239話・ロゼッタ、格闘大会見学
おー、ついに格闘大会開始なんだよ。
今回は事前連絡でお店休むと皆に伝えたし、店の前にちゃぁんと休日と書いた看板置いといたから問題ない筈なんだよ。
一週間前から伝えといたし問題無いよね?
お父様が乗ってきた馬車と私の専用となってる馬車、これらに女性陣と私の家族、リオネル様を乗せ、男共は馬車の周囲を歩くことで皆で向かえることになった。
貸し馬車使うのも良いんだけど、馬車二台でも結構多いからなぁ、場所取り過ぎるといろいろ面倒事に巻き込まれるので今回は二台だけにしておいた。
折角だし、闘技場に行くって言ってた冒険者連中も一緒に男性陣に混ぜといたから前回みたいに人攫いに襲われたりといった事はないだろう。
まぁ、暗殺ギルドだったかが滅茶苦茶監視してくれてるからそちらの心配は不要かな。
闘技場自体は貴族街と市民街の中間地点に存在している。
これは貴族が利用する時もあるし、民間で利用する時もあるので、どちらの街からでも来れるようにしているためである。
本来ならお父様の馬車や私の馬車は貴族街側にある馬車置き場に置いておくべきなんだけど、他の子供たちが貴族と会うとトラブルの元になりそうなので今回は市民街側の施設を利用する。
スタッフの教育自体は皆同じはずだし、こっちから来る貴族も数名いる筈なので問題はない筈だ。
さすがにお貴族様の馬車に悪戯したりはしないでしょ。
あ、そこの影さんお留守番よろしくなんだよ?
影さん、想定してなかったようで、俺っすか? と、思わず自分を指差し、そして意気消沈した。
どうやら大会見たかったよう……ん? 隣の影さんが肩叩いてラッキーみたいな顔して……あ、もしかして既に居残りする人決まってたの? なんか、ごめん……
影のおっちゃん、大会終了後にあの人呼んでほしいんだよ。上映会で見せてあげる。
魔石に記録するように魔法を操作すれば多分できるはず。
上映方法は映画館を参考にして壁にでも投影する感じでいいよね?
上手く出来ればいいんだけど。
馬車を停留所に止めて私達は闘技場の観戦場所へと向う。
既に場所取りは済んでるらしいのでお父様に付いて行くだけでいい。
今日はお母様も一緒だけど、やっぱりお父様がいる場所では隣から一歩下がった場所を歩いて物静か、うーむ。こうしてみると商店に顔出してる時のお母様めっちゃくちゃ生き生きしてるよなぁ。
お母様、普段凄く抑圧されてる?
爆発しちゃダメだよ?
お店がストレス発散場所になってるのは幸い、なのかなぁ?
おお、既に結構来てる。
観戦場は試合場を囲うように円形に設置されていた。
というか、どう見てもこれ、コロッセオだよね?
試合場の中央には、天下一武闘会とか暗黒闘技場とかに出て来そうな四角い石を連ねて作った四角いリング。
これは、最初はリングアウトで場外敗北があるけど、多分決勝戦辺りに試合場が粉砕されて場外無効での闘いになる奴じゃない?
さすがに普通の武闘大会でそんなバケモノ出て来ないか。
「それ、主様がやらかすフラグか何かなん?」
失敬な。
キーリも挑発されたからって出てったら駄目なんだよ?
「主様とちゃうからせぇへんよ。そんじゃそろそろ魔物組連れて来るからちょっと呼ばれてくるわー」
キーリが元来た道を戻って行く。
どうやら守護者二人が到着したらしい。
邪神ともなれば何かしらの到着を知る手段があるのかね?
私の索敵みたいなものかな?
「ああ、ここだここだ。皆この席から順に座りなさい。大人組は最後列に座りたまえよ?」
って!?
お、おおお、お父様?
こ、ここ、どう見ても王族のお隣ではございませんか?
あれ? リオネル様? なんでそっちに座って私を呼ぶの? え? 私王族側の席で見るの!?
王族の席には既に国王陛下と王妃様、エリオット様とマルチーナ様、ガイウス様とエレオノーラ様が座っており、私達を見てそれぞれ違った反応をする。
国王陛下たちは一瞥しただけ、エリオット様たちはにこやかに、ガイウス様は私に殺意に似た視線を一瞬だけ送り、視線を逸らす。
あと宰相さんとか重役が国王陛下の周辺を固めている。
近衛兵の中に、居ちゃったんだよ、ケリー・レイズナーだ。
攻略対象で妹がヤンでれらな近衛騎士さん。
今回はお知り合いになる気もないので放置でいいだろう。
リオネル様、やっぱここで観戦はやめません? ちょっと緊張で楽しく観戦とか無理な気がするのですが?
「どうしたのロゼ?」
あああ、そんな無垢な顔で小首傾げないでっ!?
うぅ、私が我慢すればいいだけ? いえ、でも……
や、やっぱり家族でみたいですリオネル様。一緒にあちらで見ませんか? あちらにも空きが……って、キーリが普通にお母様の横に座りやがった!?
その隣には象頭。
鹿さんは私の隣にやって来やがった。
いや、観戦するのはいいけど、動物よくここまで入れてもらえたな。
え? 意思疎通できたのとキーリが侯爵権限使って押し通した!? なにやってんのよあの娘は!? でも、自分でも多分同じ事するから怒るに怒れないんだよ。