226話・ロゼッタ、出来たケーキに罪は無い、なれどこれは……食べて大丈夫?
「で、出来たぁ――――ッ!!」
それは私が各月でのお祭りに付いて考え始めてから三日過ぎた頃のことだった。
ダイニングルームで本日も唸っていた私の耳に、クラムサージュの大声が届く。
珍しいなぁ。あの子があそこまで大声で喜ぶなんて。
んで、何が出来たのかな?
煮詰まってていい考えが浮かびそうにないので、気分転換に調合室へと向う。
「お、居た居た、クラムサージュ、一体何が出来……はぁ!?」
そこには、助手の子供たちが戸惑った様子でおろおろしているのと、鍋の真横で何かを頭上に掲げて小躍りしながら回りまくっているクラムサージュの姿……邪神召喚してるのかな?
「っは!? おっと危ない危ない。あまりにも会心の出来に思わず踊ってしまったわ。お嬢、丁度良い所に来たわ。これ、ちょっと味見してよ」
味見?
よく見ると、両手で持って頭上に掲げて踊っていた物体は、丸い皿に乗せられたホールのケーキであった。
何の変哲もないイチゴケーキという奴だ。
「えっと? 食べればいいの?」
でもフォークも何もないよ? 手掴みとか?
あ、気を利かせたマリーヌが台所へ向いスプーンを持ってくる。
いや、それ、食べていい奴?
錬金釜ぐるぐるかき混ぜて作ったんだよね?
え? どうやって出て来たの?
皿ごと? 釜から浮かびあがる?
使ったのは? 卵の化石? 砂糖? 腐ったミルク? え? それ、食べれるの?
「錬金術で作ったから物は良い筈よ? 私の心眼によると星三つって所ね。可もなく不可もない普通のケーキになってる筈よ」
いやいやいや、化石と腐ったもの使って出来たのに?
錬金術おかしくない?
しかもそれの味見を私にしろと!?
「お嬢様、どうぞ」
ちょ、逃げ道塞ぐなマリーヌ!? スプーンと紅茶まで用意するんじゃないよ!?
あ。これ逃げれない奴だ……
ええい、死んだら怨むぞクラムサージュ! 中毒死なんて前世と一緒じゃないのーっ。
スプーンを掴み取り、ていやっとホールケーキに突き入れる。
一刺し掬い取り、口に突っ込む。
んむ……
「どうよ?」
「……納得いかない。普通にケーキ。おかしい。錬金術がおかしい」
「ケーキ作るにはたまごっぽい何かと砂糖、ミルクっぽい何かがあれば作れるのよ。なんならミルクっぽい油でも作れるわよ」
「ソレ絶対イチゴケーキじゃない。っていうかイチゴ使われてないじゃん、どっから出て来たし!?」
「知らないわよ。出来るケーキがこれなの。あとレモンっぽい何か使えばレモンチーズケーキが出来るわ」
だからなんでレモン入れただけでホールイチゴケーキがレモンチーズケーキになるんだよ。何処にチーズケーキ隠れてたの? 生クリームどこいったの!? 意味不明過ぎるんだよ!?
あと化石はどうやって卵に成ったの?
「お嬢、錬金術は深く考えちゃだめよ。材料を使ってレシピ通りに作れば出来るのよ。例え普通はあり得ない素材であっても目的のモノが出来るのよ! 何しろ産廃使って賢者の石出来るくらいだし」
あ、賢者の石も一応作れるんだ。
「ってことはホムンクルスとかも作れるの? 生きてる箒とかは?」
「えっと、ホムンクルスは試験管の中でしか生きれないけど作れるわ。生きてる系道具の素材に使えるの」
やっべぇ、錬金術罪深い。
「で、生きてる道具で使えるのは、箒と縄とゴミ箱、あとはガーゴイルかしら?」
「ガーゴイル?」
「ええ。ゲームじゃたまになんだけど盗賊とかゴロツキが留守中に押し入って来るのよ。お金とか物品盗まれるからガーゴイルで店の周囲を守るのよ」
「それ、現実でも起きるよね? 早急にガーゴイル作ってほしいんだよ?」
「あー、素材が足らないわね。魔石と、ホムンクルスとガーゴイル系の素材」
「邪神洞窟で狩った奴でいい? ガーゴイル素材とミノタウロスの魔石。ホムンクルスは作れて?」
さっさと作って置いてほしいので二匹分の素材をアイテムボックスから取り出す。
「……ええぇ、中盤にならないと集まらない筈の素材なんですけどぉ……ホムンクルスは馬のアレがいるのよねぇ、口にするのもはばかれるから適当にこっちで入手しとくわ」
「馬だったら庭師のだちょなさんに頼めばただで何とかしてくれると思うんだよ。で、アレってなぁに?」
「ぐぅ、なんて純粋な目で小首を傾げるのよ!? 言えないわよ。そのだちょなさん紹介して。こっちでなんとかするから。こんなモノ子供の前で言えるわけ無いでしょッ! 他のは揃ってるからその人から貰ったら作っておくわ」
「おー。是非とも急いでほしいんだよ。何時盗賊がくるか不安なんだよ」
「いや、こんな魔境に盗みに来たらそいつのが可哀想過ぎると思うんだけど……ええ、分かった分かった。急いで作っておくわ」
よし、これで寮の安全問題が解決するんだよ。やったね。




