだった。

 もともと俺呼びの一人称だったのを人間世界でゆったり過ごすために隠れるため、人畜無害さをアピールするために僕呼びしてたんだっけ。

 ああ、でも、攻略対象だと分かると釣りあいも取れるし、このまま結婚エンド狙うのも……ダメ、ダメよロゼッタ。私にはリオネルという婚約者がいるんだから!


「あ、いえ、何でもありませんわ。それでは、説明いたしますので少々お時間頂きますわね」


「ああ」


 私は脳内で想定している構想を話して聞かせる。

 初めは小娘の妄想だと呆れた顔をしていたボーエン。しかし、話が進むごとに、真剣さが顔に出て来る。

 質問が度々入り始め、より詳細な説明を求められる。

 魔族の彼としても私の予定する魔法授業はなかなか斬新で気になるようだ。


「大した御自信だ。魔法の基本は最初の授業で覚えること前提じゃないか。それで本当にいいのかよ?」


「ふふ、既に概要はわかってますのよ。あとは実際に使っている人から簡単なレクチャーを貰えれば魔法使用に関しては問題ありません。使えるようになったならば口頭で基礎を学び、実戦は応用。後はその辺りについて秘密にしていただける先生であればいいのです」


「はは、それが本当なら先が怖いこった」


 そう言いつつも凄く楽しそうじゃない。ヤバい、ボーエン先生との相性抜群かもしれない。

 う、浮気じゃないのよリオネル様。

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