257話・???、水鎮祭バトルロワイヤル5
SIDE:パルボラ
ライオネル王国で水鎮祭やるらしい。
ウチの馬鹿王子がワクワクしながら言って来た。
だからなに? と答えてみたのだが、残念ながら馬車に乗せられ、隣国であるライオネル王国に連れて来られてしまった。
街門の入り口で今日は水鎮祭だからと兵士達に止められたゼルディス王子。
むしろそれに参加しに来たんだ! と少年のようなキラキラした瞳で告げれば、気の良い兵士は水鉄砲の購入方法と水鎮祭イベントへの参加方法を事細かに教えてくれた。
なるほど、今までと違うと道中楽しげに告げていたのはこれが理由か。
有名店でバカ高い水鉄砲を手に入れご満悦のご主人様を見て思わずため息が漏れる。
全く、何をしているんだか。
「何を言う。お前だって乗り気じゃないか。水鉄砲二つも買いおって」
「小型の水鉄砲ですから、二つ買ってもゼルディス様の銃の方が高いですよ」
そんな軽口をたたき合いながら、中央広場に向かい、受付を済ませる。
小さなプレートを三つ貰い、説明を受ける。
曰く、このプレートに描かれた文字が見えなくなったら失格らしい。
隠せる場所に設置するのは反則、自分の身につけておく事。他人のプレートは奪ってはならない。等の諸注意を受けた後、開始時間まで街中を自由に見回る。
説明を聞きはしたものの、どうにも穴があるように思われる。
と、思っていたのだが、逆だった。
あえて失格に付いてなにも言ってなかったのだ。
つまり、失格しても水を撃って参加者をずぶ濡れにさせることは可能。
半ば予想していた私は良かったが、ゼルディス様は愚鈍なので気付きもせず、倒した子供によってずぶ濡れにされ、そのまま子供たちに囲まれて早々に失格になってしまっていた。
でも、むしろ楽しそうに濡れていたので問題はないでしょう。
精神年齢が子供なので子供たちと水の掛け合いするのが大好きなようだ。
暗殺者たちが街の安全を見守っているようなので、さすがに王子が暗殺されたりはしないだろう、と判断して護衛任務から一旦抜ける。
王子は子供たちと遊んでいてください。あと死んでたら殺しますから覚悟しておいてください。嫌ならしっかり生き延びて私が帰って来るのを待っていてください。
さぁ、優勝目指しますよ!!
SIDE:サテラ
さー、やってまいりました水鎮祭イベ。
冒険者ギルドも大々的にイベント告知してたので冒険者たちがこぞって参加。A級冒険者さんたちもチームで参加してるっぽい。
私も賞品のプリンに引かれ、当日欠勤しての参加であります!
本来ならスタッフとして駆り出されるところだったからね。私はこっちで参加なのだよ。
「あーっ、サテラ! あんたなんで参加してんの!?」
「実はこのために休み取ったわね! 私も出たかったのにッ」
見回りか何かで街に繰り出していたらしい同僚が私を発見して叫ぶ。
ふっ。オサラバッ!!
「「あー、逃げたっ!?」」
はっはっは、誰も私を止められないぜっ。
このまま優勝してプリン様食べ放題。ひゃっほーう。
「あ、発見。放てーっ」
「ぎゃーっ!?」
逃げ込んだ先に数人の少女。
手に持っていたのは水鉄砲。
しかも普通の水鉄砲ではなく回転発砲式の銃。
それが子供たちの数全員分である。
総勢十二人による一斉射。
不意を突かれたこともあり、直撃した私は、当然ながらぐっしゃぐしゃ。
ずぶ濡れになった以上プレートの生存は絶望的だろう。
「私のプリンがぁーっ」
「あはは。ごめんねー。よーし次ぎ行くぞー」
あ・い・つ・らぁぁぁっ。
「いたッ! プライダル商会のクソガキ共ッ! ぶっ倒してくれるわーっ」
怒りで震える私の元へ、ピンク髪の少女が般若も裸足で逃げだしそうな形相で突撃して来た。
手にしている水鉄砲はここに居る少女たちが持っている回転式連発水鉄砲。
でも、攻撃対象は私達参加者ではなく、子供たち、プライダル商店の人数減らし部隊。
「くぅたぁばぁれぇぇぇっ!!」
「「「「「きゃーっ!?」」」」」
あ、銃落として逃げてった。
これ……使っていいのよね?
だって落とした水鉄砲使っちゃだめって言われてないし?
攻撃は水鉄砲だけ。とはいわれたけども。
「なるほど、これで鬱憤を晴らせばいいのね?」
「あら、あなたも?」
「まぁ、お嬢ちゃんも、やられた口なのね」
二人は出会った。
本来ならもっと後にほぼ赤の他人として出会う筈だった落ちこぼれ受付嬢と、幼い少女。街中ですれ違う程度しかなかった筈の接点は今、交錯する。
「「駆逐しましょう、共にッ!!」」
最強の戦友を手に入れた気分だ。
ふふ、今に見てろよプライダル商会。お前達の野望、私達が粉砕してくれるぁ!!