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303話・ロゼッタ、今日はここまで、なんか疲れたんだよ

「本日最後の訓練は団体行動だ」


 全員を再び集めて宣言する。

 にしても、ボロボロになってるのに眼だけギラギラしてて怖いなぁこの兵士達。

 いや、私が焚き付けたせいなんだけども。


「大規模行動と聞きましたが、おそらく84人全員での訓練ですよね、相手は誰です?」


 なんで闘い一辺倒なのかな? すでにウォーモンガーが出来あがってたんだよ。びっくり。


「ふっ。気合十分な所悪いが、貴様等はまだまだ軍としてすら生温い。ゆえに最後の一時間は骨休めを兼ねてしばらくは行軍とする」


「行軍?」


 ざわつきだす兵士達。

 てっきり全員で何かと闘うんだと思っていたんだろう。あるいは最初にやったように私対全員だったりするのかな?

 でも残念。皆がそれやっても結果は分かり切ってるんだよ。


「まずは全体行動を合わせて貰う。なぁに簡単だ。皆一定の距離を開けて同じようにブレなく動くだけだ。簡単だろう」


 現代でも部活であるんだよね。集団行動。確か大会もあったよね。

 全員で歩くことで様々な文字作ったり、左右に別れた後中央でクロスするように歩いたり、全員が雑多な動きをしながらも誰もぶつかることなく移動したり。


 軍としての動きとなれば、やはりこれをしないとね。

 どっかの国みたいに手の動きも足の動きも揃えて顔横に向けて敬礼しながら一糸乱れず歩けみたいなムチャ振りはしないんだよ。でもアレ揃ってるのはある意味凄いよね。


 とりあえずマーチングバンドでやりそうな基本的動作をやって、目標は立体交差だね。

 それが出来るまでは行軍練習なんだよ。

 と、思ったんだけど、最初の行軍だけで先が長そうだって思わざるをえなくなった。


 だってあいつら、全然揃えられないんだもん。

 だから、前後の間隔だけじゃなくて左右も均一だって言ったじゃん。

 なんで真っ直ぐ歩くだけで隣の人と接触するんだよ!?


「うおお!? なんで当たるんだよお前!?」


「ざけんな! お前が寄って来たんだろが!?」


 と、罵り合いながらも行軍する兵士達。そこかしこでぶつかっている。

 あっ、やりやがった!

 先頭近くの人が蹴躓いた。

 倒れたことで後の奴が避けようとして隣を押してドミノ倒しが始まった。


 瞬く間に倒れて行く兵士達。

 おーい、歩くだけだよ? ただ歩いてるだけなんだよ?

 なんで全滅しちゃうの!? 鎧付けて無くて良かったよ、本気で!


「ど、どうなってんだよ畜生!?」


「あ、歩くだけだろ? なんで俺ら全員倒れるんだよ!?」


 頭を抱えさせてよろしいですか?


「あはは、お間抜けさんのオンパレードや。ほれ皆見てみー。主はん頭抱えとるよー」


 それからも何度も歩かせた。

 まだただ前に真っ直ぐ歩くだけ、という簡単な動きだ。

 それを四部隊二列づつで行っている。

 それだけの行軍なのだ。

 しかも急がせてる訳ではなく普通に歩かせてる。

 なんで、全滅しちゃうの!?


 これ、敵国と闘う状況なら我が国は城から出発時点でドミノ倒しで全滅なんだよ!? 国を背にして闘うどころか国に足を取られて壊滅ってるんだよ!?


「あ、歩くだけなのに、なんでこんな事に?」


 兵士達もさすがに想定外らしい。

 いつもって集まったりはするけどその状態で移動したりはしてないんだろうか?

 でも昨日部隊ごとに走りだした時は凄く揃ってたんだよ?

 

「あ。そうだ。指揮だ。指揮者を立てるのはどうですか!」


 兵士の一人がそんな事を言って来た。

 いや、この位の事で指揮者?

 んー、いや、むしろ初心者だしそんな人物がいた方がいいのか。


「仕方ない、それを採用しましょ」


「ガレフ。お前全体見るのやれてたろ、指揮頼む」


「え? 俺かよ!? まぁいいけどよ」


 と、いうわけで、ガレフは兵士達の行軍から一人突出してトラックの真ん中から行軍を見る係になった。

 折角なので土を魔法で突出させて高台作ってあげよう。

 ここからの方が見やすいでしょ。


 ガレフが行軍を一度見る。

 そして困ったような顔をして私に視線を向けて来た。


「あの、これ……」


「それが貴方達の現状よ?」


「おぉぅ。こりゃ確かに頭抱えたくなんぜ」


 虚空を見上げて脱力するガレフ。

 うん、分かるよ。だって揃ってないもんね。

 皆あっちにふらふらこっちでごっつんこしちゃってるもんね。


「ええい、やるぞ! 全員傾聴!!」


 そこから、ガレフの指示が始まった。全体を見きるにはまだ程遠いが、俯瞰のやり方は早くも覚えたようだ。

 後は慣れだね。意外とこの指揮者させるのがスキルアップには丁度良いかもしれない。

 交代で皆にやらせてみようか?


「ふらついてんじゃねー。ただ真っ直ぐ歩くだけだぞ! トラヴィス。右に傾き過ぎだ! リンクル、ブラスパーとの距離が縮まってるぞ! パンダフぶつか……あぁ~」


 だが残念。さすがに彼でも瞬時に的確な指示など出せる訳もなく、ふらついたパンダフ君が隣とぶつかりドミノ倒しが再発。

 ほんと、鎧着てないからいいけどさ、これで全身武装してたら壊滅的打撃受けるからね君等。

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