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316話・グランザム、ここまでするとか聞いてない・2

SIDE:グランザム


 昼休憩が終わった。

 再び同じ場所に姿を隠して見学しているのだが、早い。

 兵士達の集合時間が早すぎる。


 なぜまだ昼休憩中だというのに訓練所中央に兵士達が集合しているのだろうか?

 ロゼッタ嬢の姿もない。なのに兵士たちは訓練再開を今か今かと待っているようだった。

 既に何人かは準備運動をし始めている。


 そして昼休憩終了の鐘が鳴ると、ロゼッタ嬢がやって来る。

 彼女の姿が見える直前には計ったかのように整列済みの兵士達。軽く戦慄を覚える光景だった。


「点呼ッ」


 凛とした声が響く。

 トラックへとやって来るロゼッタ嬢から放たれた声に、思わず背筋を伸ばしそうになった。

 ああいう女性の声は苦手だ。妻の怒った時の口調を思い出してしまう。


「フェイル隊21名、確認完了!」

「ヘロテス隊21名、確認完了!」

「シュヴァイデン隊21名、確認完了!」

「アマルガム隊21名、確認完了!」

「以上、84名、漏れ無し、点呼完了!」


 部隊長が口々に告げ、代表するようにヘロテス隊長が締める。


「では午後の訓練を開始する。武器個別訓練一時間、散開」


「「「「サー、イエスサー!!」」」」


 あの掛け声はなんなんだ?

 宰相に視線で問うが宰相も分かっていないらしい。

 兵士たちは各々得意武器の訓練を始めているようで、剣を扱う者たちは剣と盾を持って訓練を……なんで殴り合っている!?


 槍を持つ者たちは槍衾の位置把握、をするかと思えば曲芸を始め、弓部隊は駆けまわりながら弓を射始める。

 遊んでいるようにしか見えないが、皆真剣だ。


「凄いですね父上、彼ら走りながら矢を放ってますよ」


 いやどこが凄いんだ? それをするなら馬に乗った状態でやればよかろうに。


「槍振り回しながらあんな動きされたら対応に苦しみますよね」


 それは確かに、初めて見る時は面食らうだろうな。


「斧、投げちゃってますよ」


 ハチェットと間違えてるんじゃないのか?


「フェイル隊長たち、槍じゃなくて旗で訓練してるのなんでなんですかね?」


 意味がわからなさすぎる。

 曲芸大会はしばらく続き、休憩をはさんで各部隊に分かれてチーム戦。

 1部隊対1部隊を二回するのかと思えば、4チームが一気に対戦するようだ。

 手に持った武器は先程の訓練で扱っていた武器。


 そして鋳潰した矢が無数に乱れ飛ぶ大合戦が始まった。

 これは本当に訓練なのだろうか?

 弓部隊は一回の射撃に二つ、三つの矢を放ち、槍部隊は槍を回して矢を弾いて行く。


 怒号飛び交う戦場では絶えず兵士達がぶつかり合い、腕を斬られれば片腕で闘い、足を斬られれば這って闘う。

 まさに戦場を想定した泥臭い闘い方だった。


「わ、儂の、兵士……」


 思わず漏れ出たのは仕方ないだろう。

 ただ兵士をやる気にしてくれるだけでよかったのだ。

 なんだこの狂戦士部隊は?


 戦争が終わると魔法訓練。

 殆どがその場で魔力を感じ取る作業をしているのだが、一人の兵士が土に魔力を送り込み、のっぺりとした馬を作りだす。

 兵士が、ゴーレムで馬を? しかも乗るのか!?


「ちょっと不格好ですが、戦場で走れる馬としては優秀ですな。何しろ馬一頭が不要になります。食料、ブラッシング、体調管理。その全てが要らないのに高速移動手段があるというのはそれだけで有利になりますな。あの魔法、輜重時にも使えないでしょうか?」


 宰相、違う、そうじゃない。

 兵士の数人が同じようにゴーレム馬を作りだしたことで気付いた。

 あの中には魔法が不得意な兵士も多かった筈だ。

 なのに、皆が魔法でゴーレム馬を使おうとしている。つまり、魔力が少なくともゴーレムを作りだす方法が既に人に教えられるだけの技術として確立しているということだ。

 ロゼッタ嬢、お前さん、一体どれほど隠し玉を……


「休憩後は中規模戦闘だが、今回はくじ引きを用意した。各自休憩終了後、これを引いて赤か白に分かれておけ」


 そして休憩後、各部隊関係なくごちゃ混ぜになった兵士達から代表と軍師が選ばれ二つの軍による中規模戦闘が始まった。

 いやいやいや。なんで部隊長じゃ無い奴が指揮し始めとるんじゃ!?


「なんと、これは高度な読み合い!? 魔法で山を作って逆落とし!?」


「凄い、落とし穴で対抗した。水攻め!? どっから水が!? 逆落としの兵士達が浮いてる!?」


 もはやただの合戦訓練じゃなかった。下手したら死人が出かねない程の高度な軍略。しかも魔法でわざわざフィールド変化までさせての刻一刻と変化する地形を使ったトラップまで行う意味不明の戦争だった。こんな戦略使われたら他の国の軍など翻弄されるままで敗北するだろう。

 ロゼッタ嬢は我が国を侵略国家に変えるつもりか?


 そして最後の一時間。

 まさかのロゼッタ嬢相手に全兵士が全力で闘いに向かうというレイド戦。

 先程まで獅子奮迅の狂戦士だった兵士達が面白いほどに宙を舞っては倒れて行く。


 え? ロゼッタ嬢、こんな強いの?

 いや、リオネル。すごいすごいじゃないよ!?

 ここで空舞ってるのか地面で気絶してるのって我が国の国軍だからな。彼らが負けたらこの国終わるんだからな。なんで一人で軍を相手に勝ててんの!?

 ロゼッタ嬢がその気になったら……国が滅ぶのでは……あ、あばばばばば。

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― 新着の感想 ―
あっ ついに国王が不定の狂気を発症したよ
[一言] あっ…そっかァ…城の場合はイッチャン上が王様だから…(._.`) でも気をしっかり持って!王様だからネ!( b゜³゜)b゜³゜)b゜³゜)b
[良い点] 久しぶりの正気度チェックなんだよ! 懐かしくて?笑ってしまいました
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