表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
257/1872

254話・???、水鎮祭バトルロワイヤル2

SIDE:シゼル


 買っちゃったのだ。買っちゃったのだ。

 水鉄砲買っちゃったのだ。

 うふふん。おかあさんに内緒で溜めたお小遣いで買ってしまったのだ。

 これで私も水鎮祭のイベントとやらに参加しちゃうのだ。


 家から出ると、丁度イベントの開始が告知された。

 昨日の内にえんとりーとかいうのはすましちゃったからちゃんとプレート三つあるんだよ。ふっふふん。

 これより先、そこいら中がバトルフィールド。

 目に付く相手は例え見知った仲間であった存在であれ、全て敵。

 手にした水鉄砲のみが私の相棒。なのだ。


 ちゃきんっと銃を顔の間横に構えてなんかカッコよさそーなポーズ。うにゃーん。なんかテンション上がって来たのだ。

 いつもの水鎮祭は水掛けられるだけで、ずぶ濡れにされて嫌な思いばっかりだったけど、これなら楽しく冒険者さん達とだってやり合えるのだ。


 腰にぶら下げた三つのプレート、これの文字が読める限り、私に負けはないのだ!

 さぁ来い! 誰が来たって負けないのだっ。

 獣人な耳がぴくんと動く。


 ジャコン。


 聞こえた瞬間その場から跳躍。

 勢いよく飛んでしまったので壁に激突しそうになり、身体を入れ替え壁に着地。

 遅れ、大量の水の塊が私がいた場所にばしゃっと降り注ぐ。


「むぅ、外したか」


 早速来たな、最初の対戦者……は、貴族様ァっ!?


「ふはは。やるではないか小娘。このイベントとやらでは無礼講。遠慮なく我が身を濡らすが良い。ただし、できるものならばな!」


 ジャコン。バシュッ!


 現れたのはどこかで見たことのある貴族。

 というか、プライダル商会でよく見かけるエレイン様だ。

 手にしているのは私の持つ水鉄砲ではなく、両手で持つタイプの大きめの水鉄砲。鉄砲の上にタンクが取り付けられており、銃身を手でジャコンっと動かすことで水を供給。大量の水を一気に放出して相手を一撃でずぶ濡れにする銃だ。


 確か、ケロちゃん商会で売ってた高級水鉄砲だよアレ。

 普通の水鉄砲より水持ちがいいし、一度に大量の水を放出できるのだ。

 いいなぁ、それ、欲しいなぁ。


 壁に向かって飛んで来た水の塊を飛んで躱し、空中で伸身宙返りしながら真下に発射。


「ぬぅっ!?」


 真上からの一撃を避けようとしたエレインさんだが、その右腕とプレート一つがずぶ濡れになった。


「やるではないか!」


 向いの家の壁に着地した私。

 軌道を読んだのか、直後に水の塊が襲いかかって来たのですぐに飛び退く。

 足元に当った。

 片足だけずぶ濡れになっちゃった。


「うにゃー、なんか気持ち悪い」


「足一つ濡れただけだからな。どうせだ。全身ずぶ濡れになるがいい。とても楽しい気分になれるらしいぞ?」


 ジャコン。バシュッ!


 そんな台詞を言いながら手はしっかりと銃を動かし私に撃ち込んでくる。

 すぐに逃げようとしたのだけど、片足だけ妙に重い。水を含んだせいで毛が重くなってるようだ。

 そのせいで体に違和感がでて気持ち悪い。


 今回はなんとか避けきれたけど、次もそうとは限らない。

 しかもこの貴族様。無駄に命中率が良い。

 うにゃーっ、折角水鉄砲買ったのに、もう失格なんていやなのだぁっ。


 ……ん?

 あれ? 思ったんだけど、この貴族様と争い合う必要って、あったっけ?

 対象地区はこの市民街全てだったよね。

 だったら。


 逃げる振りをしながら周囲の音を探す。

 貴族様、こちらが逃げ一辺倒なのは水鉄砲の火力のせいだと思ってるらしく高笑いまでし始めた。

 あ、いた。しかもこっちに近づいてる。


「貴族様ぁ」


「どうした? 命乞いか? 残念だが逃す気はないぞ?」


「悪いんだけど、あいつらのお相手よろしくなのだ」


「なに?」


 とぅっと思い切り跳躍。

 ちかくのでっぱった店の看板を足場に屋根に飛び乗る。


「逃げるか貴様っ!?」


「高みの見物にゃぁー」


「高みの……まさか!?」


 ぴしゅっぴしゅっと街角から水が襲いかかる。

 貴族様は慌てて避けるも、プレートの一つがずぶ濡れだ。

 私の攻撃と合わせて既に二つ。残り一つ濡らせば失格なのだ。


「貴族様御覚悟ッ!」


「よーし、ジャイアントキリングだーっ」


 子供二人が果敢にも貴族様に水を放つ。

 さすがの貴族様も子供相手だと躊躇するらしい。

 私より小さいもんね。そりゃ攻撃したら泣いちゃうのだ。


「ええい、ずぶ濡れになるがいい」


「「きゃーっ」」


「……あれ? なんか楽しそう?」


 ずぶ濡れになったら失格だよ?

 なのになんでずぶ濡れで楽しんで……あ、そっか。本来の水鎮祭の目的って水の掛け合いで楽しく過ごすことだった。

 あー、そっか。このイベント、負けたら失格って言ってたけど、別に負けたって楽しめればいいのか。


 はは、なーんだ。プレート全部濡れたらもう楽しめないって思ったけど、よーし。だったらもう勝敗関係なく楽しくじゃれ合うのだ。

 失格になった子供たちはそれにもかかわらず水を撃っている。貴族様が止めろ―とか言いながら走りだしたので私はその前に躍り出て水鉄砲で貴族様を失格させる。

 

 よーっし、出来るだけ頑張って失格したら皆でずぶ濡れ大会だ。なんか楽しくなってきたのだッ。って、ぎゃーっ!? 貴族様失格になったのに水掛けて来るのは卑怯なのだーっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] シゼルが凄く可愛く思えてきた件について。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ