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299話・ロゼッタ、中規模戦闘を行うんだよ?

「よし、チーム戦はここまで、各自10分の休憩を行う」


 この世界だと10分と言われても多分分からないだろうけど、さっきから休憩は10分を連発してるからどれぐらいの休憩かはわかってるようだ。

 食堂に向かい水を貰いに行く者、その場で倒れ込み疲れを癒す者。そして、私の元にやって来る四人組。と。隊長さん達、休憩の時間なんだよ?


「総司令官、先程の指令に関してなのですが!」


 目が怖い目が怖い目が怖いっ!? 充血した眼を見開かないでっ。

 なんで全員興奮気味なの!?


「さっきの、私の指示が何か?」


「ぜひ、我々にご教授ください! どうすればあれほど的確に、離れた場所に居る味方に指示を出せるのですか!?」


 ああ、そういうことか。

 OL時代よく新人さんに言われたなぁ。なんでそんな的確に指示出来るんですか、とか見てないんじゃなかったんですか!? 怖い。とか言われちゃうんだよ。


「では後ろを向いてみて。貴方たちには何が見えるかしら?」


 言われ、四人は後を振り向く。


「兵たちが、戻ってきてますが?」


「変わった所はないように思います」


「アレはサボってるのではなく休んでるんです……そういうことではない、ですか?」


「すいません、分かりません」


 四人もいて何を見てるんだか。

 まぁ、こういうのはちゃんと伝えないと分かってくれないからなぁ。


「何が見えるか、と聞いたのよ。つまり、三人の兵士が寝転んでいて体を休め、五人の兵が食堂から会話しながら戻ってきている。八人の兵は既に定位置に戻って次の訓練が始まるのを待っている。最低でもこの位は見てほしいわね」


「え? あの、普通のこと、では?」


「ええ。普通の事よ。ぱっと見た一瞬でその全てを把握すればいいだけ。周囲を見るのではなく俯瞰する。目に映る範囲で動く全ての事象をしっかりと認識し、何処で誰がどんな事をしているかを確認しながら次にどんな行動を起こすか予測する。味方の兵士が危険になっている、あるいはこのままだと孤立するなどの可能性があれば即座に指示を飛ばしてフォローを入れる。それだけのことよ。私がしていることは」


 と、言ってみると、四人とも口を開けたまま私を見て固まっていた。


「……どうしたの?」


 あれ? 私またなんかやらかした?


「いえ、その、私達ではその域に達せそうにないのですが?」


「あら、私だって最初は無理だったわ。でも意識して俯瞰しながら見ることを心がけていれば、その内自然と見れるようになるわ。そしたら後はその俯瞰で手に入った情報を整理して予想して的確な指示を行うだけでいいの。だから貴方たちがやるべきことは視界に入った情報全てを見るように心がける事。今はそれでいいのよ」


 四者四様。困った顔をする者もいれば何か納得した顔をする者もいる。


「折角だし、次の中規模戦闘、意識して動いてみなさいな」


 皆、納得行ったような行かないような顔である。

 さて、私の言葉だけで俯瞰能力を覚えられる人がいるかどうか。

 とりあえず、質問に答えてる間に休憩が終わったんだよ。


「ではこれより中規模戦闘を行う。全員、自分の兵装は持ったか? 二部隊合同で相手チームと闘って貰う。つまり42対42の合戦だ」


「つまり、さっきの規模がデケェ状態ってことですかい?」


「ええ。簡単に言えばそうね。でも折角中規模なんだから、五人一組を作ってその中でリーダーを決めなさい。それと、今回は……フェイル隊とヘロテス隊がチームを組んで。もう一チームはシュヴァイデン隊とアマルガム隊ね。さっきは隊長が司令官をやったけど……ガレフ、それとトラヴィス。貴方たちが各チームの司令官よ」


「「はっ!?」」


「作戦立案、その他もろもろ、貴方たちだけで組み上げて皆に伝えなさい。皆も全体の行動は二人の指令に従う事。例えどう見ても失策だろうと思っても従いなさい」


「さ、さすがに二人に指令は荷が思いのでは!?」


「あら、それはおかしな話だわ。指令なんてものは誰が適性あるかはわからないのだから、まずは一人ずつ持ち回りでやって、適性者を見て行くつもりよ。見込みがあるなら部隊長昇格も視野にいれる、つまり、今の部隊長四人もうかうかしてたらただの兵士に逆戻りよ?」


「「「「なっ!?」」」」


「ああ、それと、司令官になった二人は任意で軍師を任命出来るわ。軍師は自分以外で献策したり意見を言ってくれたり、変な軍略について駄目出しをしてくれる人物よ。今なら部隊長の誰かを指定すればいいかしら? あるいはあの人なら軍師を任せられる、という人物がいればその人を指名していいわ。大局的な軍略は司令官と軍師が決めなさい。軍師は駄目出しや献策はできるけど、その作戦を使うかどうかは司令官だけが決定出来るわ。つまり、軍師に駄目出しされた作戦でもどうしてもやりたければそのまま指令として皆に伝えて構わない、ということね。そして兵士である皆はその指令に不満があっても勝手な行動はせず司令官の指示に従いなさい。例えそれが負けると分かっている作戦でも、よ」


「負けると分かっているのに、従えと?」


「ええ。それが軍でしょう? 貴方も自分の指令を全く聞かない部下が勝手したせいで自分の軍略が破綻したらどう思う? 折角勝てる筈の作戦だったのに、自分を信じてくれない部下のせいで敗北することになったら?」


「それは……」


「この中規模戦闘では自分の役割を全うすることを念頭に動きなさい。兵士には兵士の、軍師には軍師の、司令官には司令官の役割がある事を覚えるの。全ての役を自分で行えばどんな気持ちで兵が動くのか、どんな思いで指令をだしているのか、それが分かるようになるわ」


 まぁ、簡単に行くとは思ってないけど、上と下の動きを体験することで見えて来るものが出て来るんだよ。

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