309話・ロゼッタ、そろそろ得意武器を決めるんだよ
午後の訓練。
最初は武器種別訓練なんだけど、それなりに動けるようになってるから次の段階だ。
「さて、最初は武器種別訓練だ。が、昨日で大体の武器に関してはある程度修了出来たと思う」
全員、物凄い熱量で武器の扱い覚えてたからなぁ。終わった後も個人個人でいろいろやってるみたいだし。
「ゆえに、本日からは武器別訓練を開始する」
「武器別……ってぇこたぁ、俺達の武器が固定されるってことですかい?」
「もちろん週に一回は全ての武器を使って訓練を行う日を設けて他の武器の使い方を忘れないようにするわ。それでも貴方達の中で役割に合わせた武装がある。まずはフェイル隊から。ガレフ、リンクル、バートン、レミント、ブレン、ロンベルト、ムンガスは剣。カシム、リックマン、アーベス、ケーレミン、デンドロリッチマンは弓、ブライアン、ゲレ、チャーリーは槍、ブラスパー、ウィンブルはガタイが良いので斧を使え。フライク、マーカム、パッサムは魔術が向いている。あとフェイル。貴方には特殊武器を持たせる。扱いは槍の延長だ。それから次はヘロテス隊……」
と、彼らを剣、弓、槍、斧、その他へと振り分けて行く。
「通常は今まで習った訓練をしておけ。私はどこかの武器に顔を出し新しい動きを教える。それを再現できるかどうかはお前達しだいだ。しかし、私とて人間である。同じ人間が行う行動がお前達に出来ぬ訳がない。ついて、これるか?」
ごくり、皆が生唾を飲む。それは恐怖から来るものではない。ぶるりと震えた兵士達の眼にはやる気が満ちている。ゆえに、武者震いである。
まずは剣の訓練にお邪魔する。
普通に素振りしていた面々を集めて格闘と剣術を合わせた喧嘩殺法を教え込む。
だって剣術だからって剣しか使っちゃいけないってことはないんだよ。
剣で鍔迫り合いになったら近づいた相手の顔面に拳を打ち込んでもいいし、相手の腹にヤクザキックして距離を離しても良い。
剣にばかり眼を向けてるのは剣道などのスポーツだけでいい。兵士っていうのは結局相手と殺し合って国を守る者だ。
だったら相手の武具に合わせてやる必要はない。ようは勝てばいいのだから。
魔法も使って隙を作ってあらゆる方法で相手の調子を崩す。そして自分に有利な状況に変えて生存を勝ち取る。
初めこそ、剣以外の動きに戸惑っていたものの、少し慣れたらもう後はストリートファイトが始まってしまった。
いや、訓練なんだよチミら。なんで本気で殴り合い始めてるの!? 殴り合い宇宙、始まっちゃうの?
「てめぇ本気で殴ったな!?」「親父にもぶたれたこと無いのにっ」「若さゆえの過ちか」とかなんとか口々に罵りながら殴り合い始まっちゃったので放置して槍の訓練チームへと向かう。
「あー、槍チームに教えるのは曲芸だ。槍を使った素早い動きを教える」
中国雑技団あたりがやってそうな動きを教えて行く。
槍を支えにして体を持ち上げ弧を描くようにして空中を移動し着地。
さらに槍を回転させたり、槍ごと前に宙返り捻りを行いながら移動などなど、動きながらも攻撃する術など曲芸を披露していく。
「いやいやいや、なんだその動き!?」
「槍なんて槍衾やって前進するだけじゃねーんですか!?」
「すっげ、槍持ったままとかすっげ、絶対自分に刺さるって」
無双系の武将さんとか普通にこれぐらいやってたから兵士達だって問題無くできるんだよ、たぶん。
怪我をしないようにと告げて弓チームに向かう。
「弓は二つ。まずは本数を増やす撃ち方、これは双射なんだよ」
と、矢を二つ纏めて放つ。
離れた藁人形二つにしっかりと刺さった。うん。藁人形も事前に作っておいたんだよ。キーリが。
「それから弓での近接戦闘だ。木製弓は使うな。接近された時はすぐに折れる。せめて襲って来た敵を返り討ち出来るくらいの技量は持っておけ」
鉄の弓を渡して弓で行う近接戦闘を披露して行く。
「いやいやいや、弓を打撃武器にってだけでも驚きなんですが!? なんで接射まで行えるんですか!?」
「こうやって動きながら撃てるようになれば撤退しながら後方に矢を放ったり、逃げる敵を追い掛けながら矢を放ったり出来るでしょ?」
弓部隊が固定砲台の時代は終わったんだよ。時代は今、動ける弓士を必要としてるんだよ多分。
さあ、次は杖こと魔法部隊だ。
「魔法部隊は杖による棒術、それと遅延魔法を覚えて貰うんだよ」
「遅延……? 遅く唱えるんですかい?」
「詠唱を終えた魔法を待機させておくだけだ。周囲に漂わせておけば、複数魔法を同時に放つ事も出来るだろう? あるいは時間差を付けて連続で打ち込める。永遠に終わらないガトリング魔法弾と言う訳だ。」
「えぇー!?」
「よし、次は特殊武装組だ。個別訓練になるからしっかりと覚えろ」
こうして、武器別訓練を教え込んで行く。
皆斬新だったようで戸惑いながらだったけど、直ぐに動き始めてたから問題はなさそうだ。多分幾らもしないうちに出来るようになるだろう。