256話・???、水鎮祭バトルロワイヤル4
SIDE:ミリア
本来水鎮祭はずぶ濡れになるだけのお祭りだから不参加するつもりだった。
毎年毎年近所の馬鹿ガキに水掛けられてぐっしょりになるのよ。
私ってばヒロイン様よ? 何が悲しゅうてクソガキなんぞに濡らされなきゃならないのよ。
全く、この水鎮祭で攻略対象に会えるのなら喜んで行くけど、残念、ライオネル王国の姫巫女の攻略キャラは出て来ないのだ。
あ、でもライリー辺りはでてくるかしら?
でも、私の好みじゃないのよね。やっぱり第一王子。あの王子様を攻略して王妃様エンドがいちばんよね。
いえ、やっぱり目指すは逆ハーエンド。皆からちやほやされるのが一番よね。
うふふ。この世界の悪役令嬢には悪いけど、私、貴女を踏み台にして幸せになるわね。
さって、そのために……今回は今年から始まるらしいプライダル商店主催の良くわかんないイベントに参加しましょうか。上位入賞するとプリン出るのよねプリン。あのプリン様よ。
なんでこの世界にアレが存在するのよ。絶対食べるでしょ!
さすがに人気商店だから行列出来てて普段は並ぶ気ならないのよね。私ってば待つの嫌いだし。
さぁ、私の栄光のために、倒れて行きなさい愚民共。なんちゃっ……はぶぁっ!?
顔面にばしゃっと水が掛かって思わずむせる。
「ちょ、誰よッ!?」
「あはははは。ミリア今年もずぶ濡れだなーっ」
「またアンタかクソガキィッ!!」
ジャコンっと水鉄砲を動かし、強力な水弾で迎撃する。
ああもう、ずぶ濡れになってるくせに楽しげにッ。
あ、やばい、もうすでに一つプレートが判別不能になってる!?
でもこいつぶっ倒さなきゃ。ここで無視して立ち去るとなんか負けた気分だし。
私の人生の邪魔なのよ、あんたはッ!!
「はぶっ!? あはははは。やっぱ水鎮祭おもしれーっ」
ってか、あいつプレート全部もう読めないじゃない。失格よ失格。なんで撃って来てんのよ!?
「あ、兵士だ! 濡らせ濡らせー」
あ、ちょっと!?
なんなのよ一体ッ! 九歳だからガキなのは分かってたけど、あんなのが幼馴染とかミリアの人生最悪過ぎでしょ。はぁ、早く学園生活始まんないかしら?
せめてプリン食べないとやってらんないわ。
「お、まだ生還者がいるじゃん。悪いな。お嬢から数減らせって言われてるんだ」
またクソガキ!?
って、何よその武器ッ!?
「俺はクライマルってんだ。プライダル商会のスタッフ。なのでこんな武器貰ってんのさ。俺を倒せりゃ持ってっていいぜ」
「勝てるかーっ!!」
ソイツの持ってた武器は丸い銃口が六つ連なった回転式水鉄砲。
しかも蛇腹の管が腰に備えた小さな樽に取り付けられている。
どう見ても連射式の水鉄砲、否、ウォーターガトリングである。
即座に曲がり角に走り、射線から逃れる。
遅れてばしゃしゃしゃしゃっと連続で水の弾丸が壁や道を濡らしだす。
すっご、何よアレ。どうやって作ったのよ!? どう見ても私の居た現代式ガトリング砲参考にしてんじゃん。転生者、私以外にもいるの?
あ、そう言えばこの世界、姫巫女の次に出てた錬金術師の世界に居たエルフレッドさんがいたわよね。プライダル商店で働いてたけど、存在してるってことはあの世界とも繋がってると見ていいのかしら。
あれ? ってことは他の作品とも?
じゃあその主人公たちも私と同じ転生者だったり?
ファーガレアの野望とか私国取り興味なかったからやってないんだけど、アレの主人公確か他国攻め滅ぼしまくるんじゃなかったっけ。その中にライオネル王国もなかったかしら?
あ、そっか、だから卒業前に他国からの侵略イベがあって私と攻略対象者で無双しちゃうわけね。
んじゃ問題無いわね。とりあえず、おそらく転生者らしいクラムサージュだっけ? 錬金術ゲームの主人公。多分プライダル商会作ったのもあいつでしょ。同じ転生者だし、知り合いになっといた方がいいかしら?
あ、でも嫌な性格だったりしたら会うだけ無駄だし……どうしようかしら?
「見付けたぜっ!」
「あ……」
思考に一瞬気を取られたせいで、私はガトリングの洗礼を浴びた。
全身ずぶ濡れ、プレートは判別不能。つまり失格。
ガッデムッ! やっぱプライダル商会は敵だッ! 覚えてなさいよクラムサージュ! 私が王妃になったあかつきにはプライダル商会潰してやるんだからっ!!
「よーし次だ、あっちに兵士さんいたな。ずぶ濡れにしてやれー」
「ええい、許せるかーっ!」
「へ? あ、ちょ、失格、失格だよ君っ!? ぎゃーっ!?」
とりあえず私を失格にしくさったクライマルとかいう少年を水浸しにし、ウォーターガトリングを奪う。オラッ寄越せッ! げしっげしっ。
よかろう、ならば戦争だ。
プライダル商会の刺客共、全員私がずぶ濡れにしてくれるっ!!