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304話・ロゼッタ、お店に顔を出すんだよ

「あー、づがれだぁ」


「あ、お嬢お帰り。お帰り……? でいいんだっけ?」


 プライダル商会に戻って来ました。

 出向かえたのは珍しくカウンターに居たクラムサージュ。

 気のせいかだいぶくたびれた顔をしている。


「どったの?」


「ヒロインちゃんがね、ふふ、転生者の誼でまけろって……」


 来てるのかヒロインちゃん……


「なんていうか、たくましいというかクレーマーというか、アレがヒロインのゲームとか絶対にやりたくないわね。逆にストレス溜まりそうだし。あんまし気に入らないこと言い過ぎるとブレーンバスターとかしてきそうだし」


「でも、彼女はヒロインなのよねぇ。誰狙いで行くのかしら? 私は邪魔する気はないんだけど、向こうから突っかかってきそうなんだよ」


「全くよね。今ん所でこの世界と向こうは違うからってことでお客様は神様ですとか抜かしてきたあの娘を追い返しといたけど、悪評囁かれると面倒よ?」


「それは大丈夫でしょ。もしもごねるようなら一回だけよ。って言って新作プリンを……いえ駄目ね。おそらくあいつらと一緒でしょうからこっちが折れたら調子乗って際限なく来るタイプよね。徹底抗戦しかないかしら?」


 思わず爪を噛んで唸る。

 OL時代、ギャル風の新人さんは怒るたびに言い訳してくるのだけど、そこで一度でも仕方ないわね今回だけは許すわ。なんて言おうものならあいつら調子乗ってこの前はこれで許してくれたじゃないですかー。とか、一度だけなんて聞いてないしー。とかやだー、小柴さんそれパワハラーとか言って来るんだよ。


 自分が有利だと思うともっと有利な条件手に入れようとどんどん厚かましくなってくる。

 しかも既に享受している物を取り上げようとすると横暴だとかこの人極悪人ですよーとかある事ない事周囲に話しだすのだ。


「うん、毅然とした態度でお断ろう」


「初めて聞いたわ、お断ろう。そうね。私も同感、ああいうタイプって下手に出るとこちらを格下と位置付けちゃうから手に負えなくなるのよねー、私も就職した時先輩たちがそういうタイプで……うぅ、嫌な事思い出しちゃった」


「どうしても無理そうならギルド長に告げた方がいいかもしれないわね」


「でも、一応同じ転生者だし、あまり無下にしたくもないのよね」


 ヒロインちゃんがどんな性格なのかは私には分かんないけど、実際に遭いたくもないのでクラムサージュには矢面に立って貰おう。エルフレッドさんとルインクさんにもフォローは頼んどくんだよ。あとお母様にも。


「それで、兵士の方どうだった? 意識改革成功したんでしょ?」


「あー。うん。まぁ。成功っちゃ成功なんだけど……しすぎた?」


「あぁ……」


 なんなんだよぅそのやっぱりって顔は?


「確か、一昨日来た時は駄目だこの国の兵。とか言ってなかったっけ?」


「だからちょっと言葉を尽くしてみたんだよ」


「言葉を、ねぇ」


「厨二病っぽいなんか熱くなりそうな言葉……火を付け過ぎたんだよ」


「そう言えば、朝方遠くから声が聞こえたわね」


「うぐぅっ!? まさか平民町まで!?」


「あー。その顔はやっぱり。エレインが飛び起きたーって世間話してたからもしかしたらと思ったのよね」


 嵌められた!?


「で、どんな感じでやり過ぎたの?」


「とりあえず言葉だけでウォーモンガー状態。下手にガンホーとか教えたら毎秒ガンホーガンホー言ってきそうな感じ?」


「うわーお。普通言葉だけでそんな事にはならないと思うんだけど。魔力でも乗せたの?」


「そんなバカなことはしてないんだよ。王城で魔声で魅了とか捕まって処刑されても文句言えないんだよ?」


「ごめんごめん。でも目的が与えられただけでそうなるって。目的無くて腐ってただけってこと?」


「かもしれないわね。陛下が何かしら指示出ししてたわけでもないみたいだし。12人いる部隊長も昔からの伝統で指名制らしくて、集まったりすることもないんだって」


「どういうこと?」


「ようするに部隊毎の情報共有とか、目標がないんだよ。だから日々を適当に仕事して、皆疲れたねー。で終わってるわけ」


「あー。つまり学校の部活動みたいな奴ね、あ、いや、同好会のほうかな」


 大会とかの目的がある分部活動の方がまだ頑張れると思うんだよ。

 毎日を訓練で過ごして給料貰うだけの日々。半年毎に勤務地が変わるとはいえ、代わり映えの無い日々の中でやる気は削がれ、ただ内容をこなすだけの存在になって行く。ブラック企業かな?


 彼らには目標が必要だったのだ。

 自分が奮起するための理由。たった一つだけで良かった。自分が何のために兵士をやるのか、それを確認できる目的があれば、頑張れる。

 だから、それを認識させた。

 そのつもりだったんだけど、思いの外効き過ぎた。


「明日から大丈夫?」


「まー、なんとかやってみるんだよ。こっちはどう?」


「ヒロインちゃん以外は大して問題はないかな。最近は森の方に子供たちだけで遊びに行ってるのが心配だけど、全員レベル200越えてるからなぁ。むしろ手を出した相手が肉塊にならないか心配よね」


「まぁ、子供たちは帰ってこなかったりしたら私が探しに行くんだよ。何かあったら分かるし」


「そこは頼りにしてるわ」


 うん、この状態なら商会についてはしばらく放置してても問題なさそうなんだよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >今ん所でこの世界と向こうは違うからってことでお客様は神様ですとか抜かしてきたあの娘  その手の客相手に、 「おお神よ、何をして地上に落とされたのです?」  なんて返す作品があって、笑かし…
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